"辛口一筋"の姿勢を貫く日本酒メーカー・菊正宗酒造(本社: 兵庫・東灘区)は、今年創業350周年を迎えた。それを記念し、様々な取り組みを展開しており、その一つが、9日まで東京・有楽町の日比谷パティオ内に開設された「菊正宗 酒ミュージアム『街蔵(まちぐら)』」だ。
同ミュージアムでは、伝統的な酒造りの歴史が分かるように、菊正宗酒造が保管している昔ながらのものから、現在でも使用されているものまで数々の酒造りに関する展示されている。さらに、灘の酒蔵・菊正宗の伝統の酒蔵「嘉宝蔵」で実際に行われている酒造りの過程が大画面で映し出されており、東京にいながら灘の酒造りを体感できる。
「菊正宗 酒ミュージアム『街蔵(まちぐら)』」内。有料のきき酒コーナーもあり、兵庫より直送される生原酒も味わえる |
さらに物販やきき酒コーナー(有料)も展開。通常は灘の酒蔵でしか味わえない生原酒や、「生もと(きもと・もとは酒へんに元)造り」による清酒も楽しめる。きき酒メニューは、「生もと」生原酒が1杯200円、生もと辛口セット(生もと造りの酒3種類+つまみ)300円など。開館時間は11時~21時(有料きき酒のみ17時~20時30分・ただし、変更の場合アリ)。
また、もうご存知の方も多いかと思うが、同社のテレビCMもリニューアルされ、9月11日からは演歌歌手・ジェロがCMソングを歌っている。
"真・辛口宣言"とは
菊正宗酒造代表取締役社長・嘉納毅人氏 |
同社代表取締役社長・嘉納毅人氏は、「本当においしい本物の辛口を追求し、お客様に愛されるブランドづくりを目指し、酒造りに邁進していきたい」と挨拶。その決意ともいえる"真・辛口宣言"を高らかに宣言した。この"真・辛口宣言"は、菊正宗の持ち味である辛口を改めて極めていくといった内容のもので、具体的には9月より上撰・本醸造クラス以上をすべて生もと造りに切り替えている。
生もと造りとは、生きた乳酸菌の力を利用して手間と時間をかけてじっくり醸す手法で、酒造りの原点ともいえる。一時期は、通常の倍以上の手間や時間がかかること、さらには安定的に酒を造るには不向きな方法だったことから、一時期は敬遠されて廃れたものの、最近になって再評価されつつある。同社ではこれまで冬季だけの限定酒に生もと造りを採用していたが、20年来の研究を経て、上撰・本醸造クラスにまで拡大。伝承の生もと造りによる日本酒が、技術革新によって多くの人々に楽しんでもらえるようになったわけである。