アイスランドではバナナは自給自足(写真はイメージ)

アイスランドを車で走っていると、あちらこちらにモクモクと湯煙が立ち昇っている姿に出会う。これは主にアイスランドの地熱地帯で見られる光景なのだが、「火山国」アイスランドの地熱活動がいかに活発かを物語っている。

この活発な地熱活動を積極的に利用した発電方法が、アイスランドでは広く普及している。それが「地熱発電」と呼ばれるものである。日本ではあまり耳慣れない言葉であるが、地下深部のマグマの莫大なエネルギーを利用した発電手段のことである。アイスランドのような火山国は地熱エネルギーが豊富にあり、また自国の自然エネルギーを利用することで、化石燃料の輸入を資源国に頼る必要性もない。地熱発電はまさに、アイスランドに適した発電手段なのである。

(上)湯煙がモクモクと立ち昇るその様は、まるで日本の温泉地のよう(右)高々と吹き上げる温泉水(ゲイシールにて)。ゴボゴボと湯が湧き出ているが、吹き上げ時にドーンと音がするため、噴水というよりも爆発に近い

アイスランドでは従来の石炭を利用した火力発電に代わり、1930年頃からこの地熱エネルギーを利用した地熱発電が発達してきた。今では、供給されている電気の15%がこの地熱発電により賄われているという。

クリーンな地熱エネルギーでも、二酸化炭素の排出は避けられない。だが、それでも地熱を利用した発電の場合、石油や石炭などの化石燃料を利用した場合と比べると、二酸化炭素の排出量を20分の1までに押さえることができる。地熱は安全で環境にもやさしい、クリーンな天然エネルギー源というわけだ。

アイスランドの地熱地帯は、国のほぼ中央を走る地溝帯(ギャウ)を中心に広がっている。地熱地帯は、大きく分けて高温度地帯と低温度地帯の2つがある。高温度地帯の代表的なものは、アイスランド南西部のヘンギットル(Hengill)活火山付近。ここには、レイキャビックを中心とした首都圏への家庭のヒーターや温水プール、工場へ熱水を供給している、アイスランド最大のネシャヴェトリル(Nesjavellir)地熱発電所がある。この地熱発電所だけで、アイスランド人口の約半数以上にあたる人々の需要を満たしているという。

アイスランドの中央を通る地溝帯(ギャウ)は毎年2cmずつ広がっているという

シンクベトリル国立公園の中にある地溝帯。これがいわゆる「地球の割れ目」

地熱発電所。この距離からでも硫黄の匂いがかなり強烈

一方、観光スポットしても人気の高い間欠泉のあるゲイシール(Geysir)は、低温度地帯の代表的なもの。数分おきに温泉水が高々と吹き上げる、そのダイナミックな様は必見である。世界最大の露天風呂「ブルー・ラグーン」も実はこの低温度地帯の地熱エネルギーを利用して造られたものなのである。