こうして、地熱地帯が広がるアイスランドだが、アイスランドの温泉や地熱は浴用や家庭内の暖房用、発電用以外にも、もっと広く使われていることをご存知だろうか。

まずは、温室栽培用のグリーン・ハウスへの利用。温泉水を熱源として利用した温室栽培がのおかげで、アイスランドのような荒涼とした極寒の地でも、野菜や果物がよく育つ。アイスランドのスーパーなどでは、アイスランド産のトマトやバナナなどにお目にかかれる。 そして地熱は、肥料用の昆布の乾燥や塩田の乾燥、シリカ土の乾燥などにも利用されている。

ドライブ中に見かけたグリーン・ハウス。目を奪われるほどの眩い明るさ

レイキャビック近郊にある、エネルギー博物館(Energy Museum, 1990年設立)では、地熱発電のしくみのほか、アイスランドの発電所の歴史とその発展の様子が写真や映像とともに展示されている。博物館のすぐ隣には実際に稼動している地熱発電所があり、デッキの部分に出てみると無数に連なった大きなパイプが見え、硫黄の匂いが立ち込めている。アイスランド国内には世界最新の地熱発電所がいくつもあり、日本の大手メーカーもその技術の提供に大きく貢献していることが書かれてあった。日本人としては誇らしい気持ちになるだろう。

エネルギー博物館の一室。地熱発電に関する様々な資料が展示されている

地熱発電所のタービンは、なんと日本製!

アイスランドの地熱発電に関わった日本の企業からの寄贈品も展示されていた

このように地熱エネルギーについての取り組みが盛んなアイスランドだが、自国のもう1つのエネルギー、電気分解した水素を燃料とした「水素エネルギー」も忘れてはならない。実験的な試みといえるのが、「水素バス」の導入だ。今では蘭アムステルダムや英ロンドンなどの大都市でも導入されているが、ここ、レイキャビックこそ世界でいち早く水素バスを導入した市である。アイスランドにどれほど水素を利用した車が走っているのかは残念ながら分からないが、筆者がガソリンスタンドならぬ「水素スタンド」というものを目にしたのは、アイスランドが初めてだった。エコロジーの分野でアイスランドが世界の最先端を行っている国の1つであることは、もうお分かりであろう。国内のエネルギー全てをクリーンな自然エネルギーで賄い、公害の少ない国を目指すアイスランドだが、それが現実となるのはそう遠くないのかもしれない。

アイスランドの首都レイキャビックは、水素バスの発祥地(写真はイメージ)