松雪泰子自身も一児の母

結婚10年目で妊娠。しかしその直後、結婚前に患った乳がんが再発――。究極の選択に迫られた女性の決断、そして夫婦の絆を軸に描かれた映画『余命』。7日に公開初日を迎え、東京・新宿でおこなわれた舞台挨拶に主演の松雪泰子、椎名桔平らが出席した。

公開に先立ち、登壇した松雪(主人公の百田滴役)は、「この日を迎えることができて、本当に嬉しく思っています。大切に作り上げた映画なので、ぜひ楽しんでご覧になってください」。公開にあたり、本誌のインタビューも含めてじつに200以上もの媒体から取材を受けたそうだが、「たくさんの方々と会えたし、地方にも行っていろんなお話ができたので、すごくいい時間を過ごさせてもらいました」と、ハードスケジュールの中でも充実感があった様子。

『余命』主演の松雪泰子。「赤ん坊を抱きかかえるポスターが本当にきれいですよね」と絶賛されたが、「……じつはCGなんです (笑)」と冗談を言い、観客を笑わせる場面も

過去に"ネタバレ発言"をしたせいか、椎名が「細かくは言えませんが、映画の後半……」と言うなり、「言わないでください。絶対に!」とMCに釘を刺されてしまい、本人も苦笑い

脚本を読んでの感想を聞かれると、「乳がんというテーマを扱いますし、難役だなと感じていました。でも命や家族のつながりについて、様々な視点から描かれていて。それぞれのシーンが静かに進むなかで、感情の移り変わりをどう表現するか、主人公の生き方をどれだけ繊細に演じられるか、ということに気を遣っていました」と松雪。一方、滴の夫・良介を演じた椎名は、「僕と松雪さんが海岸にいるシーンがあるけど、脚本を読んだだけで泣けてきちゃって。加計呂間島で撮影した時も、本番前のテストで彼女の声を聞いただけで、もうダメでしたね」。

滴の元同僚役を演じた奥貫薫。「私はまだ結婚も出産も経験していないけど、もし同じことが自分の身に起きたら、きっとこの作品や松雪さんの姿を思い出すだろうと思います」

宮崎美子は、「私の役は夫婦で喫茶店を経営している設定で、すごく居心地のいい店だったんですよ。私も喫茶店と同じくらい居心地のいい存在でありたい、と思って演じました」

生野慈朗監督は、滴と良介の夫婦について、「原作を読んだ時は、この夫婦は何をやってんだ! と思いましたが(笑)、そういう矛盾に満ちた生き方がすごくチャーミングで、生きる力のようなものをだんだんと感じてきました。人間は時として不可思議だったり矛盾に満ちた行動を取ったりするけど、回り道をするからこそ人生は素敵なのだと思いました」。夫婦を演じた松雪と椎名には、「僕の思う矛盾をどんどん乗り越えてくれて。撮影中も、その家に何年も住んでいたんじゃないかと思うくらい、素敵な夫婦像を演じていただきました」と賛辞を送った。

生野慈朗監督は主演の2人を大絶賛

本作の主題歌「Get A Life ~Again~」を歌うtwenty4-7の2人も舞台挨拶に駆けつけた

最後は松雪が、「この作品に触れて、自分を支えてくれる人たちに深く感謝したい思いになりました。朝、目覚めた時に、『今日も元気に過ごせて、ありがとうございます』という気持ちが素直に湧き上がるほど。映画のタイトルは『余命』ですが、すごく生命力が感じられる作品です」とコメントし、舞台挨拶を締めくくった。

映画『余命』は、新宿バルト9、丸の内TOEIほか全国ロードショー中。

(C)2008「余命」製作委員会