日本列島すべての地域で梅雨明けし、いよいよ暑さが本格化する。沖縄県酒造組合青年部はこのほど、東京・墨田区にて泡盛の試飲や沖縄食材を取り入れた料理を楽しむイベント「泡盛ゆんたく会 in 東京」を開催した。同イベントは2001年より沖縄で毎年開催されているもので、東京での開催は今年で2回目。夏にぴったりな泡盛。これを機会に、泡盛に関する知識をちょこっと身に付けてみてはいかがだろう。ここでは、同イベントを振り返りながら泡盛の歴史や現状についてお話したい。

乾杯を前に、主催者挨拶。左手の沖縄料理は開宴後あっという間になくなった

沖縄の方言で"おしゃべり"を意味する"ゆんたく"という言葉がついたこのイベント、参加者約250人は17時に乾杯。午前昼や午後に開催される飲食業界関係者向けの試飲会とは違い、週末、しかも夕方からの開催である。一般の参加者にうれしい配慮だ。同イベントでは、沖縄県内の全酒造所メーカー(47酒造所1組合)の泡盛の試飲も可能。「飲食だけでももとが取れる盛りだくさんな内容です」(同イベントスタッフ・上原さやかさん)との言葉通り、泡盛の古酒(クースー)や沖縄料理など、目移りするほどたくさんの品々が用意されていた。

「泡盛の女王」たち。参加者の話の輪に加わり、名刺交換をしていた

他には、毎年選出される沖縄在住の「泡盛の女王」との歓談や、「沖縄のジェロ」こと城武端バイロンさんの三線(さんしん: 琉球三味線のこと)演奏を楽しむことも。なお、今年の「泡盛の女王」は23代目。金城奈々さん、金城さやかさん、石原萌さんだ。泡盛や沖縄をPRするため、全国を飛び回っているという。さらに会場には、酒造所関係者が約40人駆けつけており、参加者は心ゆくまで泡盛トークを楽しむこともできた。

タイ米を原料とする泡盛

ここで、泡盛の歴史と造り方について簡単に触れるとしよう。泡盛の歴史は古く、琉球王国の時代、今から約500年前には製造が行われていた。

沖縄は、大陸から九州に焼酎造りが伝来したルートのうちのひとつと考えられている。沖縄には、九州における本格焼酎の原型となる造り方が受け継がれてきた。その特徴は3点ある。まず、タイ米(インディカ米)を原料としている点。そして、1回で原料米全てを投入する全麹仕込みという製法。さらには、沖縄の自然環境が生んだ黒麹菌を使用しているという点だ。

甕に入った泡盛など。これらは抽選会で参加者にプレゼントされた

泡盛は発酵過程でクエン酸を大量に生成し、温暖な地でも腐らない優れた製法で造られる。その上、仕次ぎによる長期熟成の文化がある。戦前は100年~200年の古酒(クースー)もあったそうだ。「今でも家を建てたり、子どもがうまれたときには古酒用に泡盛を購入する習慣があります」と話してくれたのは、泡盛メーカー請福酒造の漢那憲隆取締役だ。なお、仕次ぎとは古酒をつくるための方法。最も古い泡盛(親酒)から年代順に泡盛を数種用意し、親酒をくみ出したらその分だけその他の古酒を順次つぎ足していくと言う手法だ。

酎ハイ感覚のシークヮーサー割り。泡盛仕込みの梅酒もある

首都圏ではその歴史から古酒を珍重する傾向があるが、地元で泡盛はあくまで日常的に飲むものである。古酒よりレギュラー酒を飲む機会の方が多く、最近の傾向として飲みやすいタイプが増えているそう。若い世代が飲みやすさを求めている故という側面があるようで、会場でスタッフとして働いていた若い女性に聞いたところ「(沖縄県内では)酎ハイのようにジュースや炭酸、シークヮーサーで割ったりと、自分に合った飲み方をしています」という。