気になる女の子と遊びにいく約束をようやく取り付けたもののどこに連れていけばいいのかわからない、あるいは、彼女とのデートは毎回食事や映画で代わり映えがしないとお悩みの男性諸氏、そんな時はコンテンポラリーアートをメインに取り扱う美術館やギャラリーに足を運んでみよう。

特にコンテンポラリーアートをオススメする理由は、コンテンポラリーアートは一般的に想像されがちな「アート」の概念を外れた遊び心あふれるものが多く、作者名や制作された年代といった予備知識がなくても楽しめるからだ。もちろん、時代背景や作者の意図などを知っているとより作品を楽しめることは事実だが、必ずしもそういった知識は必要ではない。また、コンテンポラリーアートを扱う美術館やギャラリーは比較的規模が小さいものが多く、すべての作品をゆっくりと鑑賞したとしても小一時間程度で見て回れる上、繁華街からのアクセスがよくて手軽なデートスポットとして行程に組み込みやすい。さらに、おしゃれなカフェやミュージアムショップを併設しているところが増えているので、おいしいお茶やセンスあふれるアイテムを楽しむことで会話がはずむこともうけあいだ。

ワタリウム美術館

今回は、そんな隠れた名デートスポットとして、東京・外苑前にあるワタリウム美術館を紹介しよう。ワタリウム美術館は、東京メトロ・銀座線「外苑前駅」から徒歩8分のところにある美術館だ。スイスの建築家、マリオ・ボッタが設計した地上5階、地下1階の建物は三角形というイレギュラーな土地の上に建っていて、建物からしてアートな雰囲気がただよっている。地上2階から4階が展示スペース、地上1階と地下1階がミュージアムショップ&カフェ「On Sundays」だ。なお、周囲にはこじゃれたカフェやショップ、レストランが建ちならんでいる。ウィンドウショッピングや外苑前のいちょう並木散策、評判のレストラン訪問などとワタリウム美術館を組み合わせるとぐんとデートらしくなるだろう。

入り口を入ってすぐ左手が受付となっている。右手はミュージアムショップだ

ワタリウム美術館は、「社会に対するメッセージ」を根幹に社会とアート、社会と美術館を結びつける企画を行っているコンテンポラリーアート美術館だ。現在開催されている「ファブリス・イベール たねを育てる展」は、フランスの代表的なアーティスト、ファブリス・イベールが農業をモチーフに制作した作品が展示されている。たとえば、野菜や果物で作られた人型のオブジェ「エム・アイ・ティ・マン」は、イベールがマサチューセッツ工科大学(MIT)のバイオテクノロジー研究者、ロバート・ランガー博士と2007年に共同で行った研究成果のひとつで、人間の身体に損傷がある場合やその部分を丈夫にしたい場合に必要な栄養素を持つ野菜や果物をその部位につけた作品だ。頭部につけられたカリフラワーは髪を豊かにするもの、腰につけられたバナナは腰回りの筋肉を発達させるのに効果があるといった具合だ。

ペインティングのための習作 no.26, 2008

壁一面に展示されたドローイング

エム・アイ・ティ・マン Mit man, 2008

また、3階のワンフロアをすべて使って作られた草原「そよ風 La Brise, 2008」は、2階に展示されたドローイング「ペインティングのための習作 no.26, 2008」の中の1枚を再現したものだ。立ち上る土のにおいやそよ風になびく草たちをぜひ直接体感してほしい。イベールによると、そよ風になびくこの草原は、人間の頭の上、分け目によって左右に撫でられた髪の毛ともつながるとされている。髪の毛は脳や神経のある頭部を守るために生えていて、身体と精神のための栄養物ともいえるとのことだ。

ワタリウム美術館の取り組みは美術館内だけにとどまらない。ワタリウム美術館屋上やムーンスター隣り交差点空き地には特設の野菜畑が作られ、イベール作のテディベアを模したかかしが野菜の成長を見守っている。このほか、外苑前駅からワタリウム美術館にいたるまでの道のりのあちこちで野菜を育てる「Artで街をやさい畑にするProject」や、練馬にある白石農園を訪ねて野菜の収穫、ランチ、トークを楽しむ「やさい畑で昼食を」ツアー、「たねを育てる展」トークといった試みも行われている。

併設のミュージアムショップ「On Sundays」も見逃せない。1万種類を超えるポストカードや世界各地の文房具、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のグッズ、デザイン家電、美術、写真、建築、デザインといった分野の輸入洋書や限定書籍が豊富に取りそろえられている。また、カフェスペースではイベントや作品展示なども行われている。ミュージアムショップとカフェだけでちょっとしたギャラリーに来た気分が味わえるだろう。

壁を埋め尽くす勢いのポストカード

美術館併設のミュージアムショップとあなどるなかれ、広い店内と豊富な商品数が魅力的

地下と地上階をつなぐ階段も凝ったデザインだ

地上階と地下1階の間にはカフェスペースがあり、ドリンクや軽食がいただける

地下1階はブックストアになっていて珍しい洋書などが並んでいる

ワタリウム美術館

住所 : 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-7-6
URL : http://www.watarium.co.jp
アクセス : 東京メトロ・銀座線「外苑前駅」3番出口より徒歩8分
開館時間 : 11:00~17:00(水曜のみ~21:00)
休館日 : 月曜日(7月21日は開館)
入館料 : 大人1,000円、学生(25才以下)800円※会期中何度でも入場可

ミュージアムショップ「On Sundays」

住所 : 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-7-6
URL : http://www.watarium.co.jp/onsundays/
開館時間 : 11:00~20:00(水曜のみ~21:00)
休館日 : 年中無休(12月31日~1月5日のみ休業)

現在開催中の展覧会

展覧会名 : ファブリス・イベール たねを育てる展
会期 : 2008年4月26日(土)~8月31日(日)
会場 : ワタリウム美術館+屋外