ワンコイン程度の入場料を支払うことで、簡単なドリンクをいただきながら店内に放し飼いされている猫たちとのふれあいが楽しめるスペース、通称「猫カフェ」が東京や大阪などの大都市圏を中心に人気を呼んでいる。大都市圏ではなかなかペットが飼える物件が多くないという住宅事情もあり、その人気の秘密は愛らしい猫たちの仕草を間近でじっくりと堪能できることにある。普段あまり猫に興味がないという人でも、丸くなってすやすやと寝息を立てる無防備な顔や、一心不乱におもちゃを追いかける姿を目にしてしまうと思わず目尻が下がってしまうことうけあいだ。
ところでこの猫カフェ、秋葉原発のメイドカフェなどに代表される、ここ数年のテーマカフェブームの一種として登場したように思われがちだがが、実はそのルーツをたどっていくと海を飛び越えてはるか台湾にたどり着くということをご存じだろうか。聞くところによると、台湾では10年以上も前から猫カフェが一般的なものとして定着しているらしい。関東の猫カフェや猫テーマパークはほぼすべて網羅している重度の猫好きである筆者、それを聞いていてもたってもいられなくなってしまい、元祖猫カフェを体験しに台湾に飛びたった。
調べてみると、台湾最大の都市である台北市近隣だけでも有名な猫カフェがたくさんあるわあるわ……。どこに行こうか迷ってしまったのだが、今回はそのなかのひとつ「猫花園(マオホヮユェン)」を訪ねることにした。猫15匹にくわえ、犬1匹が待っているという豪華なラインナップもさることながら、台北市中心部から地下鉄を乗り継いで行ける上、台湾の航空会社、チャイナエアラインが配布しているガイドブックにも掲載されていることから中国語がまったく話せない観光客でも気軽に行けそうなところがこのお店を選択した理由だ。
台北市中心部から地下鉄に揺られること約15分、「淡水」線の「芝山」駅に到着した。改札を出て右側に駅を出ると道路をはさんですぐ目の前が「猫花園」だ。ガラス張りのドアからは店内から優雅に外を見ている猫たちの姿が! 勇気を出してドアを開けてみると、奥から店員さんが出てきて席に通され、メニューを渡された。通された席には「猫専用」と張り紙がされたいすが置いてあり、そこにはグレイの毛並みも美しい猫がどっしりと香箱を組んで待っていた。筆者たちがすぐ隣の席についても逃げるどころか気にする様子もない。その距離、30cm足らず。突然のナマ猫との至近距離での接触にいやがおうにもテンションがあがる。また、店内を思い思いに歩き回る猫たちの姿も目に入る。
心配していた言葉についてだが、英語と日本語はほとんど通じないものの、メニューには中国語のほかに日本語と英語が併記されているので指さしてオーダーすればよい。コーヒーや紅茶、ジュースなどのドリンクのほか、アルコールやパスタなどの食事、デザートも用意されていて、しっかりと食べることもできる。システムについては、来店時に入場料を払い、帰り際にドリンク代と滞在時間に応じた延長料金を精算するという日本式の猫カフェとは異なり、入場料や時間単位のチャージは存在せず、一人あたり120元(約460円。1元=3.8円)以上メニューからオーダーすればよいようだ。日本の猫カフェは「ドリンクも飲めるテーマパーク」といった感じだが、猫花園はまさに「猫がたくさんいるカフェ」という趣だ。
猫花園で驚いたことは、どの猫もアクティブで客を怖がっていないこと。客がいても逃げまどうこともなくゆっくりとした足取りで店内を歩き回り、客が座っているすぐ横の席にひらりと飛び乗ってはみづくろいをする。さすがにどの猫も体にベタベタと触れられるのはあまり好まないようだが、至近距離にまで近寄ってじっくりと猫たちを眺めることはできる。まるで自分が飼っている猫のようだ。店内は自由に歩き回って写真撮影もできるので、心ゆくまで猫たちの仕草を見守るといいだろう。これまでは猫カフェの猫たちはいつも寝てばかりいるか、客におびえたような態度が痛々しいというイメージがあったのだが、猫花園では自由気ままにアクティブに動く猫たちをたっぷりと見られて大満足だった。また、店内は清潔で動物独特のにおいもなく、安心して食事を楽しめた。台湾に行くことがあったならば、ぜひ一度訪れてみてほしい。
猫花園図鑑
猫花園(マオホヮユェン) CAFE' DOG & CATS
住所 | 台北市士林区福華路129号1樓 |
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最寄駅 | MRT「淡水」線「芝山」駅徒歩30秒 |
営業時間 | 12:00~23:00 |
定休日 | 不定休 |
最低オーダー額 | 120元 |
タバコ | 分煙(禁煙・喫煙席あり) |
備考 | 12歳以下の子どもは入店禁止 |