ちょっと押尾学似(!?)の岡田章宏さん

さてここからは、今回のJBCで特に印象に残ったシーンを紹介していくとしよう。まず注目を集めていたのが、4番目に登場した「小川珈琲 京都三条店」(京都)勤務の岡田章宏さん。ステージ上には、ムービーのカメラもスタンバイしており、リアルタイムで各バリスタの手元や表情を会場内の大画面モニターに映し出すのだが、岡田さんは競技に入る前、このカメラに向かって目線を送ったり、表情をつくったりとおどけて見せる。その様子を見た観客は爆笑。競技前といえば最も緊張する瞬間なのに、この余裕である。「やってくれそう! 」と見ている側の期待も否応なしに高まる。

競技が始まると、ハキハキとした口調でプレゼンをし、1つ1つの動作にも何か説得力を感じさせる力強さがあった。スタート前の表情とのギャップに、ついつい目が離せなくなる。シグネチャービバレッジのテーマは「桜」。カクテルグラスの側面に桜色のゼリーを塗り、宇治の緑茶を使ったシロップ、乳脂肪分47%としっかりとしたコクのある生クリームを層にする。トップには特殊なマシンで粉末状にした桜アイスクリームを盛った。これを別の容器に入れたエスプレッソと共に提供。温かいエスプレッソをカクテルグラスに注ぎ、アイスクリームを溶かしながらいただくメニューとなっていた。

シグネチャービバレッジ「桜」をつくる岡田さん

競技が無事に終了し、司会者が「(男前なので)お店でもモテるんじゃないですか」との質問をすると、「ええ、モテます」とキッパリ。状況によっては引いてしまうような回答だが、そこは岡田さんのキャラ勝ち。会場を爆笑の渦に巻き込んでいった。結果は準優勝。「ニュータイプのスターバリスタ、誕生だ! 」と私は興奮してしまった。

丸山珈琲の底力

そして今回のJBCでもう1点注目してもらいたいことがある。ファイナリスト8名のうち3名の所属が「丸山珈琲」であることだ。3位の渡辺美代子さんは「丸山珈琲 軽井沢本店」(長野)、4位の中原見英さんと6位の宮川賢司さんは「丸山珈琲 リゾナーレ店」(山梨) と勤務店こそ違うものの、この事実には驚いた。

「丸山珈琲 軽井沢本店」(長野)の渡辺美代子さん

「丸山珈琲 リゾナーレ店」(山梨)の中原見英さん

「丸山珈琲 リゾナーレ店」(山梨)の宮川賢司さん

丸山珈琲といえば、高品質な自家焙煎のコーヒー豆が有名で、都内のカフェや喫茶店でも同店の豆を使っている店がある。しかし店舗はというと、軽井沢と山梨に1店舗ずつあるのみ。にもかかわらず、JBCファイナリストを3名も輩出するとは。今回の大会がきっかけで丸山珈琲を知った人も多いはず。こうやって、よい店が世に知られていくのは非常に喜ばしいことだ。

昨年はWBCの主催国が日本だったことから、私も初めてWBCを観戦した。制限時間をオーバーしてしまう出場者が続出。緊張のあまり手が震え、カプチーノのフォームアート(表面に描いたハートやリーフ等の模様のこと)がうまく描けないバリスタもいた。もちろん決勝戦ともなるとハイレベルな戦いが繰り広げられていたのだが、そんなWBC観戦を経て再びJBCを見ると、「日本のバリスタは平均してレベルが高い」と強く感じる。まだ今年のJBCが終わったばかりなのだが、「来年のJBCではどんなスターバリスタが誕生するのだろう」とワクワクしてくる。と、その前に、まずはWBCに出場する竹元さんを応援したい。

表彰式でがっちりと握手をするチャンピオンの竹元さんと準優勝の岡田さん

表彰式後のフォトセッションにて