日本スペシャルティコーヒー協会と日本バリスタ協会は11日、東京・有明の「ビッグサイト」にて「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ 2008」(以下、JBC2008)を開催した。優勝者はJBC5度目の出場、3度目の決勝進出となる鹿児島・井ノ上珈琲 ヴォアラ珈琲国分本店の竹元俊一さん。ここでは、竹元さんの競技の様子を中心にお届けしながら、ニュータイプのスターバリスタ(!?)も誕生した同チャンピオンシップの様子をレポートする。
「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ 2008」の結果順位 | 名前 | 会社名・店舗名 |
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1位 | 竹元俊一 | 井ノ上珈琲 ヴォアラ珈琲国分本店(鹿児島) |
2位 | 岡田章宏 | 小川珈琲 京都三条店(京都) |
3位 | 渡辺美代子 | 丸山珈琲 軽井沢本店(長野) |
4位 | 中原見英 | 丸山珈琲 リゾナーレ店(山梨) |
5位 | 石谷貴之 | アニヴェルセル・カフェ(東京) |
6位 | 宮川賢司 | 丸山珈琲 リゾナーレ店(山梨) |
7位 | 村山春奈 | クラブハリエ 日牟禮カフェ(滋賀) |
8位 | 伊藤さおり | UCC上島珈琲 UCCコーヒー博物館(兵庫) |
競技の様子を解説する前に、「バリスタってどんな職業!?」「JBCって何!?」という方のために、簡単に説明をしておこう。
バリスタ=barista。イタリア語でバーテンダーやバールのオーナーを意味する言葉だが、近年では"エスプレッソを抽出する人"としての意味合いが強くなってきている。では、エスプレッソだけを淹れればいいのかというと、それも少し違うように思う。おいしいエスプレッソを淹れるのはもちろんのこと、お客への気配りも欠かさないバリスタこそが一流のバリスタとされているからだ。エスプレッソの抽出技術に加えて、接客能力の高さもバリスタには求められる。
JBCはそんなバリスタの技能を競う日本大会。予選を突破した8名のバリスタが決勝に出場し、1人15分間の制限時間内で競技を行なう。この時間内に、エスプレッソ、カプチーノ、シグネチャービバレッジ(エスプレッソを使用した自由テーマのドリンク。ただしアルコールの利用は不可)を4杯ずつつくり、審査員に提供する。
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エスプレッソの抽出準備をするUCC上島珈琲 UCCコーヒー博物館(兵庫)・伊藤さおりさん |
フォームアートを施すアニヴェルセル・カフェ(東京)の石谷貴之さん |
シグネチャービバレッジでシェイカーを振るクラブハリエ 日牟禮カフェ(滋賀)・村山春奈さん |
しかし前述の通り、バリスタはホスピタリティも求められる職業。JBCでは抽出技術や作品の味覚面だけではなく、審査員がつくテーブルのコーディネート、審査員へのプレゼンテーションの内容なども審査対象となる。審査員は、競技しているバリスタのカフェにやってきたお客という感覚、といえば伝わるだろうか。そしてJBCの優勝者は、「ワールドバリスタチャンピオンシップ」(以下、WBC)、つまりバリスタ世界一を競う大会の出場権を得る。ちなみに、WBC2008は今年6月、デンマーク・コペンハーゲンで開催される。
説明はここまでにして、いよいよJBC2008チャンピオンに輝いた竹元さんの競技紹介に移るとしよう。5人目の競技者となった竹元さんは、ステージに登場すると目を瞑って静かに立ち、競技スタートの時を待っていた。精神統一をしているかのよう。競技が始まると、エスプレッソ、カプチーノ、シグネチャービバレッジの順で作品を仕上げていく。「見ていて安心」といった安定感だ。さすが、JBC2006でも優勝しただけのことはある。
JBCでは各出場者がコーヒー豆を持ち込んでおり、竹元さんが使用したのはコスタリカやブラジル、インドネシア産の豆をブレンドした豆。印象的だったのが、ポータフィルターに入れたコーヒー粉をならす際に、パレットナイフを使っていた点である。ポータフィルターとは、エスプレッソマシンの器具の1つで、挽いたコーヒー粉を詰める部分。この器具をマシン本体にセットし、エスプレッソを抽出する。通常はポータフィルター内に粉を詰めた後、指で表面を平らにするので、私は竹元さんの方法に「おっ!?」と感じたわけだ。
その理由は、竹元さん曰く「お客様の口に入る食品には、衛生面の問題から極力、直に触れるべきではない」。さらに、竹元さんの経歴にもその答えがあった。バリスタになる前は、ケーキ職人だったという。現在の勤務先であるコーヒー専門店「ヴォアラ珈琲」で飲んだエスプレッソに感動し、バリスタへと方向転換をはかったのだ。菓子職人時代はパレットナイフといえば日常的に使用する道具で、「自分の指先同様に使いこなせる」とのことだ。お客には見えないところで、こんな細やかな心遣いをしているとはさすがチャンピオンである。
シグネチャービバレッジは、「イン・ザ・モーメント」という名前。フォームドミルクやマンゴーピュレ、砂糖にエスプレッソを加え、ネーブルオレンジの香りもプラスしている。「香りをかいだ瞬間、口に入れた瞬間など、その瞬間瞬間の味わいを楽しんでもらいたいです」。
決勝戦をみていた時から「これは、竹元さんが優勝するのでは……」と感じさせるほどの抜群の競技を披露してくれた。コペンハーゲンで開かれるWBCでの活躍を期待したい。