ビーグル号の船内を抜けると、眼前にガラパゴス諸島の風景が出現する。ダーウィンが進化論を着想した"進化論の故郷"だ。こうしたテーマの展覧会は、化石や標本の展示ばかりを想像しがちだが、こうした実際に生きた生物や植物の展示が、ダーウィンが感じたそのままの感動と衝撃を見る者に与えてくれて新鮮だ。
なかでも圧巻は、生きたガラパゴス・ゾウガメ。会場では、甲長106cm、体重156kg、推定年齢75歳の太郎くんが来場者を歓迎してくれる。そもそも「ガラパゴス」とは、スペイン語で「カメの棲む島」という意味で、ガラパゴスのシンボルといえる存在。ダーウィンは、同じゾウガメが島ごとにわずかに違う形をしていることに驚いたという。ゾウガメは長命で、寿命は100歳とも200歳とも。かつては20万頭いたというが、現在は約1万頭に激減。1960年代から、チャールズ・ダーウィン基金が保護増殖活動を展開している。
他にも、巨大な口で何でも呑みこんでしまうベルツノガエルなど、ふだんは滅多にお目にかかれない珍しい生きものが会場のあちこちに。また同コーナーで見逃せないのが、ダーウィンがアルゼンチンで化石を発見した巨大な「グリプトドン」だ。まるで背中に大釜を背負ったような奇妙な姿。隣りに展示されているアルマジロとよく似ているが、大きさがあまりにも違う。すでに絶滅したこうした生きものと、現在生きている動物との類縁性は、ダーウィンに進化論を着想させる大きなきっかけになったといわれる。