唐の時代より続く中国武術崆峒(こうどう)派に伝承される"華麗なる舞の如き秘拳"「花架拳(かかけん)」。天女が天空を舞うように優雅で華麗な動きでありながら、相手の死角にはいって関節技やツボを攻撃するなど巧妙な技が多く、女性など体格、体力のあまりない人にも向いている武術とされている。今回は東京都港区恵比寿のクラブモニカで行われている花架拳の基本動作から紹介しながら、花架拳の魅力についてお伝えする。

今回教えていただくのは、崆峒派全体を統括する第十一代掌派者である花舞影先生。花舞影先生によると、花架拳の発祥はシルクロードの町として知られる甘粛省敦煌市であり、同じ甘粛省にある崆峒山は崆峒派武術の本山になるという。「中国武術は流派の下にいくつかの門があります。花架拳は崆峒派の最高門であり、門外不出の秘術でありましたが、現在では広く教えられ、一番美しい中国武術と呼ばれています。日本では夫である故・燕飛霞老師とともに1990年より指導を始めたのが最初です」(花舞影先生)。

花舞影(かぶえい)先生
東京生まれ。ウィーンの商業美術大学(Hochschule fuer angewandte Kunst)を卒業後中近東、東南アジアを遍歴して帰国。日本ではドイツ語通訳、ガイド、翻訳、添乗業に就く。1981年、太極拳団体の一員として初めて訪中。その後数回にわたり中国、香港、台湾で中国武術を学習。1987年、広州で燕飛霞老師及び崆峒派武術に出会い、深い感銘を受ける。1990年、燕老師と結婚。東京に移住した老師とともに崆峒派武術の指導を始める。燕老師より崆峒派花架拳門の全20套路を伝授され、1999年11月、老師より花架拳門掌門人に任命される。2005年燕飛霞老師の遺志を継ぎ第十一代掌派者となる。

また、花架拳は体を引き締める効果があり、体のラインを美しくしながら仕草も綺麗になるらしい。そこで早速、花架拳を教えていただくことにした。

まずは基本の動作に挑戦。今回は3つの動作を教えてもらった。

扇子を開き、相手の攻撃をよける

扇子で相手を攻撃

ひじで相手を攻撃

いずれも優雅な動きだが、それぞれ攻撃の意味があり、さすが武術であると感じた。「扇子は崆峒派の5代目家元から使われるようになりました。現在、扇子の骨は竹ですが当時は鉄で先を尖らせていたため、相手を切りつけたり、突き刺したりすることができたそうです」。

このような動作を組み合わせた一連の動きを武術の用語で套路(とうろ)という。そこで花架拳の基本も教えてもらう。まず一番大事なのは「交差歩」だ。「交差歩は立ち方の基本です。左右の太ももを交差した状態で、前に出した足はかかとを内側(つま先を外側)にし、後ろの足はかかとを外側(つま先を内側)にします」。このまま腰を落とすと「座蓮式」となる。

交差歩

低い姿勢の交差歩

座蓮式

さらに扇子の使い方も簡単に教えていただいた。「扇子は落とさないようにするため、掌のやや中央に要(かなめ)を置いて握ります。また扇子は手首のスナップを使って開き、端の骨の付け根を小指で押さえます。そうすることで扇子が勢いで戻って閉じてしまうことを防ぎます」。

扇子を閉じた状態

扇落とさないように掌のやや中央に要(かなめ)を置いて握る

扇子を開いた状態

扇子の端である要(かなめ)の部分を小指で押さえる

さらに歩き方。「歩法は止まった姿勢と姿勢をつなぐ動きです。かかとから足を着地させ、つま先を外側、かかとを内側にして下ろします。これを繰り返します」。呼吸法については「口を閉じて鼻から呼吸する」のが基本だそうだが、レッスン中に呼吸法を教えることはないという。「動作をマスターすると自然に呼吸法を身につけることができます。そうなると、階段の昇降や激しい運動でも息が上がらなくなりますよ」とのことだ。

その後、実際にクラブモニカで行われているレッスンに参加させていただいた。参加者は若い女性が中心だ。ストレッチの後、歩行練習をして演舞に挑戦する。先生の動きを真似ながら実際に動いてみると、交差歩の重要性を感じる。ほとんどの動きに交差歩が取り入れられ、そこに手の動きがついてくるといった感じだからだ。遅れたり、間違ったりしながらも中国音楽に合わせて踊ると、次第に爽やかな気持ちになってくるのが不思議である。さほど激しい動きも無く、優雅で洗練された動きが心地よい。その後、扇子を持った套路なども学びながら、90分というレッスン時間はあっという間に過ぎた。

クラブモニカでのレッスンについて花舞影先生は「1カ月目は基本の立ち方や歩き方、体全体の動かし方を学び、2カ月目はテーマを設けながら基本を復習します。元々武術ではありますが、エクササイズとしても非常に効果的ですから各人のニーズに合わせてレッスンしております。なお、クラブモニカでは2006年の秋から始めております」と話す。花架拳はクラブモニカで毎週火曜日の13時~14時30分に行われている。料金は1カ月(4回のレッスン)で1万2,600円だ。その他、花架拳の教室は東京を中心に開かれている。詳細は国際崆峒派武術協会公式サイトで確認できる。

最後に、花舞影先生は「生徒さんは若い女性が多いですが、柔軟性を養ったり腰痛を軽くするといった効果もありますので、老若男女問わず是非やっていただきたいと思います」(花舞影先生)と締めくくった。クリスマスやお正月シーズンで体重の増加が気になる時期だが、体を引き締め、且つ優雅な仕草も身につけられる花架拳に是非チャレンジしてみてはいかがだろうか。