夏と言えば怪談の季節、怪談と言えばタレントの稲川淳二。この夏も恒例となった怪談ツアーを中心に、各方面で大忙しの稲川淳二が、自身の持ちネタから厳選した怪談ばかりを語り下ろした新作DVD『超こわい話シリーズ 稲川淳二の怨念劇場』(全2巻)が7月27日に2本同時リリースされる。普段は語られることのない怪談制作秘話から、怪談にかける思いまで、稲川淳二が熱く語った。

これまでとは、違うテイストの怪談集

身振り手振りを交えて真剣に語ってくれる稲川氏。でも、これがカメラマン泣かせなんです……

──稲川さんといえば、これまでも多数の怪談作品をリリースされていますが、今回は、ズバリどんな作品なのでしょうか?
「今回のDVDでは思い切って冒険してみようという気持ちがありましたね。皆さんがご存知のいつもの稲川節の怪談っていうものがあるとしたら、今回はそれとはちょっと違う試みをしてみようと思ったんです。しっかりとしたオチがなく不条理なブツ切りで終わる話とか、怖いだけでなく不思議な印象を残す話とか、2作ともすべてこれまでとは違うタイプの怪談を集めてみたんです。話し方や、テンポなんかも、それぞれの話ごとに、すべて変えてあるんですよ」

──以前から、「怖いだけじゃなく、心に染みる怪談をやりたい」と話されていましたが、今回のDVDにも、霊の寂しい気持ちが感じられるような話や、若者向けに戦争の悲惨さを伝えるような怪談がありますね。
「そうですね。私は毎年、怪談ツアーをやっています。これは全国のいろいろな場所で怪談を聞いていただくライブなんですが、同じ話でもお客さまの年齢や住んでいる地域によって、気に入ってくれる部分や、怖がってくれる部分がまったく違うんです。様々な異なる感想を意識して語っていると、同じ怪談話でも説明部分や口調でいくつか違うバージョンが生まれることがあります。これが、面白くてね。だから今回の作品は、このツアーの経験も活かして、いつものひたすら怖がらせる稲川節とは違う試みをしているんです」

稲川怪談と言えば、「関係者に多数の死者が出た」、「テレビに実際に霊が映った」などのエピソードで話題となった長編『生き人形』や、サーフィンを楽しむ若者が体験する恐怖を描いた『長い遺体』などが有名だ。今回のDVDには『長い遺体』など過去の名作怪談が新規で収録されている。

『長い遺体』は、サーフィンをしに海に出かけた若者たちの話

おなじみの怪談にも新しい命が

──今回は『長い遺体』、『渓谷の廃屋』など、稲川さんファンにはおなじみの有名な怪談も入っていますね。
「ええ。ただ、この2つのお話は再収録ではないんです。今回、このDVDのために新たに語り下ろしたものなんです。馴染みの怪談と言っても、『長い遺体』なんて、もう10年近く話してないんですよ。みなさんにとっては有名な話みたいですが、自分にとっては時間が経過しているせいか印象が変わりましたね。時代が違うと、怖いポイントも違うんですよ。不思議ですねえ。怪談も生き物なんですよ」

──10年近くお話していない怪談が、有名な話になっているというのも凄いですね。
「ええ。皆さんが"稲川の怪談で一番怖い"と言ってくださる『生き人形』なんかも、数年に一度しか話してないですから。あれは本当にちゃんと語ると2時間以上の長い怪談だし。よっぽど強く頼まれた時しか語らないですね。ほかの怪談が話せなくなっちゃいますもん(笑)」