1次検査でがんが発見される確率はわずか4%

大腸がんになるポリープはどのようなものなのだろうか。寺井院長によるとそれは「腺腫」と、「陥凹型がん」に大別されるという。腺腫は大腸の粘膜が腫瘍性に増殖したもので、大腸ポリープの約8割を占める。大きくなると、がん化する可能性があるため、内視鏡検査で切除する対象となる。一次検診で用いられる便潜血検査で見つけることができる。一方の陥凹型がんは便潜血検査では発見できない。

大腸内視鏡検査の様子。がん化した部分に生理食塩水を入れて盛り上がったところを、スネアで電気凝固しながら切除する

最近は、大腸がん検診で免疫的便潜血検査が普及しているが、「大腸がん検診で行われる便潜血検査陽性で、悪性腫瘍が発見される確率はわずか4%」と寺井院長。「もちろん便潜血検査は、安くて簡単に行えるという長所もありますが、内視鏡検査を受けた方がより確実に大腸がんを早期発見できます」。

大腸がんは早期であれば、簡単に内視鏡で治療できる。「家族に大腸がん患者がいる方は40代から、そうでない方は50代からの大腸内視鏡検査を進めています。大きいポリープやたくさんのポリープが見つかった人は大腸がんになりやすいため、定期的に検診を受けてほしいと思います。また、血縁に大腸がん患者がいる場合も同様です。ただ、家族にがん患者がおらず、ポリープも見つからない場合は3年ごとに内視鏡検査を受ければ十分ではないでしょうか」。

料金についてだが同クリニックでは3割負担の場合、観察や組織検査で5,000から10,000円。ポリープ切除した場合は、20,000~30,000円となっている。

検査室の様子。検査中の様子が確認できるモニターなどが設置されている

大腸がん検診を受ける病院として気をつけてほしい点について聞くと

  1. きちんとした処置(腫瘍の切除)まで内視鏡検査の中に組み込まれている
  2. 大腸内視鏡の経験が、最低1,000例以上ある医師がいる
  3. 内視鏡専門医が直接検査をするクリニックや病院
  4. 内視鏡の消毒を検査の度に行っている

の4点が挙げられた。寺井院長は「内視鏡検査で治療をしなかったり、内視鏡の消毒を行っていないなど、受診者にとっては当たり前ともいうべきことをやっていない病院があるので注意が必要です」と指摘する。

内視鏡を消毒する機器。「検査のたびに消毒していない病院もあるので注意が必要」と寺井院長は警告する

女性の死亡数が高い大腸がんだが「実際は、男性の方が大腸がんに罹るリスクが高いのです。ただ、女性は会社などで健康診断を受ける割合が低いのと、大腸内視鏡検査を受けることへの抵抗から死亡数が増えているのでは」(同・寺井院長)という。最後に寺井院長は「きちんとした医師であれば痛みもなく、検査を受けることができます。特に、大腸内視鏡検査は医師の顔を見ないで検査を受けるため、不安を感じてしまう女性の方も多いはず。できるだけ、事前に医師とのコミュニケーションを図りやすい病院を見つけてほしいと思います。大腸内視鏡検査は、かなり国内で普及した現在でも専門家が少ない現状にありますが、インターネットなどで情報を収集したり、直接病院に出向いて医師と相談することが重要でしょう」と語った。