―がん検診の現状について教えてください

「日本のがん検診体制そのものは出来上がっています。しかし、検診を受ける側の意識は未だ低いままです。今回撲滅キャンペーンを行う大腸がんでは、1次検診の便潜血検査を受ける人はがん検診を受けた人の約2割と、依然普及していないのが現状。さらに、1次検診の陽性者は2次検診(精密検査)で内視鏡検査を主に受診していただくのですが、陽性者の内約4割は受診していないのが現状です。一方で女性の大腸がんの死亡数は肺がんや胃がんを抜いてトップ。男女計でも2015年までには罹患率トップになると言われています」

――なぜがん検診は浸透しないのでしょうか

「早期の大腸がんは自覚症状がなく、検査に行こうという気持ちになりにくいんですね。さらに、地域検診や人間ドッグでも大腸がん検診がメニューに入っていないことが多く、一般的に知られていないのです。しかし、定期的に検診を受ければ大腸がん撲滅には間違いなく効果が現れます」

――キャンペーンの今後の展開は

「大腸がんで亡くなる人をひとりでも減らすことを願い、テレビやラジオCM・新聞・雑誌などを通じて、大腸がん検診を呼びかけていきます。たとえば、キャンペーンの第1弾として、『サディスティック・ミカ・バンド』などで活躍する加藤和彦さんが作曲し、歌手のANRIさんや平原綾香さんが共に歌うキャンペーンソング『手と手 手と手』をテレビコマーシャルで放映しました。今後もさまざまな展開を考えています」

――1次検診も万全ではないと聞きますが、どれくらいの頻度で内視鏡検査を受ければいいのでしょうか

「大腸がんは、他のがんに比べ進行が遅いので、家系にがん患者がいない場合は3~5年ごとに検査すれば十分な効果を得ることができると思います。今後は夫婦で結婚記念日に検査に行くといった具合に、気軽に検査に行ける雰囲気をつくっていきたいですね」

――オリンパスとして、大腸がん撲滅に向けた今後の取り組みを教えてください

「当社は信頼されるというだけでなく、その上の尊敬されるブランドの確立を目指しています。医療の進化によって、がん自体も進化しますから、永遠にがんとの闘いは終わりません。がん化している部分を切除する際の出血を抑えるなどの技術を開発することでより安全な手段を確立し、処置時間の短縮、内視鏡の処置にかかる人員の削減など、一層の効率化を図っていきたいと思っています。まずは同社の社員やOBから大腸がんを撲滅したいですね。そしてキャンペーンの文字にあるとおり、支援の輪(CIRCLE)を広げていければと考えております」