パワーエレクトロニクス用途の超高電圧スーパージャンクションSiC デバイス

Paper #9.1, “Scalable Ultrahigh Voltage SiC Superjunction Device Technologies for Power Electronics Applications,” R. Ghandi et al, GE/RPI

パワーMOSFET、IGBT、SiCスイッチ/ダイオードなどといったパワー半導体は、船舶、鉄道、エネルギー、およびその他の大規模アプリケーションで使用される電気モータードライブおよび電力変換システムの基盤である。

これらの半導体のスイッチング損失と伝導損失のために、電力変換システムは低いスイッチング周波数に制限されてきた。それらのデバイスがより高い周波数で動作することができれば、そのようなアプリケーション用に、より小さく、より効率的で、より高電圧で低コストのシステムを開発できる。General Electric(GE)の研究者が率いるチームは、超高エネルギー(MeV)イオン注入技術によって形成されたSiCスーパージャンクションMOSFETとダイオードについて報告する。

これにより、SiCユニポーラまたは理論上の限界を下回る特定のオン抵抗を持つデバイスが実現し、損失が減少する。GEの研究者は、2kV SiCスーパージャンクション PiNダイオードと、3.8kV SiCスーパージャンクションJBS(ジャンクション・バリア・ショットキー)ダイオードを構築することにより、この技術を実証した。これらのデバイスは、パワーエレクトロニクスアプリケーション向けの3~20kVスイッチの将来の実現に向けたスケーラブルな道筋を示すものだという。

  • 図5:3.3kV SiCスーパージャンクションJBSダイオードの概略図

    図5:3.3kV SiCスーパージャンクションJBSダイオードの概略図(左)とSEM断面図(右)

  • ダイオードの順方向および逆方向特性

    図6:(左)ダイオードの順方向および逆方向特性。(右)2回のエピタキシャル過成長と高エネルギー注入を行った3.8kVの深部注入SiC JBSダイオードのSEM写真

BiCMOSで史上最高の発信周波数を実現

Paper #11.6, “415/610GHz fT/fMAX SiGe HBTs Integrated in a 45nm PDSOI BiCMOS Process,” V. Jain et al, GlobalFoundries

GlobalFoundries(GF)の研究者たちは、45nm BiCMOSプロセスによるSiGeヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)について報告を行う。SOI技術のHBTでこれまでに報告された最高のFmax(発振周波数)を達成したという。

リングオシレータテスト回路では、1段あたりのゲート遅延は1.76psで、これもBiCMOSデバイスの新記録だという。また、カスコードパワーセル測定(アンプ測定)では、100GHzで18dBを超えるゲインが示された。この技術は、SiGe HBT、高速CMOS、低損失パッシブデバイスを単一のプラットフォームにモノリシックに統合し、5G/6G通信、衛星通信、サブTHzセンシング、車載レーダーなどの高周波アプリケーションに有望だとしている。

  • 0.3VでのGFの高性能BiCMOSテクノロジのさまざまな世代のデバイスのFmax

    図7:0.3VでのGFの高性能BiCMOSテクノロジのさまざまな世代のデバイスのFmax(左)とFt(右)の性能

GaN HEMTの周辺をダイヤモンドでとり囲んで高効率のデバイス冷却

Paper #30.8, “Novel All-Around Diamond Integration with GaN HEMTs Demonstrating Highly Efficient Device Cooling,” R. Soman et al, Stanford Univ./Univ. Bristol/UC Santa Barbara/Georgia Inst. of Technology/Univ. Maryland

GaNベースのデバイスは、他の材料に比べてあらゆる動作周波数でより高い電力密度であることを考慮すると、5G以降などの高周波アプリケーション向けのソリッド ステートパワーアンプとして大きな可能性を秘めている。

しかし、出力電力密度が高いとデバイスの自己発熱が大きくなり、RFの性能と信頼性が制限されてしまう。特に超大規模デバイスの場合は顕著で、パッケージレベルの熱除去は常に適切であるとは限らない。

ダイヤモンドは優れた熱伝導体であり、スタンフォード大学が率いる研究チームは多結晶ダイヤモンドフィルムをヒートスプレッダーとして使用して、デバイスレベルでのホットスポットの除去を容易にした。

新しいポリマー支援シーディング技術により、等方性薄膜CVD成長ダイヤモンドでGaN HEMTを完全に取り囲むことができ、完全な側壁被覆を提供し、基板への総熱抵抗を最小限に抑えたという。

彼らは、デバイスのチャネル温度を監視するために3つの異なる特性評価手法を使用し、500nmオールアラウンドダイヤモンドを使用したGaN HEMTは、ダイヤモンドを使用しないコントロールデバイスと比較して、ピーク温度と平均チャネル温度が低いことを発見した。ピーク温度は、9.5W/mm DC電力で98±19℃低くなったという。また、温度プロファイルがより均一になり、ゲート電極に沿ったホットスポットが少なくなったともしている。

  • GaN HEMT断面構造の模式図

    図8:GaN HEMT断面構造の模式図。(a)ダイヤモンドなしのデバイス、(b)上面のみのダイヤモンドを積層したデバイス、(c)周辺をすべてダイヤモンドで覆ったデバイス。このようにオールラウンドダイヤモンド積層では、アクティブデバイス領域、MESA側壁、およびSiC基板にダイヤモンドがダイヤモンドで覆われている

  • DC電力とチャネルの平均温度の比較

    図9:DC電力とチャネルの平均温度の比較。対照サンプルは、特定のDC電力に対して最高の平均チャネル温度を示した。上面のみのインテグレーションの場合、ダイヤモンドの体積が大きくなるため、ダイヤモンドの厚さが増加すると、冷却の改善が見られる。オールラウンドインテグレーションでは、500nmの薄いダイヤモンドを使用しても、チャネル温度は最低であり、厚さ2.2μmのダイヤモンドを使用した上面のみのサンプルと非常に類似しており、チャネルで発生した熱が効果的に伝達されていることが確認された

なお、IEDM 2022では、最近、研究の関心が高い以下の5つの分野についてフォーカスセッションが開催される予定となっている。

  • Session 3 – Advanced Logic Technology – Focus Session - Advanced Heterogenous Integration: Chiplets and System Packaging
  • Session 14 - Emerging Device and Compute Technology - Focus Session - Quantum Information and Sensing
  • Session 17- Reliability of Systems and Devices/Modeling and Simulation - Focus Session - DNA Digital Data Storage, Transistor-Based DNA Sequencing, and Bio-Computing
  • Session 21- Memory Technology/Emerging Device and Compute Technology - Focus Session - Special Topics in Non-Von Neumann Computing
  • Session 29- Sensors, MEMS, and Bioelectronics - Focus Session - Emerging Implantable-Device Technology