最初に結論:香港で開催されたInnoEX 2026の「RoboPark」では、中国のヒューマノイドロボット大手をはじめ最先端ロボティクス技術が一堂に会し、実用化への道筋を印象付けた。
記事の重要ポイント:
  • 1:AGIBOT、Unitree、UBTECHが実用化に向けた最新ヒューマノイドロボットを披露
  • 2:人間に近い作業が行える高精度なロボットハンドは現場や家庭での活躍に期待
  • 3:教育支援ロボットやリハビリ支援システムなども出展。ロボットの活用先に広がり

香港貿易発展局(HKTDC)は2026年4月13日から16日まで4日間にわたって、イノベーション・テクノロジー専門の展示会「InnoEX(イノエックス)」を香港コンベンション&エキシビションセンター(HKCEC)で開催しました。

InnoEXは香港を中心に世界中から最先端テクノロジーを持つ企業や国・地域がブースを出展しています。今回は、初めてロボティクス特設エリア「RoboPark」が登場し、会場には100台を優に超えるロボットが「商業・産業」、「ヘルス&リビング」、「エンターテインメント&ソーシャル」などのエリアに分かれて展示されていました。

  • イノベーション・テクノロジー専門の展示会「InnoEX」に初登場した「RoboPark」

    イノベーション・テクノロジー専門の展示会「InnoEX」に初登場した「RoboPark」

調査会社のカウンターポイントリサーチによると、2025年にはヒューマノイドロボットの商業展開が加速し、グローバルの売上高が初めて5億ドルを超えたとのことです。300社以上あるヒューマノイドロボット企業の中でも特に中国企業の存在感は大きく、1位のAGIBOT(約26.6%)、2位のUnitree(約18.5%)、3位のUBTECH(約10.7%)の3社で世界の売上高の過半数を占めています。

これら3社のブースに加えて、注目ロボットメーカーのブースを紹介しましょう。

歩く、踊る、働く――急進化する人型ロボット

2025年12月に日本市場への参入を発表したAGIBOTのブースでは、ヒューマノイドロボット「AGIBOT X2」の展示・デモを行っていました。AGIBOT X2は身長約130cm、体重約35kgで、1回の充電で2時間以上の稼働が可能。ダンスを踊ったり、カンフーの演舞を行うなど、軽やかに動いていました。

  • AGIBOTブースの前でカンフー演舞などのデモを行っていたヒューマノイドロボット「AGIBOT X2」

興味深かったのが、ブースからブースへの移動です。ブース前の空きスペースでカンフーの演舞がし終えたかと思うと、ブースの担当者がAGIBOT X2を連れて人混みを縫うように別のブースまで向かうのです。すれ違う人にぶつからないように、たまには立ち止まったりしながらも、スイスイと人混みの中を進んでいく姿が印象的でした。

  • 人混みの中をかき分けるようにブースを移動する姿が印象的でした

Unitree Roboticsのブースでは、身長約127cm/体重約35kgのヒューマノイドロボット「Unitree G1」や、四足歩行ロボット(ロボット犬)「Unitree A2」によるデモのほか、消防署のレスキュー部隊でのロボット犬の活用事例を紹介していました。

  • Unitree Roboticsのヒューマノイドロボット「Unitree G1」

    Unitree Roboticsのヒューマノイドロボット「Unitree G1」

  • 消防署のレスキュー部隊で活用されているロボット犬「Unitree A2」

    消防署のレスキュー部隊で活用されているロボット犬「Unitree A2」

香港エレクトロニクス・フェアとInnoEXのオープニングセレモニーでは、2体のUnitree G1のうち1体が司会者役を務め、ボクサーに扮したもう1体のロボットと掛け合いを演じるというデモも行われました。一度寝転んだロボットが体をひねりながら立ち上がる姿などは、まるで人間そのもののようにも見えました。

  • InnoEXのオープニングセレモニーで行われたUnitree G1のデモの様子

    InnoEXのオープニングセレモニーで行われたUnitree G1のデモの様子

  • 一度寝転んだロボットが体をひねりながら立ち上がる姿は、まるで人間そのもののようでした

    一度寝転んだロボットが体をひねりながら立ち上がる姿は、まるで人間そのもののようでした

消防署のレスキュー部隊での活用事例では、ロボット犬が最大傾斜45度、1段の高さ最大40cmの階段を昇り降りしたり、消防用ホースを接続して消火に向けた放水もできるとのことです。サーマルカメラモジュールを取り付けることで、要救助者発見に役立てられるなど、モジュール交換式を採用しています。Unitree製品は日本でも展開しているので、こうしたロボットが国内の災害現場で活躍する日も遠くないのかもしれません。

UBTECHのブースでは、ヒューマノイドロボット「Walker S2」やサービスロボット「Cruzr 1S」のデモを行っていました。Walker S2は身長約176cm、体重約70kgとほぼ人間と同じサイズと重量になっており、秒速約2mの最大移動速度に対応。腰を左右約162度回転させて作業したり、かがんで物を持ち上げたりもできるという、かなり万能なロボットです。

  • UBTECHのヒューマノイドロボット「Walker S2」

    UBTECHのヒューマノイドロボット「Walker S2」

Cruzr 1Sは約11.6インチの大画面タッチパネルディスプレイにかわいらしい表情を映し出したり、さまざまな情報を映し出したりできるサービスロボットです。さまざまなセンサーでマップ上の自己位置把握や障害物検知などを行いながら動き回り、商業施設での案内などが可能です。

これの前モデルに当たる「Cruzr」は、2021年11月から2022年1月にかけて大阪市立美術館で開催された「メトロポリタン美術館展」で、作品情報の提供、館内での注意事項、周辺観光情報の紹介などを行う実証実験が行われたこともありました。かわいらしいデザインのCruzr 1Sは来場者の関心を集めていました。

  • サービスロボット「Cruzr 1S」は多くの来場者からの人気を集めていました

    サービスロボット「Cruzr 1S」は多くの来場者からの人気を集めていました

人間の器用さに迫る“最後の1センチ”への挑戦

ヒューマノイドロボットが工場や家庭などで役立つためには、物を持ったり器用に操作したりするロボットハンドが重要になります。RoboParkではロボットハンドに特化したメーカーも出展していました。

Lingxin Qiaoshou Technologyのブースでは、シンプルなロボットハンド「Linkerbot Linker Hand L6」と、より器用に操作できる「Linkerbot Linker Hand L20」を展示していました。

どちらも5本指ですが、スタンダードモデルのL6は11個のジョイントに6つのアクチュエーターを搭載するのに対し、L20は21個のジョイントに16個のアクチュエーターを搭載しており、より高精度な動作が可能になっています。

  • Lingxin Qiaoshou Technologyのロボットハンド「Linkerbot Linker Hand L6」(写真左)と「Linkerbot Linker Hand L20」(写真右)

    Lingxin Qiaoshou Technologyのロボットハンド「Linkerbot Linker Hand L6」(写真左)と「Linkerbot Linker Hand L20」(写真右)

OYMotion Technologiesのブースでは、触覚センサーによる触覚フィードバックを備えるロボットハンド「ROH-AP002」によるデモを行っていました。カメラセンサーの前で手の指を動かすと、瞬時にその動きをトレースするというもの。人間の手ほど可動域は広くないですが、素早く動くのを確認できました。

  • OYMotion Technologiesのロボットハンド「ROH-AP002」

    OYMotion Technologiesのロボットハンド「ROH-AP002」

  • 担当者の手の動きに合わせてロボットハンドが動くデモを行っていました

    担当者の手の動きに合わせてロボットハンドが動くデモを行っていました

「ヘルス&リビング」エリアのRehab-Roboticsブースでは、香港理工大学と共同開発したリハビリテーション支援システム「Hand of Hope」などを展示していました。ロボティクスと神経科学を組み合わせることで脳卒中のリハビリを行い、患者が手の可動域を回復できるよう支援します。リハビリに用いるインタラクティブゲームも用意しており、楽しくリハビリを行えるそうです。

  • Rehab-Roboticsが香港理工大学と共同開発したリハビリテーション支援システム「Hand of Hope」

    Rehab-Roboticsが香港理工大学と共同開発したリハビリテーション支援システム「Hand of Hope」

学びから接客まで広がる、ロボットの新しい役割

「エンターテインメント&ソーシャル」エリアにあるShanghai WhalesBot Technologyのブースでは、幼児から大人までの年齢層をカバーする教育用ロボットをデモしていました。

3.5インチのカラー液晶にかわいらしい顔を映し出して動き回る「Pubbo Air」は、音声で操作したり、アプリからリモートコントロールしたりできる教育用AIロボットで、ゲームなどによってプログラミングやSTEM(科学・技術・工学・数学)スキルを身に付けられるようになっています。

  • かわいらしい表情で動き回るコミュニケーションロボット「Pubbo Air」

    かわいらしい表情で動き回るコミュニケーションロボット「Pubbo Air」

そのほか、教育用ドローン「Eagle」シリーズや、パーツを組み立ててプログラミングやロボットの動かし方などを学べる「AI Module」シリーズなども展示していました。

  • 教育用ドローン「Eagle」シリーズ

    教育用ドローン「Eagle」シリーズ

  • パーツを組み立てて学ぶ「AI Module」シリーズなども展示していました

    パーツを組み立てて学ぶ「AI Module」シリーズなども展示していました

Shenzhen DX Intech Technologyのブースでは、3体のヒューマノイドロボットが歌って踊るというデモを行っていました。

こちらはヒューマノイドロボットといっても姿形は人間にかなり近く、とはいえ無表情で“不気味の谷”現象(ロボットやCGキャラクターなどの造形が微妙に不自然で、違和感や嫌悪感を抱いてしまう現象)を連想させる独特の存在感でした。無機質で無表情なヒューマノイドロボットの動きにユーモラスさを感じたりするのと真逆なのが興味深いところです。

  • 日本の女子高校生のような姿も含めて3種類のヒューマノイドロボットが歌って踊るShenzhen DX Intech Technologyのブース

    日本の女子高校生のような姿も含めて3種類のヒューマノイドロボットが歌って踊るShenzhen DX Intech Technologyのブース

  • 顔の造形が“不気味の谷”寄りなのが気になるところでした

    顔の造形が“不気味の谷”寄りなのが気になるところでした

RoboParkでは、これら以外にも荷物運搬や巡回セキュリティロボットなど数多くのロボットがデモを行っていました。InnoEXに初めて登場したRoboParkは、今後も香港エレクトロニクス・フェアとInnoEXの目玉になりそうです。