ベルギーの独立系半導体デジタル技術研究所であるimecは11月7日、東京にて「imec Technology Forum 2022(ITF Japan 2022)」を開催した。

今回のテーマは、「Driving the semiconductor future(半導体の未来を切り開く)」で、imec社長であるLuc Van den hove氏が「ディープテック:21世紀の課題に対応するロードスター(道標)」と題した基調講演を行ったほか、imecのロジック担当VPであるJ.Ryckaert氏が「DTCOからSTCOへ進化するロジックロードマップ」と題する技術講演を行い、将来の半導体の方向に関するimecのロードマップ最新版の紹介を行った。

Luc Van den hove氏の講演タイトルにあるディープテック(Deep tech)は、「深いところに眠っているけど、世の中の問題を解決する力を秘めている技術」や、「科学的な発見や革新的な技術に基づいて、世界に大きな影響を与える問題を解決する取り組み」を指す最近注目されている概念である。また、DTCOとは、回路パターン設計とプロセス技術の同時最適化(Design-Technology Co-optimization)、STCOとは、半導体集積システム構成と回路パターン設計とプロセス技術の同時最適化を意味している。

  • Luc Van den hove氏

    Luc Van den hove氏 (著者撮影)

半導体技術を医学に応用するためにも半導体微細化は必要

imecでは、「よりよい生活を享受する(ための研究を行う)」というスローガンの元に、半導体技術を活用した呼気によるPCR検査、ヘルスケアに向けた各種センサ、ゲノム解析、ワクチン製造でのインラインテストなど、医学への応用研究に注力しているが、Luc Van den hove社長は、そのためにもムーアの法則に基づく半導体微細化が必須であり、「半導体技術によって可能になるディープテクノロジーは、人類の途方もない課題に取り組むために不可欠な破壊的なイノベーションを提供する。たとえば、現在および将来の課題に対処するために、世界は医学の変革を必要としている。多くのウイルス学者は、将来のパンデミックの可能性が高まっていると考えているため、将来に備えるために今行動する必要がある。最新の技術的進歩を活用することで、医療を根本的に変革し、将来のパンデミックから世界を守ることができる。医療はデジタル化され、分散型で低コストの個別化された医薬品やワクチンの生産など、重要な進歩が可能になる。しかし、これらの重要な進歩を実現するための課題は山ほどある。ムーアの法則によって、半導体業界が増大するコンピューティングとストレージの課題に対応するようになったように、医療の変革には、指数関数的に増加する量のデータの処理と分析が必要となり、膨大な計算能力が必要になる。また、ヘルスケアは、データの指数関数的な増加に依存する多くの新しいアプリケーション領域の1つにすぎない。これを持続的に可能にするためには、過去数十年にわたって達成してきたものよりもさらに積極的な半導体ロードマップが必要となっている。imecでは、より高性能な半導体技術を実現し続ける方法についてのロードマップを提案してきたしこれからも世界に先駆けて提案していく。また、半導体技術レベル、システムおよびアプリケーションレベルで共同革新を行い、材料科学、生物医学、製薬、AIなどの多くの分野の専門知識を活用することにより、中核となる半導体の専門知識を活用してディープテクノロジーイノベーションを実現する決意である」とその意義を説明した。

また同氏は、講演の中で「Moore's law will not stop (ムーアの法則はこれからも終焉しない)」と繰り返し述べたが、これは「imecはムーアの法則を終焉させぬように全力を尽くす」という意味ともとらえられる。imecは、今後も微細化で先頭に立ち、最先端半導体技術を医学などの応用分野に適用し世界に貢献する決意を示したと見ることができるだろう。そのための強力なテクノロジードライバーが2nmプロセス以降に必須となる高NA(=0.55)EUVリソグラフィであり、すでにASMLと共同でHigh NA EUV Labを設立して早期実用化を目指している(図1)。

経済産業省(経産省)も、imec/ASMLの最新EUV技術なくして2nm未満のプロセス開発は出来ないとの認識に至り、両社と技術提携することを検討している。

  • リソグラフィのロードマップ
  • リソグラフィのロードマップ
  • 図1 リソグラフィのロードマップ。2nmプロセス以降はは高NA EUV露光装置が必須となる (出所:imec、以下すべて)