この宇宙ニュースのまとめ

・村田製作所が米Xonaと低軌道衛星を活用したPNT技術で協業を発表
・GNSSの課題である都市部や屋内での精度低下や耐妨害性を補完
・通信やモビリティ、産業用途に向けた新たな測位ソリューション創出を狙う

村田製作所は6月3日、宇宙スタートアップの米Xona Space Systemsと低軌道衛星(LEO)を活用したPNT(位置・航法・時刻)技術の精度および信頼性向上と事業機会の探索に向けた基本合意書を締結したと発表した。

同合意書に基づき、村田製作所の無線通信やセンサ、タイミングデバイスなどの技術と、XonaのLEOベースの測位・時刻同期技術を組み合わせることで、新たな測位ソリューションの開発を進めるという。

GNSSの課題を補完する新技術

PNTは、高精度な位置・移動経路の情報および時刻同期を提供する基盤技術であり、通信インフラや産業機器、モビリティなど、現代社会を支える重要な役割を担っており、GPSなどに代表される中軌道衛星(MEO)を利用したGNSSが現在の主流となっている。

しかし都市部や屋内環境では信号の遮蔽や反射の影響を受けやすく、位置特定精度や応答速度の低下が課題となっていたほか、妨害電波やなりすましへの耐性にも課題があった。

LEO衛星で精度と信頼性を向上

これに対し、Xonaが展開するLEO衛星ネットワークは地表に近い軌道を周回するため、より強い信号を提供できる特性を持つ。

さらに中軌道・高軌道衛星と比べ高速移動することで多角的な観測データを短時間で取得できることから、位置特定の精度および速度の改善が期待されるという。

また、強い信号を活用することで妨害電波への耐性や不正信号の検知性能の向上にも寄与し、測位精度に加えて信頼性の向上が可能になるとされる。

GNSSとの組み合わせで精度を補完

こうした特長から、LEOを既存のGNSSと組み合わせることで、測位システム全体の補完・強化を図る技術が注目されており、高精度化および信頼性強化の観点で導入検討が広がっているという。

XonaのLEOを複数組み合わせた衛星ネットワークを用いたPNTサービス「Pulsar」は、GNSSとの互換性を備えており、既存システムを維持しながら精度と信頼性を向上できる点が特徴となるとする。

通信・産業分野での活用を視野

両社は今後、今回の合意に基づき、5G/6G通信で求められる高精度な時刻同期や、GNSSが利用しにくい環境での測位ニーズに対応する用途での適用を検討するとしている。具体的には、両社の技術や製品を組み合わせる形での最適な製品・ソリューションの提供可能性について検討を進めていくとするほか、将来的には、データセンターや金融インフラ、建設機械、農業機械など、位置情報と時刻同期の精度が重要となる分野での活用に向けた検証を進め、各領域における性能向上および新たなソリューション創出を目指すとしている。

今回の協業は、衛星測位技術の精度向上に加えて、信頼性などを含めた総合性能を高めることで、付加価値を生み出そうというものと言える。2030年代に6G通信の実用化が期待され、今後、さらに位置情報と時刻同期は社会インフラの基盤技術として重要性が高まっていくことが想定されることから、複数の衛星軌道を組み合わせた新たなアプローチによる高度化が、そうした社会インフラの進化と新たな価値創出につながることが期待される。