Snowflakeは6月1日(現地時間)、米サンフランシスコで年次イベント「Snowflake Summit 2026」を開幕した。初日の基調講演ではCEOのSridhar Ramaswamy氏が、AIエージェントを企業全体で統制する「エージェンティック・コントロールプレーン」戦略を発表。Anthropic共同創業者兼プレジデントのDaniela Amodei氏との対談では、急速に進化するAI時代における企業の構想力と信頼構築の重要性について語った。

  • 「Snowflake Summit 2026」の基調講演で、CEOのSridhar Ramaswamy氏とAnthropic共同創業者兼プレジデントのDaniela Amodei氏が対談を行った

    「Snowflake Summit 2026」の基調講演で、CEOのSridhar Ramaswamy氏とAnthropic共同創業者兼プレジデントのDaniela Amodei氏が対談を行った

「「AIはもはや現実」実運用フェーズに入った企業AI

今年のSnowflake Summitは過去最大の規模となった。会場には2万人以上が詰めかけ、500以上のセッションが開かれる予定だ。

直前に発表した最新の決算(2026年2月~4月期)では、製品売上高が前年同期比34%増の13億3400万ドルとなるなど好調な内容となった。「Cortex AI」などAI関連製品が牽引した格好だ。Ramaswamy氏はステージでまず、「Snowflakeには世界最高のコミュニティがある」と顧客とパートナーを讃えた。

今年のテーマは「AIをリアルに」。Ramaswamy氏は「AIはもはや将来の話ではない。リアルな成果、リアルな機会を生み出している。SnowflakeはAIを顧客のビジネスにとって現実のものにすること」と目標を語った。

例えば食品のNestle。185カ国で2000以上のブランドを展開しているが、エンド・ツー・エンドのデジタル変革の一環として5万人以上の従業員にプロダクトを展開。AIを活用してサプライチェーンの混乱を事前に察知し、需給変動に対してプランナーがリアルタイムで意思決定できる体制を構築しているという。

エージェンティックエンタープライズの4要素とは?

Snowflakeは現在、エージェンティックエンタープライズというビジョンを掲げている。「仕事の本質そのものが変わりつつある。人間主導でインテリジェントなエージェントと協働することが中心になっていく」とRamaswamy氏。そして、「近い将来、エージェントは事業全体にわたって継続的かつ自律的に動くことになる。エージェンティックエンタープライズの幕開けだ」と続けた。

Ramaswamy氏は、エージェンティックエンタープライズの必須要素を4つ紹介した。1つ目の要素は「企業データとコンテキスト」。顧客情報、財務データ、製品データなどの情報がここに含まれる。2つ目は「AIモデル」。Claude OpusやClaude Mythos、Gemini、GPTといったモデルが、データを解釈し推論し行動に変換する。3つ目は「SaaSアプリケーション」。SAP、Salesforce、Workdayなど社員が日々使う業務アプリケーションがビジネスの実行基盤となる。

そして4つ目の要素が、「エージェンティック・コントロールプレーン」だ。Ramaswamy氏はこれを、「最も重要な要素」として、次のように説明した。

「コントロールプレーンとは、データ、モデル、アプリケーションをまたいで調整を行う、いわばミッションコントロールセンターだ。企業の意思決定とアクションが、常にガバナンスされ、信頼でき、自社のビジネス文脈に基づいたものになるよう管理する」

Snowflakeはこのコントロールプレーンを、2つのプロダクトで実装する。ビジネスユーザー向けのパーソナルAIエージェント「Snowflake CoWork(旧称:Snowflake Intelligence)」と、開発者向けのAIコーディングエージェント「CoCo(旧称:Cortex Code)」だ。Snowflake Intelligenceは自然言語で企業データにアクセスし日々のアプリケーション上でアクションを取ることができる。Cortex Codeでは自然言語でアイデアを告げれば、パイプライン、アプリ、エージェントを構築できる。イベントで、両製品の名称変更が発表された。

「エージェンティック・コントロールプレーンという不可欠な新カテゴリが生まれている」(Ramaswamy氏)

  • エージェンティックエンタープライズの4つの要素。中央に入るのが今回新たに打ち出すエージェンティック・コントロールプレーンになる

    エージェンティックエンタープライズの4つの要素。中央に入るのが今回新たに打ち出すエージェンティック・コントロールプレーンになる

データを軸にモデルとアプリケーションをつなぐ

Ramaswamy氏はエージェンティックエンタープライズの4つの必須要素とSnowflakeの戦略について、詳しく説明した。例えばAIモデル。Ramaswamy氏はモデルの位置付けについて、「日進月歩でAIモデルは進化している。だがモデルは独自の競争優位ではない。競合他社も同じモデルを使えるからだ」と述べた。競争優位はデータをAIモデルに組み合わせことで生まれる。

Snowflakeはその考え方に基づき、モデルのマルチベンダー戦略をとる。Anthropic、OpenAIとのネイティブパートナーシップにより、用途に応じてフロンティアモデルとオープンソースモデルを使い分けられる柔軟性を提供する。「データをモデルに持っていくのではなく、AIをデータに直接持ってくる」という原則のもと、モデルを切り替え、組み合わせ、進化させる自由を顧客に提供する。

アプリケーション連携も同様で、SAP、Salesforce、ServiceNow、Workdayといったシステムとのゼロコピー統合により、データを移動・複製することなくすべての情報にアクセスできる。さらにMCP(Model Context Protocol)の採用と、MCPゲートウェイを提供するNatomaの買収によって、Google Drive、Gmail、Jira、Slack、GitHub、Microsoft 365などのアプリケーションもAIモデルから直接操作可能になる。やり取りはSnowflakeのセキュリティとアクセスコントロールのもとで管理され、必要に応じてヒューマン・イン・ザ・ループで人が承認を行う。

  • Snowflakeが提供するAI Data Cloud

    Snowflakeが提供するAI Data Cloud

Snowflake CoWorkとCoCoで実現するエージェンティック・コントロールプレーン

エージェンティック・コントロールプレーンは、部門や人がエージェントを使うようになると必要性が高まる。「財務部門のエージェントが、サプライチェーンのエージェントが下した決定と矛盾する仮定を立てるかもしれない。マーケティングのエージェントが、サポートエージェントが数分前にその顧客から学んだことを知らずにコンテンツを生成するかもしれない」とRamaswamy氏。コンテキスト、モデル、アプリケーションを横断して調整する仕組みを入れることで、ビジネス全体でシームレスな意思決定とアクションを実現するという。

そこで、Snowflake CoWorkは組織の全ユーザーにパーソナライズされたワークエージェントを提供する。Slackメッセージの送信、会議の要約、メールスレッドの横断検索と、日常業務のすべてが自動化され、ガバナンスが担保される。さらに、各チームの実際の業務フローに合わせた専門スキルをエージェントに装備できる。採用担当者には候補者パイプラインを把握したスキルが、四半期計画を立てる営業リーダーには予測を引き出しリスクを浮上させ商談準備資料を下書きするスキルが必要だ。

「AIが答えを与えるだけでなく、その答えとインサイトを、日々使うアプリケーション上のアクションへと変換できる。これが違いを生む」とRamaswamy氏は説明した。

また、CoCoはコードを書くだけでなく、Snowflake環境、テーブル、ロール、セキュリティ境界を理解した上で、ビルド・テスト・デプロイ・最適化を自律的に行い、継続的に学習するという。

「CoWorkとCoCoにより、組織全体がAIの力を活用できる。それを信頼とともに実現する」とRamaswamy氏は述べた。「現在われわれの前にある機会はインクリメンタルなものではなく、変革的なものだ。Snowflakeは企業が安心してデータ上でAIを自由に使える場所だ」

Anthropic共同創業者「夢を描け」――AI時代に企業が今から備えるべきこと

基調講演の後半では、Ramaswamy氏とAnthropicの共同創業者兼プレジデントのAmodei氏が、AIの急速な進化と企業の向き合い方について対談を行った。

  • 左から、Anthropic共同創業者兼プレジデントのDaniela Amodei氏、Snowflake CEOのSridhar Ramaswamy氏。AI時代の企業戦略や信頼性の重要性について議論した

    左から、Anthropic共同創業者兼プレジデントのDaniela Amodei氏、Snowflake CEOのSridhar Ramaswamy氏。AI時代の企業戦略や信頼性の重要性について議論した

「5年前、生成AIやLLMを日常業務に使っている人はいなかったが、現在はあらゆる産業で主要な企業がAIを使っている」とAmodei氏。1年が10年に感じるほどのスピードで変化が進んでおり、当事者であるAnthropicですら、1年後の姿を正確に予測することは難しいという。

こうした環境の中で企業はどのように計画を立てるべきか。Ramaswamy氏の問いに対し、Amodei氏は「夢を描くことが大切」と答えた。

計算資源やデータの増加に伴いモデルの能力が向上するスケーリング則は現在も有効であり、今後もAIの進化は続くとみられる。その上で、「今日時点のモデル性能を前提に開発するだけでは不十分だ」と指摘する。

「大きく考えてほしい。自分のプロダクト、自分の会社、エンドカスタマーのために実現したい最良の姿は何かを描き、そこに向かって今から構築を始めてほしい」(Amodei氏)

また、AI活用におけるスピードと信頼性のバランスについても議論が及んだ。Amodei氏は、「Anthropicは常にAIの欠点や課題についてオープンに語ることを重視してきた」と説明する。同社では「信頼はアクセラレーターである」という考え方を掲げており、安全性への取り組みと顧客との信頼構築は、むしろイノベーションを加速させる要素だという。

こうした価値観はSnowflakeとの協業にも反映されている。Ramaswamy氏によると、両社の関係は同氏がGoogle退社後に立ち上げた検索スタートアップNeeva時代まで遡るという。

「われわれは責任ある形で、顧客にとって正しいことを実現することにコミットしている」。Ramaswamy氏はSnowflakeとAnthropicの共通点についてこう語った。両社はCoWorkやCoCoへのAnthropicモデルの組み込みなどを通じて連携しており、エンジニアレベルでも密接な協業を進めているという。

その事例として紹介されたのが決済企業の(旧Square)だ。BlockはSnowflakeをデータ基盤として活用しながら、Claudeをリアルタイム不正検知や決済データ分析に利用している。これにより、従来は得られなかったインサイトを引き出せるようになったという。

最後にAmodei氏は、自社の成長についても振り返った。

「5年前は15人だったが、現在は3500人になった。成長を支えたのは、バリューと文化を重視する姿勢だ」

急速な成長を経験してきた同社の知見は、大きな変化に直面する企業との信頼関係構築にも生かされているという。