半導体ニューストピックスまとめ
・2028年度に営業利益2200億円、営業利益率20%を目標
・半導体材料・プロセス分野に630億円以上を投資
・「ダブル認定」を軸にESGと収益の両立を推進
日東電工(Nitto)は、2028年度を最終年度とする中期経営計画「Nitto RISE 2028」を発表した。会見では、2026年4月1日に社長COOに就任した赤木達哉氏が、基本戦略を説明した。
2028年度の財務目標と2030年ビジョン
「Nitto RISE 2028」は、同社が2030年に目指す姿として掲げている「なくてはならないESGニッチトップ企業」の実現に向けた実行計画を位置づけており、2028年度の財務目標として、営業利益で2200億円(2025年実績は1836億円)、営業利益率で20%(同17.9%)、ROEで14%(同12.2%)を目指す。また、2030年度には、営業利益で2400億円以上、営業利益率で20%以上、ROEでは15%以上を目指す計画だ。
セグメント別構成と事業ポートフォリオ
2028年の目標に掲げた営業利益2200億円のセグメント別構成比は、フォルダブルやスマートフォン部材、車載ディスプレイ向けソリューションなどの「オプトロニクス」が65%、電気剥離テープや機能性テープなどのハイエンドスマホ向け部材、先端半導体材料や半導体プロセス材料などの「インダストリアルテープ」が30%、核酸受託製造・ポリマービーズ、排水処理用RO膜、パーソナルケア材料機能性フィルムなどの「ヒューマンライフ」が5%とした。
設備投資と半導体分野への注力
また、3年間の設備投資額として、3000~4000億円を計画。過去3年間の2633億円の実績を大きく上回ることになる。なかでも半導体関連投資を強化し、先端半導体材料や半導体プロセス材料の設備投資に630億円以上を計画している。
前中計からの継続と新中計の位置付け
同社では、2025年度までの中期経営計画「Nitto for Everyone 2025」において、「ニッチトップ戦略×Nitto流ESG戦略の実践」に取り組んできた経緯があり、日東電工の赤木達哉社長COOは、「新たな中期経営計画は、2030年目指す姿の実現に向けたセカンドステップになる。既存事業領域の継続成長と成長領域の伸長により、バランスの取れたポートフォリオを目指す。ダブル認定品の創出、拡大により、成長の確度を高める3年間にしていく」と位置づけた。
「ダブル認定」制度の仕組み
ダブル認定とは、同社独自の仕組みであり、「Flags認定」と「ニッチトップ認定」で構成する。
「Flags認定」は、環境貢献や人類貢献を目的に、社会課題の解決になくてはならない製品やサービスを認定する。環境などへの貢献度の大きさ、事業の成長性などをもとに、有識者や社内審査により決めているという。また、「ニッチトップ認定」は、Global Niche TopおよびArea Niche Topの観点から、ニッチな領域でシェアNo.1を狙う差別化戦略をする製品やサービスを認定する。事業規模や収益性、トップシェアの獲得などの基準を設けている。
そして、この2つの認定基準を満たすものを「ダブル認定」とし、社会課題の解決と、経済価値の創造の両立を実現できる製品、サービスに位置づけている。
ダブル認定の売上構成と対象製品
「業績をあげるだけでなく、社会に貢献することで、企業価値の向上につなげる」としている。
2025年度実績では、売上高の約40%をダブル認定品が占めており、2028年度もこの水準を維持。2030年度には50%にまで高める計画だ。
現在、車載ディスプレイ用高耐久OCA(光学用透明粘着シート)、車載ディスプレイ用高耐久偏光板、HDD用精密フレキシブル回路基板「CISFLEX」、バッテリー固定用電気剥離テープ、熱はく離シート「リバアルファ」、絶縁放熱シート、核酸合成用ポリマービーズなどが、ダブル認定を受けている。
デジタルインタフェース領域の成長戦略
中長期的な成長ドライバーとしてあげたのが、デジタルインタフェース領域における事業機会の創出だ。
スマホに代表されるデジタル端末向けの偏光板や電気剥離テープ、高精度基板、データセンター向けの「CISFLEX」に加えて、フォルダブル部材やAI/ARグラス用部材を事業化。さらに、高帯域メモリ向けプロセス材料、先端パッケージ向けの半導体基板やパッケージ材料、半導体製造プロセスにおける排水処理用水処理膜、溶剤分離膜などの事業に新たに注力する。
「Nittoが持つ基幹技術と親和性のある半導体領域における事業機会を増やしたい。半導体産業の変化を確実にキャッチし、半導体領域だけで、2030年度には売上高1000億円以上、営業利益率30%以上を見込む。今後の事業の軸のひとつにしていきたい」と述べた。
新デバイス・次世代技術の開発状況
Nitto独自の回路技術の融合によって、2029年度から実用化を目指すチップ搭載用薄型基板に加えて、シート型電子部品では、初期量産設備を導入中であり、2028年度までに事業化することを明らかにした。また、IBMとの共同開発により、2030年度から事業化する高速通信インターポーザーに取り組んでいることにも触れた。
スマートグラス・フォルダブル市場への展開
AI/ARスマートグラス向けでは、情報機能材料であるホログラムや超低屈折材料、調光ITO、回路材料であるFPCなどのビジネス拡大が見込めるという。
「画像は表示されないが、音声でサポートしたり、写真撮影ができたりするAIスマートグラスの市場が生まれようとしている。スマートグラス領域においては、オプトロニクス技術によって事業拡大を狙う」とした。
ペロブスカイト太陽電池への取り組み
将来に向けて急激な市場成長が期待されるペロブスカイト太陽電池においては、ITOフィルムを太陽電池の電極として利用する提案を進めており、「タッチパネル用途で培った低抵抗、高透過、高品質の技術が適している。2028年度から実績化し、2030年度以降は100億円を超える事業規模を目指す」と述べた。
スマートフォン・フォルダブル関連部材
スマートフォン・フォルダブル市場への取り組みでは、「フォルダブル端末は、2030年度でも、7%の構成比に過ぎないが、画面の範囲が2倍となるため、市場規模は大きくなる」と想定。反射防止機能、耐衝撃性、折り曲げ跡といったスマホメーカーの要求に対応していくほか、日東電工が持つさまざまな技術を組み合わせたトータルソリューションを提供し、生産性向上、コスト低減、機能強化などで貢献するという。
ハイエンドスマホ向けテープと成長性
ハイエンドスマホ向けテープでは、ディスプレイの進化への対応や、サステナビリティ対応を強化。電気剥離テープによるRight to Repair(修理する権利)への対応、フォルダブル化によるパネル固定や可動部保護、クッション性に対するニーズの増加などによって部材点数が増えることにも対応していくという。「OLEDに比べて、フォルダブルでは2.1倍の売り上げが見込まれる。市場変化から生まれる新たなニーズにNittoの技術で対応し、2030年度までの売上高の年平均成長率は17%以上を想定している」という。
豊橋新工場の建設と生産能力強化
日東電工では、ハイエンドの電気剥離テープやOCAの生産能力を向上させるために、豊橋事業所に次世代新工場を建設しており、2028年度から量産稼働を行い、2025年度比で1.7倍の生産能力を実現するという。
「インダストリアルテープと情報機能材料をひとつの工場で生産することになる。それぞれの製品にあった新規ラインを立ち上げている。DXの活用および高度な自動化設備を導入するとともに、環境配慮型の設備を採用する」という。
車載ディスプレイ市場の見通し
車載向けディスプレイについては、これまでの偏光板のビジネスに加えて、OCAや調光ITOフィルム、前面板などの多商材化を進め、2030年度までの売上高の年平均成長率は7.2%を見込んでいる。
「自動車の生産台数は微増であるが、搭載台数の増加と、大画面化などによる使用面積の増加によって、ディスプレイの生産量は堅調に成長すると予測している」という。
データセンター需要とCISFLEX
また、ハードディスク向けのCISFLEXでは、AIの普及に伴うデータセンター需要に対応。「旺盛な需要に対応するための供給体制をしっかりと構築することが使命である」と述べた。
核酸医薬市場の成長とCDMO戦略
新たな取り組みとなる「ヒューマンライフ」事業については、日東電工の片山博之CTOが説明した。同事業は3つの取り組みで構成する。
ひとつめは、「核酸受託製造および核酸合成用ポリマービーズ」である。
同社では、CDMO(医薬品の開発製造受託)として事業を展開。「核酸医薬市場は、今後も年率20%以上で成長すると予測している。核酸医薬は、希少疾患向けの創薬だったものが、大型疾患向けの治療薬として発展しており、B型肝炎の治療薬が臨床試験フェーズ3で素晴らしい結果が出たことで、2027年度に上市される確度が飛躍的に高まった。顧客とも、承認、上市、初期出荷に向けた量産を開始している。新たなB型肝炎薬は、原因物質に直接作用するため、緩和ではなく、治癒を実現する。B型肝炎の潜在患者は世界で2億5000万人といわれており、長期的な人類貢献と収益獲得が見込める」とした。
また、「核酸医薬の合成に不可欠なポリマービーズの事業にも取り組んでおり、中期経営計画でも堅調な成長を計画している。商用化された核酸医薬、商用化を目前に控えたB型肝炎薬、臨床後期の主要案件において、トップシェア企業として、ポリマービーズを提供している。大型疾患薬の商用薬のグローバル展開では、計画以上のアップサイドが見込まれる。2024年度に宮城の新工場を稼働させたのに続き、2026年度からは米サンディエゴの新工場を稼働させ、対応していくことになる」と述べた。
さらに、核酸創薬事業に関しては、狙った細胞だけに精密に薬剤を届ける「細胞標的DDS(ドラッグデリバリーシステム)」により、血液がん、先天性遺伝性疾患、自己免疫疾患といった難治性疾患に取り組んでいることも示した。「プロセスを簡略化し、治療費と体への負担を軽減することができる。動物実験では競合優位の成果を獲得しており、大手製薬会社とライセンスアウトの交渉を進めている。核酸医薬の普及をワンランク高めたい」と語った。
半導体領域の分離膜事業
2つめは、「半導体領域の分離膜事業」である。
もともと半導体製造で利用する超純水を作り出すRO(逆浸透)膜やUF(限外ろ過)膜では実績を持つが、ここでは、半導体製造に不可欠な水と溶剤を回収し、リサイクルすることに貢献する膜処理システムの開発に取り組んでいる。有機溶剤を含む廃液を分離する耐汚染RO膜と、溶剤を分離するための溶剤分離膜を組み合わせた「溶剤分離システム」として、2026年度から事業化する。2030年度には100億円の売上高を目指す。
「従来は焼却処理や生物処理に頼らざるを得なかったが、溶剤分離システムは経済面でも、環境面でも優位である。実液を用いた実証実験を完了している。半導体産業は、水処理という点ではニッチだが、成長率が高い市場である。この領域でトップシェアとデファクトのポジションを狙う」とした。
パーソナルケア事業の再構築
3つめは「パーソナルケア事業」である。従来からの汎用おむつ向け部材事業は成長に限界があると判断。新たな製品の開発に取り組んでいるところだという。粘着剤を使用しないおむつ向け伸縮部材、ベビー向けの生分解性不織布ワイプ、薄型パウチフィルムを開発。さらに、フェミケア向けや大人向け衛生用品に使用される異方伸縮部材、モバイル向け衝撃吸収フィルムの展開を進めているという。
同社では、2022年に英国Mondiのパーソナルケア事業を買収。「買収以降、着々と利益体質の改善を進めている。安定収益事業への道筋ができてきた。多面的な成長戦略を通じて事業拡大を図る」と語った。
ニッチトップ戦略の基本思想
一方、同社のニッチトップ戦略の戦い方についても説明した。
赤木社長は、「圧倒的な技術力によって、ハイエンド領域でトップシェアを獲得し、なくてはならない機能を提供するのが最初のステップである。そこから事業環境の変化に伴い、ミドルレンジの市場になり、ローエンドになる。ミドルレンジの段階では競争が激しくなるが、市場規模が大きくなるため、機能の付与などによる高付加価値化と、合理化によるコスト競争力の強化により、収益を出す。ローエンドとなったときには、事業の撤収、撤退、譲渡を検討するほか、特許のオープン化によるライセンス収入を目指す。まずは、ニッチトップの製品をいかに増やすかが重要な戦略になる」とした。
また、「Nittoが持つ圧倒的な技術力や、三新活動(新用途開拓、新製品開発、新需要創造)により、ニッチトップを生み出してきた。お客様のなかでのトップシェアを取り、プレゼンスがあがることで、次のニーズを最初に聞くことができる。これをもとに、Nittoの強みであるスピードと完成度を生かして、新たなニッチトップの製品を生み出すことができる。基幹技術、知的財産、顧客に密着した営業体制、サプライチェーンの強みを生かし、お客様のなかでのプレゼンスを高め、ニッチトップからニッチトップを生むというサイクルをしっかりと回すことが、日東電工の戦い方である」と位置づけた。
トップラインより収益性重視の経営
2025年度実績では、売上収益が1兆282億円となり、2024年度に続き、1兆円を突破しているが、赤木社長は、「トップラインを追いかけると、コストを下げて、トップシェアを取りに行くという発想が生まれる。Nittoの考え方はハイエンド市場にしっかりと入ることであり、営業利益を重視することになる」とした。
新中期経営計画である「Nitto RISE 2028」においても、この姿勢を踏襲する考えを示し、「顧客ニーズに応え続け、最初に声をかけられる存在になり、付加価値の高い領域でシェアNo.1を積み上げ、顧客起点のニッチトップを目指す。日東電工は多岐に渡る技術を持っているが、それらのすべてが市場ニーズと結びついているとはいえず、まだまだポテンシャルがある。新中期経営計画では、ニーズとコア技術の結びつけや、具体的なテーマ化を進める。また、国境を越えた人重視の経営を進め、人がチャレンジを楽しめる風土を作る。そして、数字にはこだわっていくが、社会貢献をするという数字の中身が大切である」とコメント。「2026年4月からスタートした新体制では、ニッチトップや三新活動といったものは継承する一方、新たな取り組みとして、ダブル認定比率の拡大と、バランスの取れた事業ポートフォリオへの再編を進めていく。これにより、Nittoの企業価値を成長させていく」との姿勢を示した。
なお、「Nitto RISE 2028」では、未財務目標として、エンゲージメントスコアで84、新たな価値創造に向けて自分の経験や可能性を拡げるチャレンジをした従業員の割合を示すチャレンジ比率で70%を掲げている。







