この半導体ニュースのまとめ
・AIサーバ向け需要拡大で、村田製作所、SEMCO、太陽誘電の6月MLCC出荷量が過去5年で最高水準に
・AI向け高容量・小型MLCCへの生産シフトにより、民生用中高容量品の供給が逼迫
・流通価格やスポット価格が上昇、SEMCOや太陽誘電も値上げへ
AI需要でMLCC大手3社の出荷量が過去5年で最高水準に
TrendForceのMLCC(積層セラミックコンデンサ)業界調査によると、AI需要の拡大を背景に、日韓のMLCC大手3社である村田製作所、Samsung Electro-Mechanics(SEMCO)、太陽誘電の2026年6月の月間出荷量が、過去5年で最高水準に達したという。
MLCC市場全体では、スマートフォンやPCなど民生機器向け需要は力強さを欠く。米国とイランを巡る地政学リスクによる原油価格やインフレ懸念の再燃に加え、Appleの値上げなど、完成品メーカー側でも部材コスト上昇を見越した対応が進んでいる。こうした状況から、例年の第3四半期の繁忙期需要が十分に盛り上がらない可能性も指摘されている。
AIサーバ向け高性能品がMLCC需要をけん引
一方で、AI関連需要がMLCC市場の成長をけん引している。AIサーバでは多数の高容量、低電圧、小型MLCCが使われるため、クラウドサービス事業者やAI半導体メーカーの投資拡大が、そのまま高性能MLCCの需要増につながっている。TrendForceによると、6月の出荷量は村田製作所が1400億個、SEMCOが980億個、太陽誘電が400億個に達し、7月も勢いが続いているという。
6月下旬時点のBB比率は、村田製作所が1.30、SEMCOが1.31、太陽誘電が1.25となり、いずれも新型コロナ禍以降で最高水準にある。BB比率が1を上回る状態は、新規受注が出荷を上回り、受注残が積み上がっていることを意味する。MLCC業界全体のBB比率も1.04となっており、需給が引き締まりつつある。
AI需要の増加で民生向けが逼迫
特に影響が大きいのは、日韓大手がAI向け高付加価値品へ生産能力を振り向けている点である。AIサーバ向けでは高容量・高信頼性品の需要が強く、主要サプライヤは民生向けX5R品から、AI用途で求められるX6SやX7Rなどの高性能品へ生産をシフトしている。この結果、1μF~22μF程度の中高容量民生用MLCCの生産能力が圧迫され、台湾や中国の流通チャネルに需要が流入している。
これにより、代理店の平均販売価格は20~25%上昇し、一部スポット価格も従来の2~3倍に急騰。最終需要が全面的に強いわけではないものの、チャネル価格だけが上昇する構造的なミスマッチが生じているという。
SEMCOと太陽誘電は値上げへ
大手各社も価格改定に動き始めた。韓国メディアなどによると、SEMCOは中国・深圳法人経由で供給するMLCCについて、8月1日出荷分から30%の値上げを顧客に通知した。グローバル需要の急増に対し、生産効率向上やライン増強だけでは供給圧力を吸収できないため、品質維持の観点から価格調整が必要になったと説明している。
太陽誘電も9月1日出荷分からの価格改定を顧客に通知した模様で、原材料や副資材の価格上昇を理由に挙げている。最大手の村田製作所は、同一製品の値上げには慎重な姿勢を維持する一方、高性能MLCCへの引き合いが既存能力の2倍に達しているとして、供給逼迫が2027年にかけて続く可能性を示している。
MLCC需給の変化は最終製品メーカーにも波及へ
AIサーバ市場の拡大は、メモリやGPUだけでなく、受動部品であるMLCCの需給構造にも影響を及ぼし始めている。今後、AI向け高性能品への生産シフトが続けば、民生機器や産業機器向けの標準品にも納期長期化や価格上昇圧力が波及する可能性があり、最終製品メーカーにとっても部材調達戦略の見直しが必要になりそうだ。