この半導体ニュースのまとめ

・ロームがRTDを用いた第2世代テラヘルツ波発振デバイスを開発
・0.5mm×0.5mmのチップサイズを維持しつつ、発振出力を第1世代比4倍の最大40μWに向上
・評価キット「RTD-EVK-G2」を2026年8月より提供し、非破壊検査や医療・ヘルスケア分野での活用を後押し

第2世代テラヘルツ波発振デバイスを開発

ロームは8月4日、半導体素子の共鳴トンネルダイオード(RTD:Resonant Tunneling Diode)を用いたテラヘルツ波発振デバイスの第2世代品を開発したことを発表した。

  • 第2世代テラヘルツ波発振デバイス

    第2世代テラヘルツ波発振デバイス (提供:ローム)

同製品は、サンプル品、ケーブル、評価ボードをセットにしたテラヘルツ波デバイス評価キット「RTD-EVK-G2」として提供される。2026年8月より販売を開始し、価格は35万円/セット(税別)。なお、評価キットの購入には、事前にロームとのNDA(機密保持契約)の締結が必要になる。

  • 「RTD-EVK-G2」

    テラヘルツ波デバイス評価キット「RTD-EVK-G2」 (提供:ローム)

第2世代品は、第1世代品と同じ0.5mm×0.5mmのチップサイズを維持しながら、高出力化が可能な内部構造を採用したことで、発振出力を第1世代比4倍となる最大40μWに向上させた。対象物を透過・反射した後のテラヘルツ波を検出しやすくなるため、高い信号品質が求められるセンシングやイメージング用途での活用が期待される。

PLCCパッケージで小型評価環境を構築可能

第2世代品では、パッケージに4.0mm×4.3mmサイズのPLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)を採用することで、業界最小クラスのサイズを維持したとしており、限られたスペースでも評価環境を構築できる点を特徴とする。

RTD方式は、周波数逓倍方式やフォトミキシング方式など他のテラヘルツ波発振方式と比べて、発熱量が小さく消費電力も低い。加えて、冷却を必要とせず室温で発振できるため、大型で高額な装置を前提とする従来方式に比べ、企業や研究機関がテラヘルツ波の研究・アプリケーション開発に取り組みやすくなる。

今回の評価キットについては、Digilentが販売する計測ツール「Analog Discovery 3」などとPC、ソフトウェアを組み合わせることで、テラヘルツ波の発振・検出を比較的容易に評価できるとしている。

  • 第1世代品と第2世代品の比較

    第1世代品と第2世代品の比較、ならびに評価キットの利用イメージ (出所:ローム)

非破壊検査や医療・ヘルスケア分野に展開

テラヘルツ波は、電波と光の中間に位置する周波数領域の電磁波であり、電波のような透過性と、光のような直進性を併せ持ち、高分子材料や水分などに対して特有の吸収特性を示すことから、放射線を使わない非破壊検査、医療・ヘルスケア分野での検査技術、高精細レーダーセンシング、材料識別、水分検知など、幅広い分野への応用が期待されている。

一方で、従来方式ではテラヘルツ波を発生させるために大型かつ高額な装置が必要となり、研究や事業化への新規参入が難しいという課題があった。ロームはRTD方式の小型・低消費電力・室温動作という特徴を生かし、評価キットを通じてアプリケーション開発の裾野を広げる狙いだ。

第2世代となる今回のRTDテラヘルツ波デバイスは、第1世代品を多くの企業や研究機関が利用する中で、より高出力なデバイスを求める声が多かったことを受けて、信号品質向上に向けて開発が進められてきたもの。発振出力を4倍に高めたこともあり、消費電力が第1世代の4倍の40mW(Typ)と上昇していることから、ロームでは低消費電力重視用途向けに第1世代品の販売も継続するとしており、用途に応じた第1世代品と第2世代品の提案を図ることで、テラヘルツ波アプリケーション開発の幅を広げる考えだ。

テラヘルツ波の社会実装を後押し

なおローム 研究開発センター長の中原健氏は、「RTD-EVK-G2」の提供開始により、テラヘルツ技術の実用化に向けて大きな前進が期待できると説明。非破壊検査、医療・ヘルスケア、材料識別、水分検知、センシングなど、産業・研究用途での活用が期待されるテラヘルツ波についてロームでは、顧客、パートナー、大学・研究機関、行政機関と連携しながらアプリケーション開発を後押しし、社会実装を進めていくとしている。