この半導体ニュースのまとめ

・大阪大学、東京大学、青山学院大学、artienceなどが近赤外光で発電する無色透明な有機太陽電池を開発
・可視光をほとんど透過し、近赤外光を選択的に吸収する有機半導体材料を開発
・建物や自動車の窓、ウェアラブル端末、自己電力供給型センサなどへの応用が期待される

近赤外光で発電できる有機太陽電池を開発

大阪大学(阪大)産業科学研究所、東京大学(東大)物性研究所、青山学院大学、artienceの4者は8月4日、近赤外光を利用して発電できる無色透明な有機太陽電池(OSC)の開発に成功したことを発表した。

  • 有機太陽電池の概要図

    今回の研究で開発された無色透明な有機太陽電池の概要図 (出所:大阪大学産業科学研究所/東京大学物性研究所/青山学院大学理工学部/artience)

同成果は、阪大 産業科学研究所の横山創一 助教、家裕隆 教授、同大学院工学研究科の佐伯昭紀 教授、東大物性研究所の吉信淳 教授、松永隆佑 準教授、青山学院大学理工学部の長谷川美貴 教授、artienceらの共同研究グループによるもの。詳細は、米国化学会誌「Journal of the American Chemical Society」(オンライン版) に、8月4日付で公開された

応用分野の拡大に向けて求められていた無色透明な高効率有機太陽電池

太陽電池の活用として、従来の建物の屋根や空き地への設置による活用以外に、建物や自動車の窓など、これまで活用されてこなかった場所で発電しようという取り組みが進められているが、現在主流のシリコン太陽電池や、次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト太陽電池は高い性能を発揮できるものの、太陽光を選択的に利用して発電することには向いていなかった。

そうした背景から、軽量かつ柔軟で、有機半導体の設計ノウハウを活用して太陽光の波長を制御できる有機太陽電池の活用が期待されているが、従来の有機太陽電池は、主に可視光を吸収して発電することを意図しており、透過および反射する光の色のバランスに変化が生じ、着色して見えるため、採光性や意匠性が求められる場所への適用には課題があり、無色透明性と発電性を両立させた有機太陽電池の開発が求められていた。

近赤外光を吸収する新材料を開発

これまでの研究にて研究グループは有機半導体材料の構造と電子状態を精密に制御することで、可視光をほとんど吸収せず、近赤外光を選択的に吸収する分子設計指針を見出したことを報告しており、今回の研究では、この設計指針をもとに、強い分子内相互作用を誘起する新規ユニットを設計し、これを分子内に組み込むことで、可視光を透過しながら近赤外光を吸収する新しい材料を開発したという。

実験から、この薄膜は、近赤外光を効率よく吸収する一方で、高い可視光透過性を示し、肉眼ではほぼ無色透明に見えることが判明したとするほか、開発した分子は、近赤外光を吸収した後に電荷を生じやすく、さらに生じた電荷が効率よく薄膜内を輸送できることも確認したとする。

  • 今回の研究内容

    無色透明な太陽電池の特徴と今回の研究内容 (出所:大阪大学産業科学研究所/東京大学物性研究所/青山学院大学理工学部/artience)

これらの結果、同分子を発電層に組み込んだ太陽電池は、高い可視光透明性を保ったまま動作でき、近赤外光領域で最大20%を超える外部量子効率を示したという。

ウェアラブル端末への応用も期待

この成果について研究グループでは、従来の太陽電池では設置の難しかった場所に、景観・視認性・採光性を損なうことなく発電機能を付与する技術につながると説明しているほか、近赤外光の一部を吸収して発電に利用できるため、遮熱効果や空調に必要な電力消費の低減も期待できるともしている。

さらに今回の研究では、開発した無色透明な有機光電変換デバイスにより、近赤外光を用いた脈拍検出にも成功しているとのことで、建物や自動車の窓などへの太陽電池の適用に加え、目立たず装着できるヘルスケア用ウェアラブル端末や、環境光で駆動する自己電力供給型センサへの展開も期待できるようになると説明している。