Samsung Electronics(サムスン)は4月30日、2026年第1四半期(1~3月)の決算を発表した。

それによると連結売上高は前四半期比43%増の133兆9000億ウォン、営業利益57兆2000億ウォンといずれも四半期ベースで過去最高を更新。また、半導体事業を担当するデバイスソリューション(DS)部門の業績は、売上高が前四半期比86%増、前年同期比3.3倍の81兆7000億ウォン、営業利益は前年同期比48.8倍の53兆7000億ウォンと、こちらも売上高、営業利益ともに過去最高を更新した。

  • Samsung Electronicsの2026年第1四半期決算概要

    Samsung Electronicsの2026年第1四半期決算概要 (出所:Samsung)

AI需要を背景にメモリ事業が躍進

中でも半導体メモリ事業は高付加価値のAI需要に対応できたことで、売上高と営業利益で過去最高を更新。業界全体でのメモリの平均販売価格(ASP)の上昇も、成長の一因となったとするほか、NVIDIAのVera Rubinプラットフォーム向けHBM4およびSOCAMM2の量産開始や、PCIe Gen6 SSDのタイムリーな開発なども後押しの要因となったとする。

  • Samsungの2026年第1四半期におけるメモリ事業の概況

    Samsungの2026年第1四半期におけるメモリ事業の概況 (出所:Samsung)

メモリ事業は第2四半期もAIインフラの拡大に伴った堅調な需要に支えられる見通しで、同社では技術リーダーシップの確保に向けてHBM4Eのサンプル出荷を開始する予定としている。また、2026年下期発売予定の新型GPUおよびCPUに対する早期需要への対応として、DRAMとNANDの両方でAI製品を中心とした販売戦略を継続していく計画とするなど、引き続きAI需要が堅調に推移すると予想している。

なおDDR5やSOCAMM2などの高付加価値AI製品のシェア拡大も進めることで、AIメモリ市場での成長を目指すとしているほか、KVキャッシュストレージ需要に特化した高性能製品でPCIe Gen6 eSSD市場の初期段階をリードするともしている。

システムLSI事業は2億画素センサ拡販に注力へ

システムLSI事業の売上高はSoCの販売拡大がけん引したことで改善されたとする。また、第2四半期にはスマートフォン(スマホ)向けSoCおよびセンサでの成長を目指すとするほか、下期には、主力SoCの設計受注を獲得し、2億画素イメージセンサの顧客基盤と製品ラインナップの拡大を図るとする。

一方のファウンドリ事業は、閑散期の影響で売り上げが減少したものの、HPCを中心とした設計受注は維持し、シリコンフォトニクス事業における基盤を確立したとする。

  • Samsungの2026年第1四半期におけるシステムLSI/ファウンドリ事業の概況

    Samsungの2026年第1四半期におけるシステムLSI/ファウンドリ事業の概況 (出所:Samsung)

第2四半期は、HBM4ベースダイの供給増加による収益改善を目指しつつ、先端プロセスラインのフル稼働化を目指すとする。また1.4nmプロセスの開発は順調に進んでいるとするほか、2nmプロセスの大規模顧客の拡大も進んでいるとする。

下期には、モバイル製品向け第2世代2nmプロセスの生産を本格化させるとともに、AIおよびHPC顧客向け4nmメモリ製品とLPUの量産を開始する予定とするほか、AIやHPCのみならず自動車および航空宇宙にも事業領域を拡大し、ポートフォリオの多様化を目指すとする。

ディスプレイ事業であるSamsung Display(SDC)の同四半期の売上高は6兆7000億ウォン、営業利益は4000億ウォンとしている。

  • Samsungの2026年第1四半期におけるディスプレイ事業(SDC)の概況

    Samsungの2026年第1四半期におけるディスプレイ事業(SDC)の概況 (出所:Samsung)

中小型ディスプレイ事業で季節要因とメモリ価格の高騰による収益の減少があった一方、大型ディスプレイ事業はOLEDゲーミングモニターの堅調な需要の恩恵を受けたとする。

第2四半期は中小型ディスプレイ事業は、市場全体の需要が低迷している中で比較的堅調なハイエンドセグメントでの販売に注力するほか、大型ディスプレイ事業は新製品や世界的なスポーツイベントによる需要獲得を目指すとする。

下期については、中小型ディスプレイ市場は引き続き不確実性と先行き不透明感が続くと予想しており、差別化技術によるプレミアム製品やG8.6 IT OLEDの量産を通じて収益拡大を目指すとするほか、大型ディスプレイ市場では、プレミアムTV市場での地位を確固たるものにするとともに、モニター市場における顧客基盤の拡大を図るという。

労組が賞与額に抗議して長期ストを計画

同社の労働組合(労組)は4月23日、半導体の巨大生産施設がある平沢(ピョンテク)キャンパスで、およそ4万人が参加する大規模な集会を開き、成果給の上限(給与の5割)を廃止し、営業利益の15%を従業員に配分する形に制度を改めるよう会社側に求めた。これは、全従業員のおよそ3分の1にあたる規模であり。要求が聞き入れられない場合は、5月21日から6月7日にかけて長期ストライキに入ると発表した。ストライキが行われた場合、世界のメモリ半導体の供給に影響が及ぶおそれがある。

Samsung Electronicsでは2019年、長年貫いてきた「無労組」の方針を撤回した後、労働組合が設立され、影響力を強めており、特に、DS部門は労働組合の加入率が80%を超えていることから、もしストライキが実施された場合、半導体メモリの生産への影響は避けられないとみられている。

この集会は、Samsungの競合であるSK hynixが、2026年第1四半期の売上高と営業利益で過去最高を記録した直後に開かれたこともあり、Samsung労組の不満の核心は競合であるSK hynixとの待遇格差であると見られている。

SK hynix労組は2025年に、賞与の上限撤廃を発議し、会社側が受けいれている。Samsung労組も賞与の上限撤廃を求めているが、半導体部門の社員の不満が顕著で、労組に加入して賃金交渉に加わる者が急増している模様である。中にはSamsungから待遇の良いSK hynixへ転職しようとするケースが増えており、SK hynix入社は狭き門となっているという。

Samsungの会社側は4月16日、労組による違法な争議行為の禁止を求めた仮処分を水原(スオン)地裁に申請したが、同地裁は4月29日、全面ストライキ突入前日の5月20日までに申し立ての可否を判断する方針を明らかにした。

韓国の金正官(キム・ジョングァン)産業通商部長官(日本の経済産業大臣に相当)は4月27日の記者懇談会で、Samsung労組が予告したストライキに関連し、同社の過去最高の業績や競争力は労使だけの独占物ではなく、韓国社会全体の成果であると強調し、労使双方に「成熟かつ賢明な判断をしてほしい」と促している。