「女性が活躍しやすい職場」と聞くと、どのような会社を思い浮かべるでしょうか。女性の管理職比率が高い会社や多様性が認められている会社、出産・育児等のライフイベントを迎えた際も働き続けられる会社など、きっとイメージはさまざまでしょう。企業等も社員の要望に応えて多種多様な方法で「女性が活躍しやすい職場」を実現しています。
そこで今回は令和4年度東京都女性活躍推進大賞を受賞した企業・団体のみなさんにインタビューを実施!「女性の活躍」をテーマに、独自の制度や取組について教えてもらいました。
東京都では、女性の活躍を推進するため、
優れた取組を行っている企業や団体等を「東京都女性活躍推進大賞」として
表彰しています。
無意識のジェンダーバイアスを払拭!
株式会社ポーラ
事業内容
化粧品製造・販売
教えてくれるのはこの人!
岸夏海さん
人事戦略部所属。教育や研修など社内の人材育成、人事制度改定の検討、昇格試験の運営などを担当している。
入社の理由は、1.「人の感動や驚きなどを創る仕事がしたい」という価値観と、ポーラが掲げるビジョンがマッチしていたこと 2. 若手のうちから大きな裁量を持って仕事ができる少数精鋭の会社だったこと 3. 若いうちに、苦手意識もあり、あまり触れてこなかった美容や化粧品の分野に飛び込んで自分の可能性を広げたい、という好奇心があったことが大きな理由。
―― 貴社は「We Care More. 世界を変える、心づかいを。」をスローガンにされていますよね。このスローガンについて教えていただけますか?
社員とポーラのビジネスパートナーのみなさんに共通する行動スローガンで、「We Care More.」の考えを起点に、会社全体の大きな方針としてダイバーシティ&インクルージョンを進めてきました。
「Care」には「心づかい」という意味があります。これまでは化粧品を中心にした人の美容や健康への「心づかい」を届けていましたが、今後は「More」が意味するように、対象範囲や手段を広げていく予定です。
重要視しているのがジェンダーエクイティ(男女公正)の実現と女性エンパワーメントです。『ジェンダー、年齢、地域格差、様々な「壁」の解消』をサステナビリティ方針のゴールのひとつに掲げ、誰もが自分の可能性を信じ、主体的に選択し、いきいきと自分らしく生きられる社会を目指しています。
―― 具体的な取組内容を教えてください。
社員に対する研修や福利厚生の拡充、制度の整備などを行っています。例えば、全社員を対象にした「ジェンダーバイアス研修」があります。ほかにも男性が育休を取得しやすい風土をつくるための社内ウェビナー、女性特有の悩みに関するセミナーも開催しました。ジェンダーに関する内容以外にも7,000コンテンツほどのオンライン学習を提供しており、社員は好きなものを無料で受講できます。また、社外では次世代に向けた支援にも取り組みました。具体的には、朝日新聞社とともに、「10代のためのジェンダーの授業」という冊子を作成して全国の小中学校約3万校に寄贈しました。
▲ ポーラ×朝日新聞で作成した「10代のためのジェンダーの授業」の一部
―― 「ジェンダーバイアス研修」では、ジェンダーに関する無意識のバイアスに気づくことに力を入れているそうですね。“無意識バイアス”とは、具体的にどのようなものを指すのか教えてください。
▲ ジェンダーバイアス研修の様子(左がオンライン開催、右が流通センターでの開催)
男女の家庭や社会での役割に対する、無意識的な固定観念を「無意識バイアス」と呼んでいます。実際に研修で扱った事例のひとつが、“男性の育児休暇取得に関する無意識バイアス”です。女性の中にも「男性が育休を取得したところで何をするのだろう」と、固定観念を持っている人が多く見られます。“家事や育児は女性がするもの”という男女の役割分担への無意識バイアスがあるからです。
―― 育休への理解だけでなく“無意識に持っている価値観に気づく”ところまで取り組まれているのがとても印象的です。社員が働きやすい環境を作るために、ほかにはどのような取組を行っていますか?
事実婚や同性パートナーを福利厚生の対象に加えたり、不妊治療・卵子凍結などへの費用助成をしたりしました。性別に関係なく多様なキャリアを形成するための支援や、プライベートでも自己実現を叶えるための制度や啓発などにも力を入れています。そして、制度や研修だけではなく、産休・育休のリアルな悩みや課題をシェアしキャリア検討に生かす「産育応援プロジェクト」や、「LGBTQ+ ALLYプロジェクト」など、社内有志のメンバーで構成されたコミュニティもあり、メンバー同士でともに学び、交流しています。
―― 本当にさまざまな取組があるのですね!取組によって、効果や変化を感じたことはありますか?
ジェンダーバイアス研修を受けて、私の中にも無意識バイアスが存在していたのだと気づきました。研修後は「男性育休は今後特別なことではなくなる」と思えましたし、私の周囲でも男性育休は当たり前のものになったと感じています。男性社員が配偶者の妊娠を公表したときにも、周りのメンバーが「育休はどれくらい取るの?」と当たり前に聞くようになりました。
未婚の方や、私のようにまだ出産を経験していない社員から見ても、育休などに協力的な社内の雰囲気は希望になります。家庭も大切にしながら、これからも会社で働き続けることができそうです。
―― 岸さんが貴社に入社してよかったと感じるのはどのようなときですか?
“自分らしさを認められている”と感じるときです。新入社員の頃からミーティングでも「岸さんはどう思う?」と、年次や肩書きに関係なく意見を尊重してもらえました。
また、自分がやりたいと思った仕事を積極的に任せてもらえるので、やりがいがあります。私は社内のウェルビーイング(より質の高い健康や幸福)向上に取り組む「ポーラ幸せ研究所」というプロジェクトにも所属していますが、頼まれたわけではなく「やってみたい」と打ち明けたら、すぐにプロジェクトに任命してもらえました。私自身の意向や目標などを考慮してもらえる環境が整っているので、自分らしく活躍できています。
―― 岸さんが描く、今後のプランや目標を教えてください。
これまでは「女性が活躍する=管理職になる」というイメージがありましたが、私は人の上に立つ役職以外で女性の活躍モデルになりたいと思っています。家庭も仕事も大切にして、型にはまらない自分らしいキャリアを実現したいです。
Message
私自身、学生時代は社会人になることが億劫でした。しかし実際に社会人になってみると、とても自由で楽しいと感じています。自分のワクワクがほかの人にも連鎖していく瞬間を実感すると、学生時代とはまた違った楽しさが得られるはずです。だからこそ、ぜひみなさんにも自分らしく働ける環境を選んでほしいと思います。
* * *
女性自らが意見を出して職場環境を改善!
株式会社フジタ
事業内容
総合建設業
教えてくれるのはこの人!
今田まいさん
人事の業務を担当。給与計算や管理、採用や退職の手続き、育児休職や産前産後休暇のフォローなどを行っている。
学生時代にラグビー部やラクロス部のマネージャーをしていた経験から、目標に対してチームで取り組んでいく雰囲気が好きだと感じ、大人数で同じ目標に向かう業界を志望。なかでも、結果が形として残る建設業に惹かれる。そうしたなか、学校でフジタの企業説明会があり、女性が活躍しやすい環境であると実感し入社を決めた。
―― 貴社では女性総合職ネットワーク「F-net」を立ち上げて女性活躍の推進に取り組んでいると伺いました。「F-net」では具体的にどのようなことをしているのでしょうか?
職場の環境改善を提案するほか、定期的な意見交換会などを行っています。女性はライフイベントをきっかけにキャリアの中断を選択する人が多いので、どうすれば課題を克服できるのか、女性が少ない職場における仕事の悩みはどうすれば解決できるのかなどを、相談する場になっています。
―― 取組を始めたきっかけを教えてください。
「F-net」は女性が働きやすい環境を整備するために、2007年からスタートしました。建設業は男性比率が高く、女性向けの作業服が用意されていないなど、以前は不便さを感じる場面が多くありました。そこで女性社員が集まって課題を出し合い、改善に向けて取り組むことになりました。最初は女性仕様の作業服を作るなど目に見える環境整備が主でしたが、今では女性社員の横のつながりを作ることに重点を置いています。
▲ F-net 10周年 東日本総会の様子
―― 取組が始まったことで効果や変化を感じた場面はありますか?
“女性が建設業界で働くのは難しいことではない“と社内全体が感じるようになりました。
私自身、「F-net」をきっかけに社内の人脈が広がり、定期的に同年代に限らず先輩後輩、他部署の方々と話すたびに、フジタでは当たり前に女性が働いているのだと思わされます。新入社員をはじめ女性の採用も増えているので、10周年の総会で一堂に会した時には、「こんなにも女性がいたのか」とあらためて驚きました。「F-net」の存在を特にありがたいと感じたのは、入社直後のことです。配属された大阪で初めての社会人生活・一人暮らしを送ることになって不安な気持ちもありましたが、すぐ「F-net」で宴席を設けてくださったおかげで、大阪支店内の女性社員から会社の雰囲気や関西の楽しみ方などさまざまな話をざっくばらんに伺えました。普段はあまり関わらない部署で働く社員ともつながりができ、現在の仕事にも役立っています。
―― ほかにも働きやすさを感じる取組はありますか。
▲ 株式会社フジタで活躍する女性社員を描いたムービー
コロナ禍よりも前に、育児や介護などをしている人が働きやすいよう、テレワークなどの環境整備をしていました。「プラスアルファがあればもう少し働きやすい」と社員が感じていることを、積極的に改善してくれる会社です。
▲ 作業所勤務者意見交換会の様子
また、育児休業などに入る前後には男女問わず何度か面談をして、悩みを解消した上で、きちんと休みを取ってもらうことを大切にしています。私は人事系の仕事をしているので、面談に関してさまざまな部署の方と話をしますが、上司が「まずは健康が大事」「家族が大事」と言ってくださっているので心強いです。休暇から復職する方にも上司が「無理をしないで」とやさしく声をかけている場面をよく見るので、働きやすい会社だと感じています。
―― 今田さんが貴社に入社してよかったと感じるのは、どのようなときですか?
男性も女性も関係なく仕事を任せてもらえるので、入社してよかったと思っています。入社3年目のときに、オフィスのレイアウト変更を任せてもらったことがありました。多くの社員をまとめ、社外の人と交渉する責任ある仕事を任せてもらえたのは嬉しかったです。おかげで成長させてもらえたと感じています。
―― 今田さんが描く、今後のプランや目標を教えてください。
最初は総務系の仕事、今は人事系の仕事をさせてもらっていますが、今後はほかの仕事も経験したいと思っています。経理や財務などさまざまな経験を経た上で、ゆくゆくは部下を持ち、多くの部署を巻き込んでマネジメントできる仕事に就きたいです。
Message
最初に働く会社はとても大事だと思います。今は転職が当たり前になっていますが、最初に入った会社で受けた教育や人との出会いは大切な経験になるはずです。また、会社は人格形成にも大きく影響を与えると思っています。私自身の変化としては、入社してから、今まで以上に人に感謝を伝えようと意識するようになったことです。当たり前だと思ってやった仕事にさらりと「ありがとう」を伝えてくれる方がいらして、素敵だなと思い、以前よりも感謝を大切にするようになったんです。就職活動は限られた期間ではありますが、一生懸命自分の将来を考えて、後悔のない選択をしてほしいです。いい出会いができますように。がんばってください!
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社員の意見を積極的に取り入れ、働きやすい職場作りに取り組んでいた2社。ジェンダーに対するバイアスに気づき、「性別にかかわらず自分らしく働く」という考えが社内に浸透していました。
今回の2社以外にも東京都女性活躍推進大賞受賞企業・団体のインタビューを公開していますので、ぜひチェックしてみてください!
ほかの受賞企業・団体のインタビューはこちら!
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