三井不動産グループは、ロゴマークの「&」に象徴される「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、「&EARTH」をグループビジョンに掲げています。街づくりを通じて、人と地球がともに豊かになる社会を目指し、様々な取り組みを進めています。
今回は、柏の葉街づくり推進部が展開する公・民・学連携の街づくりについてご紹介します。
規模感は? 交通利便性は?
柏の葉スマートシティとは
柏の葉スマートシティは千葉県柏市の北部に位置し、約273万平方メートル(東京ドーム約63個分)の開発面積を持つ大規模なスマートシティです。国内外の他のスマートシティと比較しても、これほど大きな開発は類を見ません。また、つくばエクスプレスで秋葉原駅から約30分と、都心からの交通利便性が高い立地であることも特徴です。
このエリアは、1990年代以降、東京大学、千葉大学、国立がん研究センター東病院など日本を代表するアカデミアが集積してきました。つくばエクスプレスの開通を契機に、柏の葉スマートシティとして本格的な公・民・学の共創によるまちづくりがスタート。現在は第2ステージとして、開発を推進しています。
駅周辺に便利な生活環境と豊かな自然が広がる柏の葉スマートシティでは、住宅、商業施設、オフィス、ホテル、病院、大学、公園等が凝縮した「ミクストユース型」の街づくりが進められており、2023年9月には英国名門校パブリックスクールであるRugby School Japanが開校、今年には空気圧機器トップメーカーであるSMC株式会社のグローバルフラッグシップとなる研究開発拠点が開設されるなど、居住者13,000人、就業人口16,000人が集う街として、多様な人材が集い、さまざまな分野でのオープンイノベーションが期待されるエリアとなっています。
世界の未来像
柏の葉スマートシティの3つのテーマ
柏の葉スマートシティは「環境共生」「健康長寿」「新産業創造」の3つのテーマを掲げています。
もともと三井不動産が所有する広大なゴルフ場が大部分を占めていた柏の葉スマートシティが位置するエリア。現在の柏の葉キャンパス駅周辺は、はじめは住民が少なく、ゼロから街づくりをスタートしました。そこで、課題先進国である日本が抱えている課題を、街づくりをとおして解決していき、世界の未来のための課題解決モデルを目指すことを決めたのです。
現在では、公・民・学連携の体制を構築し、課題を解決する街づくりを推進しています。こうした取り組みから、国土交通省「Society5.0」の実現に向けたスマートシティモデル事業の先行モデルプロジェクトに選定されました。
環境共生:人と地球にやさしく災害にも強い街
柏の葉スマートシティでは、再生可能エネルギーの活用、先端的なスマートグリッド、ICTの地域利用により、次世代につながる暮らしと社会を実現します。再生可能エネルギーを創る「創エネ」や大規模蓄電池による「蓄エネ」も推進しており、2016年11⽉には、国際的な環境認証制度「LEED-ND(Neighborhood Development:近隣開発、街づくり)」において最⾼ランクのプラチナ認証を⽇本で初めて取得しました。柏の葉スマートシティでの公・⺠・学連携による先進的な街づくりや新築建物などに関わる⼀定レベルの環境性能基準の設定などが評価されています。
●街ぐるみで生物多様性を保つ「アクアテラスクリーン大作戦」
柏の葉スマートシティのシンボルともいえる、調整池を整備して誕生した水辺空間「アクアテラス」。近隣住民が散歩で訪れるほか、近隣高校の文化祭会場として利用するなど、街の憩いの場としての役割を果たしています。
そんなアクアテラスでは、三井不動産従業員も含む柏の葉スマートシティの街づくりに関わるメンバーや、ワーカー、住民などが参加する恒例イベント「アクアテラスクリーン大作戦」が毎年おこなわれています。手すりやデッキの補修、ヘドロや悪臭の原因になる水草刈りなどを行います。その甲斐あってか、現在アクアテラスでは38種類の鳥類が見られ、ツバメなどの鳥の貴重な営巣地としての役割も担っています。
●街全体のエネルギーを見える化するシステム「AEMS」
自営送電線網の整備により建物間電力融通ができる、エリアエネルギー管理システム「AEMS(エリアエネルギーマネジメントシステム)」を日本で初めて柏の葉スマートシティで運用しています。これにより供給側・需要側の双方から電力量をコントロールできるスマートグリッドを実現しました。これにより街全体でエネルギー利用の最適化を進めています。
健康長寿:すべての世代が健やかに、安心して暮らせる街
「健康の見える化」「食と運動の推進」「コミュニティとのつながり」を通じ、自発的な健康増進・疾病予防を促すプログラムを提供。将来の社会保障費削減の実現を目指しています。
●まちの健康研究所「あ・し・た」
まちの健康研究所「あ・し・た」は、住宅街に隣接する三井ショッピングパーク ららぽーと柏の葉北館にある、住民参加型の健康づくり拠点です。小さなお子さんからお年寄りの方まで、日常生活の合間に、気軽に、楽しく立ち寄れる空間になっています。
体脂肪率だけでなく、全身部位別の筋肉量、骨量や基礎代謝量も測定することのできる最新の体組成計を使った測定や、野菜摂取レベルと推定野菜摂取量が簡単に測定できる「ベジチェック®」など、「あるく」「しゃべる」「たべる」を軸に、健康に関する情報提供や健康データの計測などをおこなうことができ、住民のみなさまの健康な毎⽇を⽀えるお手伝いをしています。
●柏の葉データプラットフォーム
生活者が同意したパーソナルデータを企業間で安全に連携できるプラットフォーム「Dot to Dot」のデータ連携基盤のもと、企業や研究機関、行政などが保有するデータを利活用できる未来を目指して構築されたのが「柏の葉データプラットフォーム」です。 健康サービスのポータルサイト「スマートライフパス」では、本人同意のもと、健康診断の結果や「あ・し・た」での測定データなどの健康にまつわるデータを連携することで、最適な健康増進活動や病気の重症化予防の提案など、個人に最適化された様々なサービスを受けることができます。今後も拡充するとともに、地域展開を進めデータ利活用による利用者のメリット向上を目指しています。
新産業創造:日本の新しい活力となる成長分野を育む街
柏の葉スマートシティでは、大学・研究機関などのアカデミアと大手企業・スタートアップなど多様なビジネスプレイヤーが集まり共創することで新産業を創造する街づくりを推進しています。「世界の未来像をつくる街」という理念に共鳴したアカデミア、企業、ワーカー・住民が、ソフト/ハードのインフラを活用することで繋がり、研究開発から実装・発信までを共に進めています。
●KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)
KOILでは、スタートアップ、ローカルベンチャー、クリエイターから大手企業まで多様なプレイヤーが集まり、共創をベースに事業を拡張していくためのイノベーション拠点です。
コワーキングスペースから大規模オフィスまで成長ステージに合わせてオフィスを選ぶことができ、大小の会議室やイベントスペースだけでなく、ドローンやモビリティ用の試験場、ラボも提供。会員同士はもちろん街のプレイヤーとの繋がりをつくり日常的に伴走するコミュニティマネージャーのサポートや様々なイベントなどを通じて、会員の事業成長を支えます。
●KOIL STARTUP PROGRAM
KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)を拠点とするスタートアップ支援プログラムがKOIL STARTUP PROGRAMです。
ライフサイエンスやモビリティなどのディープテック領域のシード・アーリー期企業を対象に、ビジネスプランの策定支援や1年間の無料コワーキング利用、専門家によるメンタリングを提供し、円滑な事業立ち上げを支援しています。
プロジェクトストーリー
ゼロからの街づくりで、日本から世界の課題解決を目指す
三井不動産 柏の葉街づくり推進部 事業グループ 小林 悟 ※所属部署は取材当時
――柏の葉街づくり推進部は、どのような成り立ちでできた部署なのですか?
柏の葉街づくり推進部は、柏市北部にある柏の葉スマートシティの街づくりを進めている部署です。
柏の葉スマートシティが位置するエリアは、ゼロから街づくりを進めてきました。というのも、もともと柏の葉キャンパス駅周辺は、当社が保有する広大なゴルフ場でした。JR柏駅を通る常磐線の混雑が問題となり、常磐新線としてつくばエクスプレス(以下、TX)を作られることとなった際に、線路がゴルフ場を縦断することが決定し、当社はゴルフ場を閉めることになりました。ゴルフ場の閉所を契機に、TX柏の葉キャンパス駅周辺エリアの開発を進めてきたのです。
●公・民・学連携でアクアテラスを整備
――小林さんは、柏の葉でどのような取り組みをしていますか?
地域住民の皆さんと企業の皆さんと関わる取り組みが多いですね。例えば、柏の葉キャンバス駅周辺の住民の方と企業の方で構成される柏の葉キャンパス駅前街づくり協議会もそのひとつです。月に1回、毎月最終土曜日に住民の方々と駅周辺の衛生環境や防災に関わることなどさまざまなことを話しあい、改善に努めています。
ほかにも、住民と企業との共創・協業といった取り組みも行っています。最近の取り組みでいうと、株式会社明治と実施している「ヨーグルトで街にミライをプロジェクト」があります。朝に住民のみなさんと街を歩き、最後にヨーグルトを飲んで健康になるというイベントを行ったり、保育園の子どもたち向けの歯磨き教室を実施したり啓発活動をしています。この取り組みでは、地域のアカデミアと連携して、住民のヨーグルトを食べることが街全体に与える影響を共同研究していくことも視野に入れています。
――他に、柏の葉ならではの特徴的な取り組みがあれば教えてください。
最も象徴的な取り組みは、柏の葉アクアテラスの整備・運営です。アクアテラスは、柏市が所有している調整池をリノベーションして皆が憩える親水空間にした施設です。調整池を活かして、エリア全体の価値を上げるために整備しました。
そもそも、このような調整池は一般の方が入ることを想定していないため、整備して人が入れるようにするにはさまざまなハードルがあります。管理者の行政の立場からすると、水がある空間をオープンにすることにはリスクが生じると考えます。ですが、その一方で街づくりの観点からは、水辺空間に住民をはじめとする地域にかかわる方が入れるようになることは素晴らしいことです。アクアテラスは「見るだけの池から触れ合える水辺へ」をテーマに公・民・学が知恵を出し合い、汗をかきながら連携することでハードルを乗り越え実現しました。今では、憩いの場としてだけでなく、様々なイベントがおこなわれる交流の場にもなっています。
柏の葉スマートシティでは、乗り越えなければならないハードルが出てきた際に、公・民・学が連携し、それぞれの観点からの意見やできることを提供しあうことにより、良い環境を実現することを目指します。このような協力関係で、公・民・学が密に連携するエリアは非常に珍しいのではないでしょうか。
●価値の連鎖により、先進企業の集まる街に
――小林さんは、柏の葉街づくり推進部に来るまで社内でどのようなキャリアを歩んできましたか?
2011年に三井不動産に入社し、経理部の財務グループで4年間、資金調達の仕事をしていました。その後、住宅を供給する会社の三井不動産レジデンシャルに出向し、マンションの開発を4年半経験しました。
もともと入社時には「住宅を作りたい」と考えていました。人の暮らしにおいて大きな要素を占める生活空間=住宅に携わり、自分のアイデアを反映することで、人の幸せに貢献したいと思ったからです。いまでも自分が開発したマンションに関わる機会があり、住民のみなさんが実際にどのように住み、どのように使っているかを見ることができているので、幸せを感じますね。
その後、柏の葉街づくり推進部に2019年に配属されました。柏の葉スマートシティは、大きなビジョンを掲げ、世界の未来像を作ることを目指しているので、スケールが大きくて非常にやりがいがあります。
――現在のお仕事で、印象に残ったことや特にやりがいを感じたことを教えてください。
私は柏の葉全体のエリアマネジメントに加えて個別のオフィスビルの事業担当もしていまして、その中でも思い入れが強いのは「KOIL TERRACE」です。先ほどお話ししたアクアテラスに隣接する立地で、オフィスやコワーキングスペース、ラウンジ、ライブラリなどがある施設です。大きな吹き抜けがあるなど、非常に特徴的な物件です。
KOIL TERRACEは、イノベーションキャンパス地区と呼ばれる新しい開発エリアで最初の事業用途の建物でした。当物件を起点として、「イノベーションキャンパス地区」内へのさらなる企業集積や研究機関の誘致を進めていきたいと考えており、他の企業が「こんなところで働きたい」と、将来柏の葉で働く姿をイメージしてくれるようなカッコいい物件をつくりたいと思っていました。
その甲斐もあり、KOIL TERRACEには多くの企業に入居いただいています。また現在、隣接する敷地では、空気圧機器のトップメーカーであるSMC株式会社が3棟からなる1300人規模の研究開発拠点を建設中で、2025年に完成します。これも、柏の葉の価値を認識していただけた結果だと感じています。ほかにもさまざまな企業や研究者の方々が集まってきていて、街全体が良くなるきっかけをひとつ作れたのは嬉しく感じています。
●柏の葉での挑戦を契機に、日本の課題解決につなげたい
――今後に向けた具体的な取り組みについて教えてください。
最近では、柏の葉スマートシティ 共成長ビジネスプログラム「CO-GROWTH」を始めました。
「CO-GROWTH」は、柏の葉スマートシティにおける企業活動をワンストップで受け入れる仕組みです。ビジネスのR&D(研究開発)フェーズから、PoC(実証・社会受容性検証)、実装・発信までを、参画企業のニーズに合わせてカスタマイズして提供します企業は、柏の葉スマートシティの環境や特徴を活かして、今までには無いかたちでの事業開発やマーケティング、住民へのプロモーションができるだけでなく、アカデミアとの共同研究を進められるといったプラスの効果があります。
ゼロから街づくりをおこなったこともあり、柏の葉スマートシティの住民の方々は「住んでいる街を自分たちで良くしていこう」といった気持ちが強く、企業がチャレンジしたいことに対して住民の方々に協力いただける体制がありますし、柏の葉スマートシティはアカデミアとのつながりもあるので、共同研究を提案しやすい環境が整っています。
企業は、今までには無いかたちでの事業開発やマーケティング、プロモーションを行い、それに参画する住民も企業と共に成長していく。そして、このような活動・コンテンツを増やすことが、「世界の未来像をつくる街」の実現を加速させていくと考えています。また、この仕組みは「街の価値」を経済価値に変えることで持続的に街が発展し続けるための仕組みでもあります。これからも企業と地域住民、アカデミアや行政が連携し、柏の葉スマートシティの持続的な発展に繋げていければと思っています。
[PR]提供:三井不動産