2024年のキャッシュレス決済比率は42.8%に達し、4月13日に開幕した大阪・関西万博もキャッシュレス化を更に進展させるきっかけとなりそうです。 また、今後は個人決済だけでなく企業間のキャッシュレス決済の成長も期待されます。 今回は、日本クレジット協会の副会長でもあるユーシーカード株式会社の福岡社長に業界の現状や課題、同社の今後の展望などについてお話をお伺いしました。

福岡 和大(ふくおか・かずひろ) 高井 瑛子(たかい・えいこ)
1993年 4月 現株式会社みずほ銀行 入行
2020年10月 同行 六本木恵比寿エリア法人第一部 部長
2021年 5月 同行 六本木法人第一部 部長
2021年 7月 同行 執行理事 六本木法人第一部 部長
2022年 4月 同行 執行理事 エリア長(法人第5エリア)(兼任)
株式会社みずほフィナンシャルグループ
執行理事 リテール・事業法人カンパニー審議役
2024年 4月 ユーシーカード株式会社 代表取締役社長
2024年 6月 一般社団法人日本クレジット協会 副会長(現任)
新潟県出身。
敬和学園大学人文学部英語文化コミュニケーション学科卒業。
2013年4月〜2017年3月まで岩手朝日テレビ報道制作局に所属し、「ゴエティーニョ !」MC。「スーパーJチャンネル いわて」キャスター。
「朝だ! 生です旅サラダ」中継リポーターなどを担当。
2017年4月〜2021年6月まではUX新潟テレビ21 アナウンス部所属。
「まるどりっ!」MC、開局35周年 特番「クイズ5CH」MC、「JR東日本」「NEXCO東日本」などのCMにも出演。
現在はフリーとして、MC、キャスター、リポーター、ナレーション、イベントMCなど多彩に活躍中。

クレジット業界を取り巻く環境について

企業間決済におけるキャッシュレス化は成長の余地が大きい
課題は、不正利用被害対策と物価高及び金利上昇

高井:本年 4 月 13 日から開催の大阪・関西万博では 全面的なキャッシュレスの導入が話題となっており、今後もキャッシュレス決済の成長が予想されます。このような状況を踏まえ、業界の現状と今後についてお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

福岡:キャッシュレス決済比率は、2025 年までに 4割程度という政府目標に対し、2024 年は 42.8% と、当初計画を前倒しする形で達成しており、今後もさらに成長していくことが予測されています。これは、QR コード決済が台頭したことに加え、タッチ決済が普及してきたことが理由であると考えます。

2019 年頃から国際ブランドのタッチ決済の導入が本格的に行われ、その後、新型コロナウイルスの感染防止対策で全国のコンビニやスーパー、飲食店、商業施設などでタッチ決済対応端末の設置台数が急速に増加しました。

加えて、Apple Pay や Google Pay といったモバイル決済の普及も後押しとなり、日常の小口決済でクレジットカードを使用する機会が大幅に増えました。

また、電気、ガス、水道などの光熱費や、家賃の支払い、行政窓口での各種手続きにかかる費用等、生活関連費用においてもキャッシュレス決済が普及してきております。今後もさらにキャッシュレス化が進展していくと思われますが、本年4月より始まった、大阪・関西万博もキャッシュレス化を後押ししてくれるのではないかと考えております。

日本は少子高齢化社会のため、今後は中堅・中小企業中心にさらに「業務効率化」や「省人化」の動向が加速すると予測されており、完全無人店舗などのフルキャッシュレスに関する需要は高まるものと考えられます。

その点、大阪・関西万博は、会場内で現金を取り扱わない全面的なキャッシュレス決済環境のため、キャッシュレス業界としては、様々な知見を得る機会と考えています。

高井:昨今の決済ビジネスにおいて、業界を取り巻く環境が著しく変化してきており、業界全体として対応が求められていると思われます。このような状況において、クレジット市場の動向・課題等についてお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

福岡:個人決済の領域で、キャッシュレス化が著しく進展していることは、我々の日常生活の中において強く実感されますが、企業間決済においても、昨今のデジタル化の進展やインボイス制度の開始といった法改正の追い風を受け、キャッシュレス化が進んでおります。

さらに、2026 年度末までに「紙の約束手形や小切手の廃止」が予定されており、企業間決済の代替手段としてクレジット決済やファクタリングといったキャッシュレス需要の高まりが予想されます。

現在の企業間決済は、約 780 兆円の市場規模を有しているにも関わらず、そのうちキャッシュレス決済額は約 5 兆円程度にとどまっています。本分野には成長余地が大きく残されており、更なる発展を期待しています。

一方、課題としては、大きく 2 点あげられます。

1 点目は、不正利用被害です。2024 年のクレジットカードの不正利用被害額は、過去最高の 555 億円に達しております。当業界としては、直近、クレジットカード・セキュリティガイドラインを通じて、非対面加盟店における EMV 3-Dセキュアの導入必須化や PIN バイパス廃止の呼びかけ等を通じて不正利用の防止に取り組んでまいりました。2025 年度も加盟店への不正ログイン対策の実施など、適切な不正対策の導入を推奨していきます。しかしながら、ここ数年、業界全体としてイシュイングとアクワイアリング両面から対策を講じているにも関わらず、不正利用被害額が減少しない根本的な要因は、フィッシング詐欺による犯罪者への情報流出にあると考えています。これまでの取り組みと併せて、消費者のフィッシング詐欺に対するリテラシーを高める啓発活動が、不正利用対策のポイントになるのではないでしょうか。業界として中長期的な啓発活動に取り組んでいく必要があると考えます。

2 点目は、物価高及び金利上昇です。近年の物価高に伴い、企業における人件費やシステム費用をはじめとする事業運営コストが高騰しており、ことクレジット業界においては、金利の上昇によって資金調達コストも増大しています。そのため、自社において業務効率化や費用を圧縮する自助努力は最大限に行う事を前提としつつ、クライアントへの適正価格の転嫁を進める必要があると考えております。

ユーシーカードの歩みと展望

みずほグループの決済領域の中核を担い、
楽天グループとも関係を強化長期的な視点で様々な課題に取り組む

高井:ユーシーカードのこれまでの歩みについてお聞かせいただけますでしょうか。

福岡::弊社は、1969 年に創業以来、UC ブランド及び、会員、加盟店や UC ブランドカード発行カード会社であるブラザーズカンパニーの発展に努めております。2024 年 6 月 23 日には創立 55 周年を迎え、これまで以上にお客さまのニーズにお応えできるよう、様々な決済サービスの提供を通じ、お客さまの利便性向上と日本社会における安全・安心で便利なキャッシュレス社会の実現に貢献していきます。

高井:今後の貴社の展望についてお聞かせいただけますでしょうか。

福岡:弊社はみずほフィナンシャルグループの決済領域の中核を担うクレジットカード会社であり、<みずほ>と連携して戦略的な販路拡大を行う推進体制を整備しております。

特に BtoB 領域に注力しており、直近では、グループ内外の金融・非金融機能の提供を通じて、法人のお客さまが抱える課題の解決に向け支援する取り組み「みずほデジタルコネクト」を開始しました。

また、金融機能について、媒介方式によるサービス提案が可能な仕組みを構築し、「紹介」から「媒介」への変革によりさらなる強化を図ってまいります。2024 年 11 月に決済分野での新たなビジネスモデル創造を目指し、楽天カード株式会社を含む 6 社間で業務提携契約を締結しました。それに伴い、各社の強み・ノウハウを集約することで、個人および法人向けに、より利便性の高いサービスの提供を可能にします。これらを通じて、日本経済全体における消費の活性化の一助となるよう、より持続的で競争力の高い企業として成長していきたいと考えています。

高井:御社の社会貢献事業への取組みについてお聞かせいただけますでしょうか。

福岡:みずほフィナンシャルグループの一員として、長期的な視点に立ち、「マテリアリティ(重要課題)」に取り組むことで、環境の保全および内外の経済・産業・社会の持続的な発展・繁栄に貢献し、様々なステークホルダーの価値創造に配慮した経営と弊社の持続的かつ安定的な成長による企業価値の向上を実現してまいります。

また、従業員が働きやすい環境づくりとして、ファシリティー面と人事面で、様々な施策・制度改革に取り組んでいます。ファシリティー面では、喫食ができる休憩スペース・会議室のリニューアルや社内イントラ環境の改善を通じ、社内の情報共有やコミュニケーション活性化を図っています。人事面では、多様な人材の獲得・活躍の実現を目的として人事制度を見直しました。2024 年 4 月より事務系基幹職制度を創設し、受託業務の担い手として能力と意欲ある社員を登用する仕組みを導入するとともに、2025 年には新卒採用を大幅に増やし(前年度比約 1.3 倍)、中途採用も強化しております。

さらに、若手の登用を進めており、最速で 30 歳で課長職に任命できる人事制度を導入しています。一方でシニアと若手の双方が働き甲斐を持ち、仕事への意欲を高めながら働けるよう、制度を充実させています。お客さまにより一層ご満足いただけるよう、弊社に寄せられた「お客さまの声」を大切にし、サービスや製品の向上に努めています。具体的には、お客さまから寄せられた意見を積極的に収集し、役員を交えた会議で改善策を検討しています。このように「お客さまの声」に真摯に向き合うことで、お客さまの満足度を高め、信頼される企業であり続けることを目指しています。

クレジット業界と協会が果たす役割

不正利用対策の広報・啓発強化と安全・安心な決済環境整備

高井:クレジット業界が果たすべき役割、また日本クレジット協会が果たす役割について協会副会長のお立場からお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

福岡:ここ数年は特に業界全体として、様々な不正利用対策を講じていますが、不正利用金額の上昇に歯止めがかからない状態が続いており、誰もが安全・安心に利用できる決済環境の実現は、未だ道半ばの状況にあります。日本クレジット協会は、クレジット取引の統計調査の他にもクレジットカード取引のセキュリティに関する協議会の運営や消費者への啓発活動を行っております。具体的には、クレジットカード会社などの様々な関係者で、セキュリティ対策について協議し安全・安心なクレジットカード取引の実現を目指しています。

また、教員や学校教育関係者へのクレジット教育支援活動の他に、消費者に向けてクレジット取引全般に関する注意喚起や啓発を行っております。昨今の不正利用被害が拡大し続けている状況を鑑みると、日本クレジット協会は、消費者に向けて、不正利用対策に関する広報・啓発活動を強化すると共に、消費者がクレジット決済をより安全に利用できる環境を整えていく役割があると考えます。

[PR]提供:日本クレジット協会