※この記事は2025年4月3日時点の情報をもとに執筆しています。
過去2シーズンの悔しさを胸にチーム一丸となって巻き返し、3年ぶりのリーグ優勝、4年ぶりの日本一を目指す東京ヤクルトスワローズ。そのために必要なこととは?
V奪回に向けての3人のキーマン
ベストオーダーを組めなかったこともあり開幕3連敗を喫したスワローズだが、その後はホーム神宮球場で連勝。選手たちの表情も明るくチームの雰囲気は決して悪くない。
昨シーズンは最下位こそ免れたがセントラル・リーグ5位に終わっている。チーム本塁打数103はリーグトップ、チーム打点484も同2位。対してチーム防御率は3.64でリーグワースト。これだけを見ると必要なのは投手力の強化のようにも思えるが、実はそうでもないと感じる。
スワローズが優勝した2021、22シーズンも実は投手力がずば抜けてよかったわけではない。ホームの神宮球場はフィールドが狭いこともあり投手に不利な条件がつきまとう。そのため投打が噛み合うことが勝利には不可欠。そこをリードするのは、やはり打線なのだ。
奥川恭伸、高橋奎二、小川泰弘ら先発投手陣が踏ん張って試合をつくり、その間に打線が爆発というのがスワローズの勝利パターンとなる。 ロースコアで逃げ切るのではなく、たとえ先制点を奪われたとしても一発で引っ繰り返すスリリングなゲームこそがスワローズの魅力。ならばV奪回に向けて期待すべきは打撃陣のさらなる奮起だろう。
その中心を占めるのは、村上宗隆、長岡秀樹、山田哲人。
主砲・村上には昨季の経験を活かしての猛打、安定した活躍を期待

スワローズの優勝に不可欠なのは、やはり主砲・村上崇隆の完全復活だろう。昨シーズン、本塁打王、打点王の2冠に輝いているのだから好成績を残したと言えるが、シーズン前半の不振がチームの低迷に直結した。チームが連覇を果たした2022年には史上最年少の「3冠王」に輝いた村上だが、昨シーズンの開幕直後は絶不調に陥ってしまった。4月の成績は打率.152、本塁打は開幕から53打席出ず僅に1本、リーグワーストの38三振を喫した。それにより得点力が低下し、チームはスタートダッシュに失敗したのである。
今年もコンディション不良から開幕戦から欠場。だが体調は徐々に上向いており、本領発揮の刻は近づいている。村上の打撃スタイルは、ボールを自らのミートポイントに呼び込んでのハイスピードスイング。これでホームランを量産してきた。だが、難点はバッティングフォームを崩しやすいこと。相手投手はタイミングを外すなどの策を必死に練ってくる。そこでリズムが狂いフォームを乱す。だが今年は、これまでの経験を活かせるのではないか。昨シーズン前半、不振に陥った村上は冷静にバッティングの見直しに努めた。
試合後に、必ず自分の打席の映像を見る。抱いていたイメージと実際のスイングの差異を確認するためだ。そこで修正点を洗い出し、テニスボールを素手で打つなど感覚を蘇らす練習にも取り組んだ。時間はかかったがシーズン後半に打棒復活。終盤の9月10日からの15試合で10本塁打をマークしている。スランプを経験するも、そこから立て直せたことは本人にとって大きな自信になったはずだ。
2026シーズンからはメジャーリーグ行きを公言している村上。今シーズン、チームを優勝に導く活躍をし、新たな舞台に挑みたいとの想いは強い。
3割超えを目指す成長株・長岡秀樹

昨シーズン、チーム最高打率(,288)を残したのは入団5年目の長岡秀樹だ。遊撃手として143試合フル出場し最多安打のタイトルを獲得、ベストナインにも選出された。レギュラーに定着した2022年から3年連続してオールスターゲームにも出場している。長打力を売りにするタイプではないが、シュアなバッティングが光る。目を引いたのはバットコントロールの巧みさに加え、下半身を柔らかく使えていること。ミート力ではチーム随一。 さらに勝負強さも兼備える。
一昨年5月のベイスターズ戦、山崎康晃から放ったサヨナラアーチ、昨年7月、カープ戦で栗林良吏からのサヨナラスリーベース、9月のジャイアンツ戦でもサヨナラ打を決めている。塁に出てチャンスを演出するだけではなく「ここぞ!」の場面で存在感も示してきた。
「昨年以上の成績を残したい」そう話す長岡は、シーズンオフには村上らとともに自主トレを行いスイングの精度を高め自信を深めている。夏場に向けて調子を上げていくはずで2年連続の「最多安打」タイトルの獲得、さらには打率3割超えも目指す。チームの浮上に長岡のさらなる成長は欠かせない。
甦る「ミスター・トリプルスリー」
5年連続でチームのキャプテンを務める山田哲人は左手首を負傷し開幕カードを欠場したが、4試合目からスタメン復帰。今シーズン、巻き返しを図る。
「もう全力でプレイできる。今年はやるしかない!」そう話す山田は、春季キャンプで徹底的にカラダを苛め抜いた。特に若手を鍛える「階段ダッシュ」にも参加するなど精力的にトレーニングに取り組み、さらに体幹を強化、シーズンを闘い抜くフィジカルをつくり上げている。手首のケガが癒えたなら活躍が見込める。2015年に本塁打王、盗塁王にも3度輝き、ベストナインには6度選出されるなど実績は十分。プロ15年目のベテランとはいえ、まだ32歳の働き盛りだ。
「今年は、まだ獲得していないゴールデングラブ賞も狙いたい」そう話すほどに気力も充実している。決して大きくはないカラダながら長打を放てるのが、山田の魅力。それを可能にしているのは左足を大きく上げてタイミングを取る独特の打撃フォーム、そしてパワーではなくボールを上手にバットに乗せる卓越した技術である。自主トレ、キャンプを通して体幹強化に取り組んだのは、その技術を活かすためにほかならない。求められるのは、村上とともにクリーンアップに名を連ねチームを牽引すること。「ミスター・トリプルスリー」復活に期待したい。
「打ち勝つ野球」で急浮上の兆しあり!
スワローズの魅力に一つに「大型補強がなくても一気にチーム力がアップする」ことが挙げられる。
思い起こせば高津臣吾監督就任1年目の2021年にリーグ優勝を飾ったが、その前年は最下位だった。大型補強をしたわけではなく、選手個々がレベルアップし投打がかみ合った結果が優勝へとつながったのだ。ここ2シーズン低迷しているとはいえ、スワローズは今シーズン、一気にV争いに加わる可能性を秘めている。そのための最低条件は、4、5月で大きく負け越さないこと。
実はスワローズには夏場に強い選手が多い。よってシーズン半ば過ぎからの巻き返しも十分に期待できるのだ。勝率5割以上をキープしオールスターゲームを迎えたならばV争いに食い込めよう。もちろん投手陣の活躍も必要だが、カギを握るのはやはり打線。
村上、長岡、山田のほかにも期待値の高い打者が多くいる。開幕から好調の赤羽由紘、東北楽天イーグルスから新加入の茂木栄五郎、オスナ、サンタナの両外国人…。打線がつながれば勝利のリズムを刻める。求めるべきは「打ち勝つ野球」。
ツバメ軍団に急浮上の兆しあり─。