昨今、働き方改革の法改正で注目の集まった「トラックドライバー」の仕事。ネットショッピングで買ったものが翌日届いたり、コンビニでいつでも商品が買えたり、当たり前のように享受している日常は、トラックドライバーたちが日本の物流を支えてくれているおかげで成り立っています。また、震災時には被災地への支援物資をいち早く届けるなど、社会にとって重要な役割を担う、なくてはならない職業のひとつであることは間違いありません。
その反面、「大変そうな職業」というイメージを持たれがちであるのも事実。今回、マイナビニュース会員約500人に実施したアンケートによると、以下のような回答が得られました。
「いやいや、ちょっと待ってください!」
異議を唱えたのは、近畿2府4県でトラック協会の会長を務める会長さん6名!いずれも、トラック業界歴の長いプロ中のプロです。そこで今回は、トラック業界の現状を伝えたいとの要望を受け、座談会形式でお話しいただきました。
左から
(一社)滋賀県トラック協会 松田直樹 会長
(一社)兵庫県トラック協会 木南一志 会長
(一社)大阪府トラック協会 坂田喜信 会長
(一社)京都府トラック協会 平島竜二 会長
(公社)奈良県トラック協会 塚本哲夫 会長
(公社)和歌山県トラック協会 阪本享三 会長
Topic1. トラックの運転は危険で難しい?
まずは、こちらのトピックから。マイナビニュース会員500名に調査したところ、約58%が「トラックは運転が難しく、常に事故の危険がありそう」と回答しました。
このイメージに理解を示しつつも、会長たちはこう反論します。
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トラックは乗用車と比べて大きいので、不安を抱かれるのはむしろ自然な感情といえるかもしれません。しかし、だからこそ安全対策が徹底されています。例えば大阪府内では、主要幹線道路を中心に運行ルートが決められていて、事故が起きやすい狭い道や危険が予想される場所などは極力避けるように指導しています。 |
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京都府でも、狭い道や一方通行の道路が多いため、トラックが運行できるルートはかなり厳しく規制されています。事故が起きやすい道には、そもそも進入できない仕組みになっているのです。そのうえで、トラックドライバーたちには事前のルート確認や管理システムによる運行記録のチェックが課せられていますので、安全性は飛躍的に高まっています。 |
さらに、最近は安全装置が充実し、事故防止に向けた取り組みも盛んだと訴えます。
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自動ブレーキはもちろん、車線から外れると警報が鳴る「車線逸脱警報」の装置なども搭載されています。これらの技術は、どんどん進化していくでしょう。 |
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そして現在は、各事業者が事故防止の啓発に力を入れており、危険予知や事故事例に基づいた研修やセミナーを開催するなど、工夫した安全教育が行われています。それに、出発前にはトラックの点検や飲酒運転撲滅のためのアルコールチェックが毎日義務付けられていますし、事故が起きないように細心の注意を払って対策しているところです。 |
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技能の向上や安全運転などをテーマにした各種研修に加えて、ドライバーが常に心身ともに良好な状態で運転できるよう、定期的な健康診断も提供しています。最新技術を駆使した車両整備や運行管理だけでなく、あらゆる面でドライバーをバックアップし、事故の防止に努めています。 |
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私たちの業界にとって、安全は「一丁目一番地」。まさに最優先事項です。実際、緑ナンバーの事業用トラックの事故発生率は低い傾向にあります。業界をあげた取り組みによって、事故が大幅に減少していることを知っていただきたいですね。 |
とはいえ、トラックを運転するのは、そう簡単なことではないでしょう。未経験でも可能なものなのでしょうか?
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近年はトラックドライバー不足が叫ばれているので、未経験者を育成しようとする気運が醸成されています。座学をはじめ、危険予測トレーニングや運転シミュレーターを通じて基礎的な感覚をしっかり身に付けてから、実技研修に進んでいきます。 |
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実技研修でも、最初は先輩や指導員が運転するトラックに同乗しながら運行ルートを確認していきます。自身で運転するようになってからも、慣れるまでは先輩や指導員が助手席に乗って指導してくれるので、ご安心ください。 |
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安全対策とも重なる話ですが、後方を確認できるモニターやハンドル操作をアシストする機能が付いていますので、かなり運転しやすくなっていますよ。 |
Topic2. トラックドライバーって労働時間が長そう……
続いてのトピックは「労働時間」について。アンケートでは、約71%が「長時間労働をしていそう」と懸念していました。
しかし、このイメージについても、直近の法改正も相まって変化が起きていると指摘します。
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確かに、一昔前の運送業界は、トラックドライバーの長時間労働によって支えられていましたが、昨年(2024年)春の法改正を機に変化が加速しました。時間外労働の上限が年間960時間となり、各事業者がトラックドライバーに無理な運行をさせないよう、運行ルートやシフト編成をより厳格に見直したのです。休憩も取りやすくなっています。 |
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また、国土交通省によって創設された「トラック・物流Gメン」により、長時間の荷待ちをさせる荷主への監視が強化され、悪質なケースでは是正勧告がされるようになったことも長時間労働の解消につながっています。 |
どの業界でも働き方改革が推進されていますが、トラック業界も例外ではないと断言。それぞれの事業者が、トラックドライバーの業務効率化を積極的に図っているそうです。
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法改正に合わせてITシステムを導入する事業所が少なくなく、走行データや待機時間を細かく記録する仕組みも整いつつあります。トラックドライバーがどれだけ拘束されているかが「見える化」され、事業者側も労働時間管理に力を入れざるを得なくなりました。結果的に休みが増え、働きやすい環境になっています。 |
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荷主との連携を強化しようとする事業者の姿も目立ちます。例えば、配送予約システムを導入することで、指定された時間帯にスムーズに荷受けができるようになり、待機時間が大幅に減りました。拘束時間が短縮され、トラックドライバーにも好評です。 |
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広域輸送が多い府県では、決められた場所でトラックドライバーを交代する交代制運行を取り入れることも一般化しつつありますよね。無理な夜間運転を減らす取り組みの一環で、トラックドライバーの負担が軽減され、事故リスクの低減にも直結しています。中小零細には、まだまだ難しい面があると思います。 |
阪本会長いわく、AIを活用して運行ルートや配車計画を自動算出する先進的な事業者もあるのだとか。今後ますます働き方改革は進んでいくとの見通しを立てました。
Topic3. ぶっちゃけ、お給料ってどうなの……?
3つ目のトピックは、就職活動中の学生にとって気になる点のひとつ、待遇面について。アンケートでは「給料が高そう」「給料があまり高くなさそう」が、ほぼ同数という結果に。イメージは割れていますが、ぶっちゃけどうなのでしょうか?
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トラックドライバーの給与水準は、ここ数年で上昇傾向にあります。法整備により待機時間を含む拘束時間が賃金に反映され、働いた分、しっかりと稼げるようになりました。中でも大型トラックを担当するドライバーや、特殊な荷物を扱えるスキルを有している方の給与は高めですよ。 |
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人手不足を解消し、優秀なトラックドライバーを確保するには、待遇改善が欠かせません。給与や手当が従来よりも良くなっているのは、自然の流れといえます。 |
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給与体系にもよりますが、長距離を走行したり夜間もしくは早朝に入ったりすれば給与に手当てが上乗せされるので、稼ぎたい人はどんどん収入を増やせますよ。 |
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手当ては拡充していますよね。安全運転の実績や燃費改善が給与や賞与に反映されたり、住宅手当てや家族手当てを手厚くしたり、各事業者で福利厚生は充実しています。 |
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中型免許や大型免許の取得を支援する事業者も多いですね。資格取得できれば、さらなる収入アップも目指せます。 |
一方で、安定した働き方もできるようになっていると松田会長が補足しました。
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中小事業者の間でも「定時制」の導入が広がっています。固定シフトで決まった時間帯に働き、保障された給与を安定的に得たい人には魅力的に映るのではないでしょうか。 |
向いている人には働きやすい!カッコいいトラックドライバーの仕事
業界トップの話を聞くと、世間で思われているトラックドライバーのイメージが実情とはかなり異なることがわかりました。最後に、どんな人がトラックドライバーの仕事に向いているのか尋ねてみると、こんな答えが返ってきました。
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車が好きで、トラックに乗ってみたいと思っている人には挑戦していただきたいですね。 |
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やっぱりトラックが好きな人にとっては天職ですよね。大きな車体をダイナミックに運転するのがトラックの醍醐味で、子どもたちから「カッコいい!」と憧れられる職業だと思っています。 |
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当社はトラックの装飾に投資を惜しまないのですが、走る車体を見て「乗りたい!」と入社を希望する人もいます。トラックが好きな人なら、達成感を味わいながら楽しく働けるのではないでしょうか。 |
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トラックでなくても、車を運転するのが好きな人は、トラックドライバーという選択肢を検討してみてください。いろんな土地に行って綺麗な景色を見たり、ひとりの時間を大切にしながら仕事ができたり、そういったことに惹かれる人におすすめしたいですね。 |
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荷物ではなく、幸せを運んでいる。責任感を持って、そう捉えられる人であれば、やりがいを感じられるはずです。 |
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何より、荷物をお届けした際に「ありがとう」と笑顔で感謝されることが最大の喜びです。トラックドライバーは、社会を支える誇りを日々感じながら働ける仕事ですよ。 |
近畿トラック協会では、トラックドライバーの仕事をわかりやすく紹介するマンガを掲載中!気になった方は、ぜひチェックしてみてくださいね!