みなさんは「ハイヤー」と聞いてどんなイメージが頭に浮かびますか? では、「ハイヤー」と「タクシー」の違いについて正確にご存知でしょうか? なんとなく同じだと思っている人は多いかもしれません。でも、実は似て非なるもの。ともに運転のプロではありますが、求められる能力や適性は大きく異なります。

とりわけハイヤー乗務員は、安全第一に基づく高い運転技術とホスピタリティ、状況判断能力、そして柔軟かつ適切なコミュニケーションなどが求められるとあって、近年、大企業を中心にそのニーズが高まっているといいます。

そこで今回、1950年にハイヤー事業を創業し、「74年間」の歴史を持つ大和自動車交通グループさんのご協力のもと、ハイヤーおよび乗務員の仕事について詳しく知る機会を設けてもらいました。

大和自動車交通のハイヤー乗務員とは?

ハイヤーサービスを実際に体験してみた!

まずは実際にハイヤー乗務員の運転やホスピタリティがどのようなものか知るべく、乗車体験をさせていただきました。

最初に感嘆したのは乗車する時。開けたドアが閉まらないよう右手で抑えるだけでなく、さらに左手でルーフの端をカバーして頭をぶつけないようにする乗務員さん。

さりげない配慮が素晴らしいとともに、出発する前には必ず行き先を確認。運転は実におだやかで、余計なストレスを感じることなく終始スムーズに走行していきます。

車内で最も感じたのは「安定感」。乗務員さんには「普段通りの運転を」とお願いしましたが、私たちが運転する時についやってしまいがちな急ブレーキ、急カーブ、急発進、極端な速度の上下などはまったくありませんでした。

Check Point!

乗務員さんによれば、一般道を走る際はスピードにも配慮し、カーブを曲がる時はあえて大回りをして車体が揺れないよう配慮しているとのこと。確かにカーブが強引だと車酔いの原因にもなりかねません。

こうした普段なんとなく乗っているだけでは分からないさまざまなテクニックを、あえて自分から詳しく説明しないところにも気配りを感じます。

Check Point!

お客様に心地よい時間を過ごしてもらうため、基本的にハイヤー乗務員は自分から話しかけることはしないそうです。

時間にして約20分ほどでしたが、気がついたら目的地にあっという間に到着していました。

めったに味わえない貴重な経験であるとともに、時間を忘れるほどの優雅な気持ちを味わえた、とても快適なひとときでした……!

ハイヤー乗務員をもっと知りたい!

では、ハイヤー乗務員のみなさんは高い運転技術とホスピタリティを維持するために、どのような努力をしているのでしょうか。大和自動車交通グループで働いている2人の乗務員さんにインタビューをしました。

  • 左から、佐々木さん、最所さん

ハイヤー乗務員にとって“大切なこと”とは? 2人の乗務員さんに聞いてみた!

やっぱり「ありがとう」と言われた時が、一番のやりがい

▼今回お話を聞いた方
・佐々木 啓一さん
ハイヤー歴3年半。47歳。飲食サービス、冠婚葬祭業などを経て大和自動車交通へ。現在は上場企業の社長さんの専属乗務員として従事。
―――ハイヤー乗務員になったきっかけを教えてください。

以前は居酒屋でホールスタッフとして働いていたり、互助会で冠婚葬祭業に従事していたりしたのですが、ある日、ハイヤー乗務員の大先輩から「もしよかったらやってみないか」と誘われたんです。当時はハイヤーの仕事についてまったくわかっておりませんでしたが、車の運転は好きでしたし、もしかしたら自分に合うかな、という気持ちはありました。

―――仕事におけるやりがいや、魅力は何でしょうか?

「自分はお客様に対してどういう心づかいが出来るんだろう?」と常に考えることが、おのずと「どういう運転をしたらいいだろう?」ということにもつながっていくと私は思います。

お客様を目的地まで時間通りに送り届け、なにより安全にお運びすることは大前提として、そこに加えて、ご負荷やお疲れにならないような丁寧な運転を心がけるようにしています。なので、自分の運転はほぼ毎日振り返っていますし、そういった積み重ねと自己研鑽が魅力でもあります。

ただ、これはあくまで私の場合であって、取り組み方や心がまえについては十人十色だと思いますが、やっぱりお客様から「ありがとう」と言われた時は、一番のやりがいを感じますね。

―――これまでの乗務経験の中で、印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

早朝にアメリカから帰ってくるお客様を空港までお迎えに行く仕事だったのですが、先輩から「気流の関係もあり、夜間発の帰りの便は到着が早まる可能性がある」と聞いていまして。なので、航空会社のサイトで当該便の直近10日間の発着時間を調べたところ「もしかしたら1時間早く到着するかもしれない」という予想に至りました。

そこでその旨を会社経由でお客様に伝え、本来の到着時間である朝5時の1時間前の4時に空港にお迎えにあがりました。お客様からは当初「(迎えに来るのは)6時でいい」と言われてましたが、予想通り飛行機の到着が1時間ほど早まり、結果的にお待たせすることなくお乗せすることが出来ました。

「道は生き物」思い込みはしない、常に複数の選択肢を

―――ハイヤー乗務を通じて身についたスキルや教えがあれば聞かせてください。

先輩に教わったことで肝に銘じているのは「目的地に向かうのに1つだけのルートで考えてはいけない」です。急な事故で通行止めになったり、祭りなどの催し事で渋滞になったり、道路では何が起こるかわからないので、私は常にルートを3つ用意するようにしています。

同じように、先輩が教えてくれた「道は生き物」という言葉も胸に深く刻んでいます。突然工事になって迂回しなければならなかったり、都市開発などで新しいビルが建ったりすると、車の流れも変わっていくんですね。そういった日々の“発見”も楽しさとともに“気づき”を感じさせてくれるポイントではあります。

あとはお客様がお立場のある方々ばかりなので、その方々とお話をする中で色々と学ばせていただくことも多いですね。

―――佐々木さんの考える、ハイヤー乗務員に必要な条件とは何でしょうか?

乗務員になりたての頃、私は「とにかく自分から何か話さないといけない」と思っていたんですね。サービス業で働いていたこともあり、それがお客様のためでもあると。でも、ハイヤーの場合、そうではないんです。

お客様から話しかけられたらお答えするのはもちろんですが、静かにしていたい、気持ちを安らげたい時に乗務員から話しかけられたらどう思うか? ゴルフの帰りに「スコアはどうでしたか?」なんてこちらから聞いたら即アウトです。たとえ良かれと思って聞いたとしてもいけません。自分がお客様の立場に立って考えてみればすぐにわかることですが、ハイヤー乗務員の基本は100%“受け”なんです。

加えて“柔軟性”ですね。「運転とはこうだ」「道路はこうだ」と頭の中で決めつけてしまっていると、急なアクシンデントやハプニングに対応できない。なによりそれによって一番被害を受けるのはお客様ですから。また、ハイヤー乗務員に限ったことではないかもしれませんが、分からないことがあったらすぐに“聞く”ことができる人は伸びるのも早いのではないでしょうか。「今の若い人はおとなしい」という意見をよく耳にしますが、私は「それって柔軟性があるってことでは?」とも思います。

―――最後に読者のみなさんへメッセージをお願いします。

大変な部分ばかり話したかもしれませんが、実際にはお客様を待っている時間の方が長く、その分、自分の時間はあります。そこで休憩したり、道の確認をしたり、音楽を聴いたりするのは自由なので、四六時中、神経を張り巡らせているわけではありません。すべてはお客様の安全が第一。そう考えられるのであれば、とてもやりがいのある仕事だと思います。

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まるで自室にいるように落ち着いていただくのが私の理想

▼今回お話を聞いた方
・最所 英幸さん
・ ハイヤー歴28年。63歳。飲食チェーンで勤めた後、大手旅行会社や大手生命保険の専属運転手などを経て大和自動車交通グループへ。
―――これまでのキャリアについて聞かせてください。

1996年、35歳の時にハイヤー乗務員に転職しました。それまで飲食チェーンで働いていましたが、事業規模の縮小に伴い、一発奮起して「何か違うことをやろう」と。最初に入った交通会社で20年以上ハイヤー乗務員として働いた後、縁あって大和自動車交通グループに2017年から働いております。

―――ハイヤー乗務員としてのこだわりは何でしょう。

世の中を経済的にも動かしている立場のお客様に、会長室や社長室と同じ環境でご乗車いただくことです。雰囲気やサービスなどが常に同じ“温度”であることを保ち、まるで自室にいるように落ち着いていただくのが私の理想であり、こだわりと言えるでしょうね。

運転に関しては、10年ほど前までは朝刊をお読みになる方が多く、車の中で下を向いてモノを読むと気持ちが悪くなりますので、たとえば首都高のカーブにも気づかないような運転を常に心がけていました。もちろん今も同じです。

私どもの仕事は「ありがとう」とお客様に言っていただけることがすべてですが、一番は「事故が起きない」こと。私は新しい人が入ってくると「一番も二番も三番も四番もなく、絶対に事故を起こさないこと」と必ず言っています。ハイヤー乗務員にとって、事故は時間のロスにつながるので最もやってはいけません。極端ですが、ホスピタリティはその後についてくるものです。

―――これまでの乗務経験の中で、印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

ある企業様の接待で、8台のハイヤーが3分の差もなくお客様全員を目的地に無事お届けしたときのことが、記憶に残っていますね。一緒に走っていれば大丈夫だと思われがちですが、バラバラになってはいけないので8台すべて同じ道を通る必要がありますし、一度道路に出てしまうと何が起こるかわかりません。信号待ちで分断される恐れもあるので常に気を配ってないといけない。

さらに難しいのが、役職の序列があるので、一番偉い人が一番初めに着かないとダメなんです。ハイヤー同士は無線で連携しているわけではないので、道順を含め、事前に道路情報や対処法を徹底的に共有しておく必要がありましたが、その分、うまくいった時は非常に大きな達成感がありました。ハイヤー乗務員は個人プレーのように思う人も多いかもしれませんが、会社の同僚、デスクをはじめ多くの人たちの支えによって成り立っている職業でもあります。

あえて話さないのがプロ、「見猿・聞か猿・言わ猿」の精神

―――ハイヤー乗務員を通じて身についたスキルや教え、気づきがあれば聞かせてください。

すべてお客様の立場に立って考える、ということです。常に丁重に扱って欲しいというお客様もいれば、腫れ物のようにさわって欲しくないというお客様もいます。なので、新しいお客様についたとき、私は最初の3カ月くらいはあえて会話をしません。不思議なもので、そうしているとお客様の方から話しかけていただくようになります。あとはご自身の好きなことについてはお話しをしたいという方は多いので、専属の方の好きなスポーツや趣味などを事前に調べておくようにしています。

でも、しゃべりすぎると逆に信用がなくなります。車内はある意味、その会社の重要機密が飛び交う場所でもあるので、私はお客様から「あのこと知ってる?」と尋ねられても「なんのことでしょう?」と答えるようにしています。そうやって乗務員を試されるお客様もいらっしゃいますし、調子に乗って自分が知っていることを何でも話して「この乗務員はペラペラしゃべるタイプだな」と思われたら、そこでおしまいですので。

ただ、お客様から教わることは本当に多くて、私はこの仕事をしていなかったら知識が増えていなかったと思うので、そこには一番感謝していますね。

―――最所さんの考える、ハイヤー乗務員に必要な条件とは何でしょうか?

とにかく「走る」ことがタクシー乗務員に必要な条件とすれば、私たちハイヤー乗務員は「走らない」ことでしょうか。真逆と言ってもいいです。なぜなら、一度、お客様をお届けした後は、次のスケジュールまでひたすら待機することがほとんどですので。今はあまり見かけなくなりましたが、昔はゴルフ帰りに麻雀をするというケースが多く、そうなるともう何時に終わるかわからない(笑)。そんな状況でも、お客様がどんな状態でも涼しい顔をしてお迎えできるようひたすら「待つ」。これが必要ではないでしょうか。

あとは「自分が偉くなった気にならない」。“会長”“社長”といった役職のお客様を毎日お運びしていると、自分も偉くなったと勘違いしてしまう人がどうしてもいるんですね。そこを決して見誤らず、知らず知らずのうちに周りの人たちに対して上から目線にならないよう、自分に厳しく、客観性を持ち続けることも大事なことだと思います。まさに日光東照宮の「見猿・聞か猿・言わ猿」の精神ですね。

―――最後に読者のみなさんへメッセージをお願いします。

「車の運転」という意味でとらえた場合、ハイヤー乗務員はとても広がりとやりがいのある世界だと思います。もし興味をお持ちの方がいましたら、ぜひもう一つ上のステップで羽ばたいて欲しいですね。

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今回、ハイヤー乗務員の仕事内容やホスピタリティの高さなどについて、詳しく学ぶことができました。「お客様の安全第一」という大前提のもと、綿密な事前準備に加え臨機応変に対応できる柔軟性が強く求められるとあり、大変なことも多い仕事ですが、その分、やりがいも大きく自己成長につながることは間違いありません。

「74年間」、お客さまと創ってきた伝統を持つ大和のハイヤー。この記事を読んでハイヤー乗務員に興味を持った人は、ぜひ大和自動車交通グループをチェックしてみてください!

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photographer 深山 徳幸

[PR]提供:大和自動車交通グループ