老若男女問わず誰もが当たり前のように使っているSNS。それに伴い、近年SNSを通じて未成年者が性被害に巻き込まれるケースが増加しています。

そんな問題に対し、FacebookやInstagramを運営するMetaが支援し、米国の民間非営利団体「全米行方不明・被搾取児童センター National Center for Missing & Exploited Children」が運営する「Take It Down」(テイクイットダウン)の日本語版がローンチしました。これは、18歳未満の時に撮影された性的な画像や動画の削除、および拡散を防ぐためのプラットフォームです。

  • 未成年者を含む若い世代の人々が、自分自身の性的な画像や動画のコントロールを取り戻す手助けをするプラットフォーム「Take It Down」

この「Take It Down」とはどのような取り組みなのでしょうか。SNSを利用している人なら誰しもが遭う可能性があると言われる性被害。これから犯罪に巻き込まれないための有効な対処法も併せてご紹介します。

Meta協力のもと「Take It Down」を立ち上げ。
未成年者の性的な画像や動画の削除申請が可能に

  • 6月6日(木)、「Take It Down」の日本語版ローンチを記念したイベントにNCMEC ディレクターのFallon McNulty(ファロン・マクナルティ)さんが登壇。仕組みや狙いについてプレゼンテーションを行った

Take It Down」を立ち上げた「全米行方不明・被搾取児童センター National Center for Missing & Exploited Children(以下NCMEC)」は、40年前に米国で設立された民間の非営利団体。行方不明になった児童を探すこと、そして子どもが安全な生活を送ることをサポートすることの2つが主なミッションです。

「Take It Down」を立ち上げた経緯

NCMECによると数年前に行った調査で、「未成年者がオンライン上に性的な画像などをアップして不安を抱えていても、なかなか警察や保護者に相談することができていない」というケースが多いことが明らかになったのだそう。そこでMetaの協力を得て、「Take It Down」を立ち上げました。

  • 不安を抱えていても、なかなか警察や保護者に相談することができないという人が多いことが分かっている

「Take It Down」とは、未成年者を含む若い世代が、ネット上にある自身の性的な画像や動画を削除し、拡散を防止できるプラットフォーム。5月下旬から日本語での利用も可能となりました。

「Take It Down」で削除申請できるコンテンツは、18歳未満の時に撮られた画像や動画が対象。削除したい画像や動画のデータを保持していれば、誰でも無料で利用可能です。FacebookやInstagram、Threadsなど、加盟しているオンラインプラットフォーム上に既にシェアされている場合、削除の申請ができます。まだシェアされていない場合でも、事前に申請しておけば拡散を止めることができるため、予防措置としても有効です。

  • 加盟しているオンラインプラットフォーム

未成年の性的コンテンツ拡散を防ぐ

Take It Down プラットフォームはこちら

「Take It Down」利用の流れ

「Take It Down」のWebページで、該当の画像を本人のデバイスから選択すると、画像ごとに「ハッシュ値」と呼ばれるデジタル指紋が割り当てられます。そのハッシュ値がNCMECに提出されると、加盟したオンラインプラットフォーム上で該当する画像や動画を検出。プラットフォームから取り下げられ、同じコンテンツが投稿されることも防いでくれます。

ちなみに「Take It Down」を通じてNCMECに届くのは、ハッシュ値だけ。性的な画像や動画そのものを送らずに申請できるのは安心ですよね。

日本の警察庁の発表を見ても、SNSに関わる事犯の被害児童数は年々増加傾向にあることが分かっています。もし子どもが思わぬ犯罪に巻き込まれていても、「Take It Down」を利用すれば、対処ができる可能性があるのです。これだけで、親はもちろん、本人にとって安心材料になるはずです。

未成年の性的コンテンツ拡散を防ぐ

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なぜMetaがサポート?
その理由と、Metaが実施する未成年者の安心安全な利用のための対策

  • Metaでアジア太平洋地域のセーフティポリシーを担当するMalina Enlund(マリナ・エンランド)さんがMetaにおける未成年の性被害抑止の取り組みについて紹介した

Metaが「Take It Down」の開発を支援することになったのは、児童を含めた利用者の安全を守る、という徹底したポリシーから。

Metaが運営するFacebookやInstagramでは、子どもを性的に搾取する、または子どもを危険にさらすコンテンツや活動を禁止しています。万が一子どもへの性的搾取を発見した時は、NCMECに通告。その後、警察への報告などの措置を取るよう定めています。

  • Metaが自動に危害を及ぼすコンテンツに対して措置を講じた数

Metaが実施する対策その1

ペアレンタルコントロールツール

InstagramやFacebookでペアレンタルコントロールツールの機能も提供し、親や保護者が未成年者のアカウントに、DM(ダイレクトメッセージ)を送信できる利用者を設定したり、子どもがフォローしているアカウントを確認したりすることも可能。望まないやりとりから子どもを守る対策を強化しています。

Metaが実施する対策その2

さまざまなテクノロジーで児童の性的虐待コンテンツを検出

また、児童の性的虐待コンテンツを検出するために、機械学習をはじめとするテクノロジーにも投資。性的な画像や動画はもちろん、未成年者に対して異常な行動をするアカウントやグループを検出するなど、最新の技術を利用して、未成年者への被害を未然に防ぐ取り組みをしています。

Metaが実施する対策その3

児童を性的に搾取するコンテンツの検索に介入

さらに、児童を性的に搾取するコンテンツを検索する人を抑止する、といった仕様も。未成年者を含む利用者が安心安全にプラットフォームを利用できるよう、Metaではこれらをはじめとする、30以上ものツールを用いて対策に努めているのです。

Metaが定めるコミュニティ規定

「児童に対する性的搾取、虐待、児童のヌード」について

「誰でも被害に遭う可能性がある」子どもを守るために、親ができること

今後も未成年者のSNS利用は増える傾向にあり、犯罪の件数も増加が予想されますが、弁護士の川本瑞紀さんによると、昨年7月の刑法改正で「十六歳未満の者に対する面会要求等罪(性的グルーミング罪)」が盛り込まれたことで、警察への相談がしやすくなったと言います。

  • 性暴力被害者のための活動に携わる弁護士の川本瑞紀さん

グルーミングとは、大人が子どもに性的な目的で近づき親しくなること。SNSなどをはじめとするオンライン上での行為は「オンライングルーミング」とも呼ばれます。グルーミング罪が新設されたことで、16歳未満の子どもにわいせつ目的で誘惑したりお金を与えて会おうと約束したりすると、罪に問える可能性があります。また、性的な画像や動画を求めることでも罰せられる法律です。

子どもを信頼していると「うちの子は大丈夫」と思いがちですが、川本さんによると「交通事故に遭うくらい、誰でも被害に遭う可能性がある」ほど、当たり前のように起こりうることだそう。グルーミングをしてくる大人は、「子どもの悩みを聞いたり褒めたりして、いとも簡単に子どもの心をつかむ」と言います。

SNS上の仕様やペアレンタルコントロールツールなどで見知らぬ大人との接触を防げるとしても、事前に被害に遭ってしまった時の対策を知識として知っておくことは重要。「Take It Down」などのプラットフォームを利用したり、警察、または「#8891」でつながる「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」などのホットラインへ連絡したりという対策を知っておけば、冷静に対処ができます。

SNSは便利で楽しいツールですが、悪用する人間はどこにでもいるもの。親が積極的に知識を得てデジタルコントロールをしながら、子どもの身体と心を守るのが重要です。

未成年の性的コンテンツ拡散を防ぐ

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【Q&A】もし被害に遭ったら?被害に遭わないためにはどうしたらいい?

今回、イベントに登壇したNCMEC ディレクターのFallon McNultyさん、Metaで未成年者の性被害抑止の取り組みについて担当するMalina Enlundさん、弁護士の川本瑞紀さんに、子どもが被害に遭った時の対処法やSNSと向き合う際の心構えについて教えてもらいました。

  • 川本瑞紀さん(画像左)、Fallon McNultyさん(画像中央)、Malina Enlundさん(画像右)

Q 被害に遭わないためには、どんな対策がありますか?

A まずは普段から子どものスマホにペアレンタルコントロールツールなどでフィルタリングし、できるだけ見知らぬ大人との接触ができないようにコントロールすることが大切です。

また、日頃から困ったことがあれば話せる関係性を子どもと築いておきましょう。どんなに良い人でも、知らない大人と関わること自体、子どもにとって後ろめたさがあるもの。相談できる雰囲気があれば、具体的な被害が発生する前に止められる可能性があります。もちろん、親も子どもの変化に気づきやすくなります。

ただ、注意したいのは、オンライングルーミングなどのニュースを聞いた時に、被害者に対して「なんで会いにいったのだろう」などと、子どもの前で非難しないこと。自分も叱られると思い、言えなくなってしまいます。

Q もし被害に遭ってしまった時はどうすればいいですか?

A まず、被害のことを子どもから聞いた時は、子どもを叱らず、「話してくれてありがとう」と返しましょう。そして落ち着いて、元の画像や動画のデータが手元にあるかどうかを確認します。削除してしまうと証拠がなくなってしまい、「Take It Down」での削除もできなくなってしまうので、絶対に削除はしないでください。まずは「Take It Down」などを利用し、流出を防ぎましょう。加害者とのメッセージのやりとりなども重要な証拠となるため、削除しないようにしましょう。

それから、警察やホットラインに通報し相談します。犯罪への対処だけでなく、子どもの心のケアも必要。落ち着いたら、責めずに子どもの話を聞いて、コミュニケーションを取ってあげましょう。


誰にでも起こりうる、SNSでの性被害。今回登壇した川本さんは「Take It Downのようなツールがあることを知っていることが大切なので、ぜひ必要としている人たちへの周知に協力してほしい」と呼びかけました。もしいま被害に遭っていなくても、ぜひ一度知ることから始めてみてはいかがでしょうか。

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