三井不動産グループでは、「不動産デベロッパー」の枠を超えた、「産業デベロッパー」という「プラットフォーマー」として、新産業創造を目指す取り組みを行っています。これまでも街づくりを通じて、「場」や「コミュニティ」の提供を行い、そこに集う人々や企業に「イノベーション」を起こすお手伝いをしてきました。

今回は、三井不動産がアカデミアや産業界の方々とともに設立した、一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)を通して、日本橋におけるイノベーションのプラットフォームの提供と取り組みを紹介していきます。

左:ライフサイエンス・イノベーション推進部 渡辺雄策(LINK-Jプロデューサーを兼務)
右:ライフサイエンス・イノベーション推進部 境夢見(LINK-Jプロデューサーを兼務/2023年10月 台湾三井不動産株式会社 出向)

新しい産業の創出を目指すプラットフォーマーとして三井不動産が取り組む、場づくりとコミュニティづくり。日本橋の街で、ライフサイエンスをフィールドにその2大ミッションを実践するライフサイエンス・イノベーション推進部の渡辺雄策と境夢見(両名ともLINK-Jプロデューサー兼任)に、日々の活動や今後のチャレンジについて聞きました。

「LINK-J」とは? 

2016年、三井不動産がアカデミアや産業界の方々とともに設立した 一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)は、ライフサイエンス分野での「オープンイノベーションの促進」と「エコシステムの構築」 を目指す団体です。日本のライフサイエンス産業をグローバルに発展させるため、「LINK-J」は「コミュニティ」の力に着目しています。プレイヤー同士の出会いの場を創出するためイベントの開催やコラボレーション環境の整備を進めてきました。日本橋を中心に、2022年には834回のイベントを開催し、推定20万人を動員。会員数は企業・団体・個人を合わせて688(2023年8月時点)まで拡大しており、共創を生み出すエコシステムとしての成長が続いています。

ライフサイエンスの聖地を目指して
~「場」と「コミュニティ」で築く新たな未来~

―現在のお仕事の内容を教えてください。

渡辺 雄策(以下、渡辺):日本橋エリアを中心に、ライフサイエンス領域に特化した拠点運営を担当しています。若い企業や業界団体などにお声掛けして、現在日本橋に15あるオフィスビル「ライフサイエンスビル」シリーズへの入居をお手伝いするのが主な業務です。しかしそれだけにとどまらず、企業と企業をつないでイノベーションの場をつくる、「おせっかいな大家さん」としての活動にも取り組んでいます。

境 夢見(以下、境):私は現在「LINK-J」において、コミュニティづくりを中心とした企業支援を行っています。昨年は、主催・共催のイベントは120回開催し、平均して3日に1回はイベントを開催しました。企画から始めて、登壇者やゲストの調整、参加者の懇親をより深めていただくための飲食物の手配など、トータルでコーディネートしています。

渡辺:「LINK-J」のイベントに参加された方にライフサイエンスビルシリーズをご案内することもありますね。お互いに協力しながら、約170の企業をつなぎ合わせる活動をしています。最近は既存会員様や入居企業様による口コミが増えてきたおかげもあり、小規模の企業や、起業以前の方々も参加してくれるようになりました。それと並行して私たちのほうでも、報道などを手がかりにして、新しく仲間になってくださる候補を地道に探しています。

:ライフサイエンス産業の活性化はもちろん、日本橋という街を「ライフサイエンスの聖地」にしたいという目標を持って、コミュニティの輪を広げる活動に取り組む毎日です。

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―これまでは別部署でキャリアを重ねてこられたお二人ですが、過去の経験は現在の職務に活かされていますか?

渡辺:私にとって今の仕事は、これまでの経験の集大成と言えます。2015年に入社して最初に経験したのが、オフィスビルのテナントリーシングでした。その後2018年からは三井不動産ビルマネジメントに出向し、物件の管理業務を経験しました。今も、テナント様のリーシングと運営管理に携わっているので、多くの部分がこれまでと重なっています。

ただ、今までとは大きく異なる部分もあります。それは、お客様との関わり方です。これまでは大手企業のテナント様が多かったため、オフィス契約の専任担当者がおられるケースがほとんどでした。しかし、今ご一緒しているのは若い企業。お一人で全ての業務を兼任されている方も多く、オフィス契約が初めてというケースも少なくありません。

このような状況で、各社が最も理想的な不動産戦略を講じられるよう、受け身で要望に応えるのではなく、パートナーとしての立場でお客様と接していますね。だから、よくない選択肢には「やめた方がいいですよ」とはっきり申し上げます。

:私はこれまでホテルの開発部署で、三井ガーデンホテルを担当していました。ゼネコンやデザイナーの方、運営会社と協力して、ホテルのコンセプトから部屋の小物までを一つ一つをプロデュースする業務を担当していました。

そんな過去の仕事と今の仕事は、業務内容でいえば180度違うのですが、実は共通点があります。「各方面の専門家の知恵を借りながら、ひとつのものをつくり上げていく」点です。

「LINK-J」で開催するイベントを企画するときも、私自身にライフサイエンスの深い知識があるわけではないので、専門家や企業の皆様にたくさんのアイデアをいただきながら計画を進めているんです。三井不動産の仕事は指揮者に例えられることがありますが、まさにその通りだと感じます。

渡辺:確かに、専門家ではないからこそできることがあると感じる場面がありますね。私は「この方とこの方が出会って話したら良さそうだ」と感じてマッチングにつなげることが多いのですが、これは業界の内部にいると、意外と難しいことなのだそうです。

こうして生まれたつながりが新しい活動のきっかけになったというお話も聞いています。実績が少しずつ積み重なってきた結果、「なにかあったら「LINK-J」に相談しよう」と言う雰囲気も出てきていると感じており、嬉しいですね。

新しい発見やコミュニケーションが生まれるための「空間づくり」の大切さ

―新しい産業の活性化のために、日々の業務の中で心がけていることを教えてください。

渡辺:各企業の不動産に対するニーズを、細やかにキャッチするよう努めています。資金調達や雇用状況、提携先などの企業トピックスを見て、人や資金に動きがある企業様にお声掛けしています。提携先が日本橋にあったり、規模拡大にともなって新しいオフィスを探していたりと、私たちがお力になれるケースがけっこう多いんです。

コミュニティづくりの面では、ビル内のラウンジで入居者の懇親会を開き、同じ建物に暮らすテナント様どうしをつなげる取り組みもしています。また建物の構造においても、入居されている方々の間で交流が育まれるような場づくりを目指しています。例えば、共用のコーヒーマシンや冷蔵庫、コピー機など、多くの方々が使うものをスペースの中心に据えることで、偶発的な会話を促せないか? など、今後の開発に向けて現在も議論しているところです。

:「LINK-J」のイベントには多様な方々が参加されます。しかし、人類のより良い日々に向けて、前向きに、熱心に取り組まれていることは、どのような分野に携わられていても皆様共通しています。コミュニティを広げる上では、そんな共通の想いに共感いただき気軽にコミュニケーションをとっていただくことが大事だと思っています。

また先ほど、年に約120回のイベントを主催・共催していると申し上げましたが、このほかにLINK-J会員の皆様が自身で開催するイベントが700件ほどあり、それが日本橋が日々賑やかになっている根源であり、それがあるからこそ聖地が生まれると思っています。「LINK-J」ではこういった会員発のイベント開催もサポートしています。

企業の成長に欠かせないのは「場所」「人」「お金」
それをつなげられるのが「LINK-J」

―やりがいを感じる場面はありますか?

渡辺:企業の成長フェーズにあわせた不動産戦略を提供できたときは、大きなやりがいを感じますね。起業直後の企業では、いかにオフィスのコストを抑えるかが重要な課題の一つです。そのニーズに応えるために、私たちがある程度ご協力し、「先行投資」の意味で入居していただくことも多いんです。

起業初期の方々に喜ばれる設備の一つが、賃貸ラボ&オフィス事業の施設「三井リンクラボ」に用意した「共通機器室」です。三井リンクラボに入居した企業が顕微鏡のように分野を問わず使われる実験装置を共同で使える場所で、中にはかなり高額な機器も設置してあります。実験装置の中には、毎日ではなく一ヶ月に一回、半年に一回しか使わないものもあります。リソースの限られる企業では、そういった機器のために高額の資金を投じるのが難しい。したがって、「共通機器室があるから入居している」とおっしゃるテナント様が多くおられます。

このように私たちでご支援したあとに事業が拡大し、三井不動産のオフィスや賃貸ラボ&オフィスを借り換えてくださるケースが、事業を開始してから40件以上もありました。

:私たちは、イベントに参加された方々が前に進まれることを目指して毎日の業務に取り組んでいます。「イベントをきっかけに新しいビジネスが始まった」「人の採用につながった」といった声をきけると、やはり嬉しいですね。

若い企業の成長に欠かせないのは場所・人・お金だと言われます。そこで「LINK-J」では、メンターとなる支援者やベンチャーキャピタルの参画を募り、企業におつなぎしています。アクセラレーターとなる立場の方々にライフサイエンスビルシリーズに入居していただき、日本橋を拠点に企業を支援していただく仕組みづくりも実践しています。

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もっとできることがある!
日本橋という地から未来を築く

―新産業創造に向けて、今後チャレンジしたいことを教えてください。

渡辺:着任から3年経ち、テナントの数は着実に増えてきました。しかし、もっとできることがあるというのが部の共通認識です。

課題は、「入居企業の方々に、いかに本業に集中してもらうか」という部分です。不動産契約をはじめとする庶務・総務まわりのサポートはもちろん、研究環境の整備や資金調達プランニング、さらに人材紹介の面でも支援を手厚くしていきたいと思っています。

このプロジェクトに携わるようになってから、入居後の企業の成長まで考えられるようになり、考え方のスケールが大きくなりました。今後も「LINK-J」をはじめとする周囲の方々のサポートを得ながら、新産業創造というひとつの大きなゴールを目指していきたいです。

:イベントを通じてコミュニティを盛り上げ、コラボレーションを促進することは得意になってきました。今後は、LINK-J発のオープンイノベーション事例をさらに創出できるよう、より具体的な企業支援をしていくべきだと考えています。

このプロジェクトを担当して4年が経ち、産官学のプレイヤーの考え方、資金の流れ、スタートアップの皆様の状況、全体感がやっと見えてきました。三井不動産で不動産の開発だけをしていたら、接しなかったであろう話題に多く触れさせていただき、スポンジのごとく吸収する毎日です。今後も好奇心をもってプロジェクトに取り組み、日本橋の地からライフサイエンス産業の未来を築いていきたいと思います。

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