タクシー業界は今、大きな変革の時期にあります。地球環境問題やコロナ禍、デジタル化といった様々な変化に対応しながら、社会の移動ニーズに応えるべく日々進化しているのです。
そんなタクシー業界のリーディングカンパニーともいえるのが1939年に創業し、業界で初めて東京証券取引所に上場した「大和自動車交通」です。手厚い研修制度と給与保証で積極的な人材採用を進める同社は、タクシー業界の未来をどのように描いているのでしょうか。
大和自動車交通の代表取締役社長、大塚一基氏にタクシー業界の現状と課題、未来に向けてのお話を伺いました。
まもなく創業85年! タクシー業界のリーディングカンパニー
――はじめに、大和自動車交通について教えてください。
大和自動車交通は1939年に中野相互自動車として設立され、1945年に現在の社名となりました。現在はタクシー業界で唯一の東証上場企業として、業界のリーディングカンパニーの役割を担っています。
――創業者である新倉文郎氏は、“日本のタクシー業界の父”とも呼ばれていますね。
たしかに新倉文郎が日本のタクシー業界で果たした功績は、非常に大きいものがあります。今でこそタクシー事業を始める際には政府の許可が必要ですが、戦前の業界黎明期は許可制ではなかったため、自由にタクシーを走らせる人が増えすぎて混沌とした状態にありました。
新倉文郎はタクシー業界でいち早く労働組合を設立したり、戦時中にはほかのタクシー会社がなくならないよう便宜を図ったりと、業界全体を「和」の精神でまとめ上げていきました。大和自動車交通の「大和」には、そうした新倉文郎による「和」の精神が込められているのです。
――今も新倉文郎氏の精神が息づいているのですね。
“人の和”を大事にしながら堅実に本業に取り組むという企業文化は、大和自動車交通の伝統といえます。当社は高度経済成長期においても無理に他事業を展開せず、本業に注力してきました。だからこそ、その後のバブル崩壊などの危機も乗り越えてこられたのだと思います。
タクシー業界が抱える現状と課題とは
――創業以来、タクシー業界を牽引してきた大和自動車交通ですが、大塚社長は現在タクシー業界をどうご覧になっていますか。
ポジティブな感覚と危機感の両方を持っています。ポジティブな面としては、タクシーの需要がますます高まっていることです。コロナ禍の真っ只中は本当に厳しい状況でしたが、今では訪日外国人も少しずつ戻り、「移動」へのニーズが一気に増えてきています。
一方で、そうした需要に応えられる体制が整っていないのが大きな課題です。様々な業界が人手不足に苦しんでいますが、タクシー業界も例外ではありません。乗務員のなり手が不足しており、なかなか先が見通せない状況です。
特に当社の営業職である乗務員という仕事は、誰にでもできるわけではありません。お客様を乗せて走るということは、その間の命を預かっているということです。法的にも様々な制限がありますし、精神的にもタフさが求められる仕事です。
経験が少ないうちは仕事をハードに感じたり、乗務員は一人の仕事なので孤独を感じることもあるでしょう。
だからこそ、通り一遍の研修ではなく、いつでも気軽に相談できる研修体系をつくりました。この研修体系は、特に社会経験が少ない新卒社員から好評です。
――どのような研修を実施されているのですか。
新卒の乗務員に対して半年間の手厚い研修を行っています。
具体的には、運転技術はもちろん、営業のノウハウ、トークスキル、トラブルがあったときのカバーのやり方、さらに孤独を感じさせないようなバックアップまでしっかりと行った上で、一人前に育て上げてから現場に送り出しています。
また、研修を行うのはトップレベルの営業職の現役先輩乗務員です。4月から半年間講師として研修を行って、10月からは彼らもまた営業として現場に戻ります。
この取り組みを始めてから、当社では顕著に退職者が減りました。スキルだけでなく、同僚同士や先輩との絆が深まるからかもしれませんね。同期同士が、仲間意識を超えて家族意識が芽生えるのか、本当に仲の良さを感じます。
――新人が定着しやすいような環境を作っているのですね。
環境だけでなく、待遇面についても手厚くしています。乗務員は歩合制なので、一般的には営業がうまくいかないと給与が低くなってしまうイメージがあるかもしれません。
当社では最低給与保証制度を設けており、研修中でも十分な給与が受け取れます。実際には研修を終えた乗務員は新人でもすぐ最低保証以上の給与をもらっているケースが多いので、2年目で年収600万円を超えることも珍しくありません。
当社は創業時から「社員は宝」として、大切にする文化が根づいています。その表われとして、社員の育成にも力を入れています。乗務員は営業として稼ぐことが仕事です。この目標が達成できずに退職につながってしまうような環境では、未来はありませんからね。
――乗務員を希望して入社される方の傾向も変わってきたりしているのでしょうか。
ここ数年、とくに増えてきたのは「社会インフラに関わりたい」とか「社会的な貢献をしたい」といった志望理由で入社する人ですね。たしかにタクシーは人々の移動を支える点で社会インフラの1つといえますし、社会貢献にもつながると思います。
それを志望動機として入社する人が増えたというのは興味深い傾向だと感じています。昔でしたら「運転が好き」とか「給与が高いのが魅力」などの志望動機がほとんどでしたから。
それに新卒の場合は一定期間、営業職として乗務員を経験した後に、本社スタッフで活躍していただくことも増えてきたので、「タクシー会社で働く=乗務員になる」というイメージも変わってきているようです。
――もしかしたら、コロナ禍で移動が制限された経験から、「移動」や「タクシー」の意義について考える人が増えたのかもしれませんね。
そういった多様な価値観を持った方がタクシー業界を志望してくださるのはうれしいことですね。
タクシーは社会に欠かせない「移動」を担う交通インフラ
――ほかにも昔と比べてタクシー業界が変化したところはあるのでしょうか。
やはりデジタル化の波は大きいですね。アプリでタクシーを呼ぶシステムや、キャッシュレス決済などデジタル技術の進展はめざましいものがあります。自動運転も注目されており、当社でも企業や大学と協力しながら実証実験を進めています。
なぜこうしたDXを積極的に進めているのかというと、私たちタクシー会社の使命の1つとして、自身で運転・公共交通機関の利用が難しい方などへの社会貢献があると思っているからです。特に過疎化が進んでしまっている地域では、民間事業者による交通サービスの提供が難しくなりつつあります。このまま交通手段の選択肢が減少して移動できる場所が限られてくると、その地域の経済、文化などが衰退しはじめ、いずれ日本全体も衰えてしまうでしょう。
そうならないために、今はデジタル技術をはじめとするリソースをフルに活用し、より利益を上げられる基盤を固め、そのノウハウ、資金を活用して過疎化が進む地域に需要に合った交通サービスを提供していかなければならないのです。これが大和自動車交通が将来に向けて果たすべきミッションです。
――社会的な貢献にもつながるやりがいのある仕事ですね。
もちろん、そういった視点だけでなく、シンプルに「お金を稼ぎたい」という志望理由で入社していただいてもぜんぜん構いませんよ。「やりたい事」「夢」があって、そのための資金を自身の手で作りたい、という人も多くいます。乗務員として営業職を長く続ける道もあるし、短期間で資金をためて方向転換する道もあるし、会社の中の職種を変える道もあります。
――就職先としてタクシー業界を検討されている方にメッセージをお願いします。
タクシー乗務員は決して単調な仕事ではありません。一言でいえばお客様を乗せて目的地までお送りする業務ですが、その役割を自分自身でどのように捉えるかによって見えるものは違ってきます。そこに面白さがあり、奥深い仕事です。
タクシーとほかの交通機関の最大の違いは、タクシーを利用される方には“困っている人”が多いということです。電車では間に合わなかったり、ほかに交通手段がなかったりと、困っているときにこそタクシーの必要性は高まります。そういった意味では、タクシーはお客様の人生を変えうるかもしれない仕事だといえます。
乗車されたお客様の人生に関わり、もしかしたらとても大きなことの手助けをすることになるかもしれない。そんなやりがいのある仕事はなかなかないと思いますよ。
“大和自動車交通”ってどんな会社? 現場社員にも聞いてみた
タクシー黎明期からリーディングカンパニーとして業界を牽引してきた大和自動車交通。創業者によって培われた「和」の精神は今も企業文化として引き継がれており、働きやすい職場環境が整っています。
実際に大和自動車交通で働く社員の皆さんは、会社についてどう感じているのでしょうか。現場社員の皆さんに聞いてみました。
――大和自動車交通で働くことの魅力はどこにありますか。
会社の人たちがとても優しいことです。就活時代にいろいろな会社の説明会に参加しましたが、大和自動車交通が一番優しくて丁寧に教えてくれました。
大和自動車交通はチームワークに秀でた組織だと思います。何か問題が起きたとき、一人で背負うのではなく皆で相談しながら解決していこうという社風があります。そこが当社の魅力だと思いますね。
――乗務員として働くことで得られるスキルや経験は何でしょうか。
タクシーの営業職は、ほかの営業職よりも圧倒的に多くの人と関われる仕事です。そこから、コミュニケーション能力や人を見る目など、サービス業として大切なスキルを養えました。また、「稼ぐ」というミッションに対する営業戦略を自分なりに立てるなど、戦略的思考も身についたと感じます。あとはお客様には本当に色々な方がいらっしゃいます。そういった方々とお話することで、業種や職種を問わず多くの知識や学びを得られるのも良いところです。
営業職を経験した後、営業企画や総務など内勤で働く人もいます。もし将来的に職種を変える場合でも、乗務員の経験は活きてくるはずです。やはりタクシー会社の事業の根幹はタクシーであり、現場だからです。
――就職活動中の読者にメッセージをお願いします。
就職活動をする中で、やりたいことがなかなか見つからなかったり、うまくいかなかったりといった悩みを抱えている人も多いと思います。当社で最初に経験する乗務員は一般的な企業でいう営業の仕事であり、すべての仕事の基礎となる対人スキルを学べます。ほかの業界よりも高い水準の給与をもらえて、なおかつ休みもとりやすいので自分の時間を持つこともできます。やりたいことを探しているという方にこそ、乗務員をおすすめしたいです。
これからの時代、「移動」の課題は一部の地域だけでなく日本全体の問題になっていくと思います。その課題解決に一緒に取り組んでいけるような、そんな方にぜひ入社していただけたらうれしいです。
――皆さん、本日はありがとうございました。
[PR]提供:大和自動車交通