コロナ禍は、日常を大きく変えてしまいました。デジタル化やオンライン化、社会理念や価値観の変容などが急速に進み、新たな生活様式への適応が急務に。今後、変化のスピードは加速度的に増し、さらに予測困難な時代を迎えるといわれています。
そんな未来を生きる子どもたちが自らの人生を切り開いていくには、どのような力や学びが求められているのでしょうか?本連載は、一人ひとりの可能性を追求し、その能力を最大限に伸ばす「KUMON」の提供でお送りする企画「KUMON FUTURE LAB」。各分野のフロントランナーに密着取材します。
第5回は、次世代デバイス開発の研究者・松久直司先生にお話をうかがいました。
好きだからこそ
誰よりも汗をかくことができる
━━本日はよろしくお願いいたします!松久先生は研究者としてご活躍ですが、どのような力が役立っていますか?
試行錯誤する力ですね。好きなことに忍耐強く取り組むことができるのは、自分の強みと自負しています。 スタンフォード大学在籍中も「いつも直司は実験室にいるね」と他の研究員から言われるくらい没頭していました。 |
━━試行錯誤する力は、どのようにして育まれたのでしょうか?
まずは、やっていることを好きになることです。好きだからこそ、誰よりも汗をかくこと、地道に努力を積み重ねることができる。 苦手なことを続けるのはつらいですからね(笑) |
━━手を動かして実験を繰り返してきたからこそ、電子工学分野における画期的な新技術を開発できたのでしょうか?
そうですね。私は電気を流すゴムや電子材料について研究しているのですが、そもそも「ゴムは電気を流さない」という常識がありました。研究を始めた当初は情報がなく、調べてもわからないことばかり。自分で試行錯誤するしかありませんでした。 「電気を流すゴムができたら、おもしろい!」という気持ちがあったので、諦めず、手を替え品を替え取り組み続けたことが成果につながったのだと思います。 |
━━まさに試行錯誤する力が実を結んだんですね。その探求心の源泉はどこにあるのでしょうか?
アマチュア無線にのめり込んでいた父親の影響で電子工学に興味を持ち始めたのですが、子どもの頃から家電を見に行くのが好きでした。当時は、テレビがブラウン管から液晶に変わったり、携帯電話が折りたたみ式になったりしていた時期。 こうした技術革新を間近に見ているうちに「最新の電子デバイスを作りたい」と思うようになりました。 |
━━子どもの頃の素直な感情が松久先生の力の源泉なのですね。一方で、今の子どもたちにとっては、どのような力が必要だと思われますか?
今の時代は情報があふれていますので、取捨選択する力が求められるのではないでしょうか。 どの情報にもバイアスがかかっていることを認識したうえで、自分にとって必要なものを見抜いていく。そうしないと、強い意見に流されてしまって本質を見失いかねません。 |
━━情報を正しく取捨選択できないと、試行錯誤もうまくいかないように感じました。ちなみに、情報を取捨選択する力を身につけるには、どうすれば良いのでしょうか?
日頃から客観的な情報と主観的な意見を見極めるように心がけることです。例えば、論文でも「この材料は、こういうメカニズムで導電性がある」と書いてあったりするのですが、根拠となるメカニズムの実証データが無いことが結構ありまして。 こういうときには「導電性がある」という事実だけをピックアップするようにしています。 |
「自分は勉強が得意」と思えた
アウトプットを反復する自学自習の利点
━━松久先生は東大のご出身で、6回受験した東大模試がすべてA判定だったとお聞きしています。どのような学習方法を実践されていたのでしょうか?
ひたすら問題集を解き、自分の理解度を確かめるというのが主な学習方法でした。速く解くことも意識し、受験勉強では同じ問題集を擦り切れるまで反復していましたね。 知識をただインプットするよりも、アウトプットすることに重きを置いていました。 |
━━アウトプットを反復する学習方法の利点はどのあたりにあると思われますか?
一番の利点は、理解できているかどうかがすぐにわかることですね。教科書を2時間読んだとしても、そこに書かれている知識が身についているかどうかはわかりません。ただ、実際に解いてみてチェックすれば、それが一目瞭然になります。 あと、解くスピードがどんどん上がっていくのも、反復学習を取り入れる利点。他の人よりも計算が速かったのは、高校や東大の受験でも多くの問題を速く解く必要があったので、有利に働きました。 |
━━松久先生は、幼少期から小学6年生まで、公文式教室に通っておられたとお聞きしております。KUMONでは一人ひとりのレベルに合わせた教材が用意されていて、それを自分の力で解いていく学習方法なので、アウトプットを反復する自学自習のスタイルが自然と習慣になっていたのかもしれませんね。
ちなみに、今、松久先生は先進的な研究をされていますが、基礎学力は欠かせないものだとお考えですか?
そうですね。私たちの研究でも、研究成果をデバイス開発に実装する段階では電子工学や生体測定といった知識が不可欠です。 何をやるにも基礎学力は欠かせません。 |
━━基礎学力を高めるうえで、松久先生の場合はどういった学習法を実践し、その実践方法では、どのような点が良かったと思われますか?
簡単な問題から徐々に取り組む学習を行いました。小さな成功体験を積み上げることで「自分は勉強が得意なんだ」と思えたことは良かったと考えております。 また、正解するたびに親や先生に褒めてもらえましたし、特に算数・数学が得意だったのですが、そうなるとますます好きになってモチベーションが上がり続け、気づけば数式の虜になっているほどでした(笑)。車のナンバープレートを見て、2桁の掛け算をしたり、それが素数かどうか考えたりするなど、数字を見たら思わず計算してしまうのが日常になっていましたね。 |
━━日常生活の中で勉強する癖が身についていたんですね。
これは研究にも通じますが、思考時間が物をいう部分も多分にあります。 実際に手を動かすことに加えて、それ以外の時間にどれだけ考えられるか。寝ているときにアイデアが思い浮かぶことがありますが、それはずっと思考しているからだと思います。 |
子どもが「好き」や「得意」を見つけられるサポートを
モチベーションを上げてあげることが何より重要
━━松久先生は、どのような教育が理想だと思われますか?
個人によって最適な学習方法は異なります。先生に丁寧に教えてもらうのが向いている子どももいれば、YouTubeなどの動画コンテンツを視聴しながら自習するのが向いている子どももいるかもしれません。 一律に一つの方法を押しつけるのではなく、誰もが有意義に学習できるよう、一人ひとりに合った教育が提供されるのが理想だと思います。 |
━━最後になりますが、これからの時代を担う子どもたちを育てる親世代に向けてメッセージをお願いいたします。
とにかく、興味を持ったものにチャレンジさせてあげるといいでしょう。いろいろやってみないと、子どもは「自分は何が好きで何が得意か」がわかりません。きっかけは、些細なことだったりします。 私も研究者になろうと思ったのは、アニメ『ちびまる子ちゃん』の歌で『エジソンは えらい人』というフレーズを聞いたのが最初でしたから(笑) |
それと、「好き」や「得意」を見つけた子どもをしっかり褒めてあげて、続けたいと思えるようなサポートを親はすべきかなと思います。子どものモチベーションを上げてあげることが何より重要。 私にも子どもがいて、あれこれ言いたくなってしまうのですが、子どもには好きなこと・興味をもてることを自分で見つけられるような環境をつくるように心がけています。 |
━━子どもたちが自分自身の「好き」や「得意」を見つけたときに、それらに取り組むモチベーションを支えてあげることが大事なんですね。松久先生、本日は貴重なお話、ありがとうございました!
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予測不可能な未来だからこそ、どんな時代でも自ら考えて「生き抜く力」と、それを育むための「学習」を。「KUMON」は、教室でも自宅でも、一人ひとりの可能性を追求し、その能力を最大限に伸ばし、未来の可能性を広げられる場所を提供します。
公文式学習とは?
学年に関係なく、一人ひとりの力に合った教材を指導者が選定し、生徒が自習で教材を解いていくスタイルの学習。指導者は生徒に「答えを教える」のではなく、生徒が「自分で解けた」という状態へと導く。また、結果だけではなく、行動や努力といった過程についても「具体的にほめてあげる」ことを大切にしている。自分で解ける状態になるまで反復練習するため、次のステップに進んでも自力で挑戦できる。その結果、「自習力」「学習習慣」「ものごとを粘り強くやり抜く力」「集中力」「自分で考える力」「自己管理する力」などの「力」が身につき、学年を越えた未習の内容も自習で解けるようになるといった特長がある。
[PR]提供:公文教育研究会