協議離婚がうまくいかず話がまとまらない場合、裁判所を介して離婚の話し合いを進める離婚調停の申し立てを検討することになります。
離婚調停に臨むにあたって、調停委員からの質問にしっかりと答えられるよう、準備をしておく必要があります。
最初の調停日に聞かれる質問は、ほぼ決まっていて、そのときの回答をもとに個別の内容を聞かれることになります。自宅で事前に練習しておくと良いでしょう。
離婚調停とは?
離婚調停とは、家庭裁判所において夫婦が夫婦間の問題について話し合う手続きのことです。正式名称を「夫婦関係調整調停」と言います。
調停なので家庭裁判所の調停委員が間に入って話を進めてくれます。 相手と直接顔を合わせずに済むので、離婚問題のように感情的になりやすい問題でも、お互いが感情を抑えて冷静に話をしやすいです。
ただ、離婚調停はあくまで話合いの手続きなので、調停員から何らかの結論を強制されることはありません。
話し合いによってもお互いが合意することができなければ、調停は不成立になって終わります。 その場合には、離婚訴訟をしないと離婚できません。
法律上の離婚原因がなくても離婚できる
離婚調停では夫婦の双方が離婚することに納得したら離婚ができるので、法律上の離婚原因がなくても離婚できます。
また、金銭支払いなどについても裁判所が金額を決定するわけではないので、当事者が自由に金額を定めることができます。 通常の相場より高額にすることも低額にすることもできますし、支払い方法も一括だけではなく分割払いなどもできます。
このように、離婚調停は、家庭裁判所で行われる手続きではありますが、当事者が話し合いによりその希望によって柔軟に離婚条件等を決定することができます。
離婚調停の流れ(進め方)は?
離婚調停の申し立て方法
離婚調停の申し立てを行った後、手続きはどのような流れで進んでいくのか、ご説明します。
離婚調停は、おおまかに分けると下記の4つの流れで進んでいきます。
- 調停の申立
- 一回目の調停
- 二回目の調停(調停終了まで続く)
- 離婚調停の終了
離婚調停の申し立て~調停期日の通知
調停申立書が受け付けられると、しばらくして自宅宛に裁判所から期日の通知書が届きます。
そこには、第一回の調停期日の日程と時刻が書いてあります。
同じ頃、相手にも期日の通知書が届いています。
一回目の調停
第一回の期日に行くと、通常は相手も来ています。
相手とは別々の待合室で待機することとなり、調停委員から、互い違いに呼出を受けます。 別々のタイミングで呼び出されるので、裁判所内で顔を合わせる心配もありません。
こちらの意見は、調停委員を通じて相手に伝えてもらいますし、相手の意見は調停委員を通じてこちらに伝えられます。
このように、伝言ゲームのような形でお互いが話し合いをすすめるのが主な調停手続きです。
一回の調停期日は、平日の午前または午後の2~3時間程度であり、その日に合意ができなければ、次回の期日が入れられます。
調停は月1回程度、3~6回くらいで終わるのが一般的
調停は、月に1回程度開かれるのが標準的です。
回数については、ケースによって異なりますが、だいたい3回~6回くらいで終わることが多いです。
調停成立後、調停調書を役所に提出して手続き完了
調停において、夫婦双方が合意できると、その内容で調停が成立します。
すると、後日自宅に調停調書が届くので、それを役所に持っていったら離婚届ができます。
金銭支払いを約束した場合には、その内容にしたがって支払いを受ける(行う)ことになります。
離婚調停を行う6つのメリット
では、離婚調停をすると、何かメリットはあるのでしょうか? 以下で、順番に見てみましょう。
相手と顔を合わせないので冷静に話ができる
離婚調停のメリットとして、まずは相手と顔を合わさないので冷静に話を進められることがあります。
夫婦が自分達で話をしていると、どうしても感情的になって、話を進めるのが難しくなりがちです。 必要な離婚の取り決めができず、単なる喧嘩になってしまう例もあります。
そこで、離婚調停をすると、調停委員を介する形になるので、相手と直接話をしません。 まったくの第三者が間に入るので、お互いが感情的になりにくく、話を進めやすくなります。
柔軟に解決できる
離婚調停の良い点は、裁判所を利用する手続きではありながら、柔軟に解決ができる点です。
訴訟になると、裁判官が法的な観点から何もかも決定してしまうので、硬直的な判断になりますが、離婚調停なら当事者が自由に決められます。 当事者同士の話し合いを、調停委員が手伝ってくれる、という程度のイメージです。
離婚原因がなくても離婚ができますし、相手に有責性がなくても多額の離婚解決金を支払ってもらうことなどもできます。
財産分与の割合も、2分の1ずつにこだわらず、自由に分け合うことができます。
調停委員が間に入ってくれるので、相手と対等に話ができる
夫婦が離婚の話合いをするとき、DV事案などのケースでは、被害者側はかなり不利になります。
このような場合、妻が離婚話を持ち出したら、それだけで夫による激しい暴力が始まったりしますし、モラハラ事案でも、妻が離婚したいというと、夫が延々と説教をはじめて一切離婚話が進まなかったりします。
このように、夫婦が自分達で話しあうと対等に話ができない事案では、離婚調停を利用するメリットがあります。
調停では、調停委員が間に入ってくれますし、法的な知識を持った裁判官が関わってくれるので、適切な方向で話を進めることができます。
離婚条件を漏らさず取り決めできる
離婚調停をすると、離婚に必要なことを漏らさず取り決めできるメリットがあります。
夫婦が離婚するときには、離婚だけではなく子どもの養育費や慰謝料、財産分与、年金分割など、いろいろな取り決め事項があります。
ただ、協議離婚するときには離婚と親権者だけ決めれば良いので、その他の条件が無視されることがあります。
そうなると、離婚後にそれらの話合いが必要になり、紛争が蒸し返されてしまうのです。
ここで、離婚調停を利用すると、通常はそのケースで必要な財産分与や慰謝料、養育費などの問題をすべて一緒に決定することになるので、漏れが発生しません。
調停調書が作られるので、強制執行などの効果がある
離婚調停によって合意が成立したら、調停調書が作成されます。
調停調書は裁判所で作成される文書で、強制執行力を持っています。強制執行力とは、差押えをするための効力、ということです。 つまり、調停調書があると、相手がその内容にしたがった支払をしない場合に相手の給料や財産を差し押さえることができます。
協議離婚の場合、慰謝料や財産分与の支払いを相手と合意しても、それを単なる離婚合意書にしかしないケースが多いです。
そうなると、相手が約束とおりにお金を支払ってくれない場合、すぐに差押えをすることができません。 まずは訴訟や調停をして、合意を成立させるか判決をもらってからでないと、強制執行はできないのです。
調停や訴訟をしている間に相手が逃げてしまったり財産を隠してしまったり、自己破産してしまったりするおそれもあります。
これに対し、調停離婚によって調停調書が作成されていたら、すぐに強制執行ができるので効果的に支払いを受けることができます。
DV事案の場合には配慮してもらえる
離婚調停では、相手からDV被害を受けていた事案などでは特別の配慮をしてもらうことができます。
通常のケースの場合
通常のケースでは、調停委員が1つの部屋で待機しており、当事者はそれぞれ別の部屋に待機して、それぞれが入れ替わりで調停委員の部屋に出入りして話を進めることになります。
この方法でも、通常は相手と顔を合わせずに済みます。
DV事案の場合
通常のケースと同様の方法をとると、DV事案の場合などには、相手が待合室に押しかけてきて暴力を振るうおそれなどがあります。 また、裁判所の帰りに後をつけられて、家がバレてしまうかもしれません。
そこで、DVなどの特殊事案においては、当事者それぞれが別々の部屋に待機していて、調停委員が移動する形にします。
そうすると、廊下などで相手とすれ違うこともありませんし、相手が押しかけてくることもありません。 また、行きや帰りの時間もずらしてもらうことができます。
離婚調停のやり方を事案に応じて工夫することで、DV夫(妻)による帰り道での尾行や追跡・自宅特定などを防止することができます。
離婚調停で当日に必ず聞かれる5つの質問
【Q1】「2人の出会いや、結婚した経緯は?」
“別れることを説明するためのなれそめ”なので、楽しかった日々を長々と語る必要はありません。
出会いのきっかけや結婚までの経緯を、あくまでも離婚の話へとつなげるプロローグとして話しましょう。
【Q2】「なぜ離婚を決意したのですか?」
調停の話し合いの根幹となる部分です。
離婚を決意するに至る道筋を話し、「本当は離婚せずに頑張ろうと思っていたけれど、どうしてもできなかった」という気持ちが伝わるように語りましょう。
離婚に至る道筋が走馬灯のように脳裏にイメージできるように、わかりやすく話すことが大切です。
ただし、感情がこもり過ぎて滔々と話し続けてしまうのはNG。あくまでも調停に必要なことを端的に話す姿勢が求められます。
【Q3】「夫婦関係が修復できる可能性はありますか?」
離婚するほどの一大事に見舞われながらも、二人の関係をなんとか修復しようと努力したということが、調停委員に伝わるように話しましょう。
たとえ不貞やDVなどの事実があったとしても、「だからすぐに離婚を決めた」というのでは、説得力がありません。
“夫婦関係を修復するようにここまで努力したけれど、やはり駄目だった”という努力の軌跡が、調停委員の心を動かします。
【Q4】「現在の夫婦生活の状況は?」
いまの夫婦生活の現状を、ありのままに伝えましょう。 恥ずかしいからといって取り繕ったり、ごまかしたりしないことが大切です。
調停委員は、調停が終わればもう会う必要もない相手です。
調停委員自身も、修羅場の話は毎日のように聞いているので、「こんなことを言ったら驚くかもしれない」と思うようなことを言われても、ビクともしません。
言いづらいような内容もあるかもしれませんが、調停で勝ち抜くためにも、オープンにすることが大切です。
【Q5】「財産分与・親権・養育費・慰謝料などに対する考えは?」
財産分与をどうするか、親権は誰がとるか、養育費や慰謝料はいくら欲しいか、婚姻費用はいくら必要かといった内容は、離婚調停のメインテーマともいえる部分です。
自分の意思をはっきりと示し、「養育費は月に6万円欲しい」「自分が親権をとって子どもを育てたい」といったように、具体的に伝えましょう。
離婚調停の説明で効果的な離婚理由
「離婚すべきか否か」離婚理由は調停委員の印象に大きく影響する
離婚調停は、調停委員という第三者が離婚しようとしている夫婦の間に入り、アドバイスをしながら離婚すべきかどうか検討していく手続きです。
この手続きでは夫婦の話し合いに調停委員も参加するという形になるため、調停委員から夫婦関係について詳しく聞かれることになります。
このうち、手続きの最初に調停委員から聞かれる事項として最も多いのが、離婚理由についてです。
なぜなら調停委員が離婚理由を聞き、明らかに離婚すべきだと印象を持った場合、財産分与など離婚に向けた決着をどうつけるのかに重点が置かれてきます。
他方、離婚すべきではないという印象を持った場合、修復に向けてどうしていくべきかという事項に重点が置かれてくるのです。
法定離婚事由に該当している事実があると効果的
あなたが離婚したいと思った理由はいくつかあるかもしれません。その中で、離婚事由に該当する理由はあるでしょうか。
離婚事由は、民法770条に列挙されており、具体的には
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 生死が3年以上明らかでない
- 強度の精神病にかかり回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
を指します。
離婚調停では、上記の離婚事由に該当する旨を説明できると効果的です。 これらの離婚事由について詳しくは下記のページで解説しています。
まとめ
離婚調停をスムーズに進めたいなら弁護士に相談を
日本では協議離婚が多いとは言っても、離婚するために調停が必要になることは多いです。 このような場合、自分に有利になるように離婚調停をすすめるには、弁護士に対応を依頼する必要があります。
弁護士に調停を依頼したら、面倒な手続き関係をすべて任せることができますし、間違った判断をすることもなく、不利になることもありません。
DVやモラハラなどの事案で相手に対して恐怖間を持っているときにも、弁護士が味方になってくれていたら安心感が強いです。 弁護士がついていると、調停委員も話を聞いてくれやすいですし、依頼者のストレスも軽減できます。
このように、離婚調停をスムーズにすすめたいなら、弁護士に対応を依頼することが大切です。
今、夫婦間の問題を抱えていて離婚調停をしようと思っている人や、すでに離婚調停が始まっていて対応に悩んでいる人は、一度、お早めに弁護士に相談してみることをおすすめします。
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