自己破産をすることで、借金の金額がどれだけ多くても法的な支払い義務がすべて免除されます。

しかし自己破産はこの多大なメリットのせいか、それ以上デメリットがあり、自己破産すると人生を棒にふる、すべてが終わる、などといったイメージを抱いている方もいますが実際はそうではありません。

そこで今回は自己破産のデメリットについて詳しく解説した上でメリットも紹介し、自己破産が本当はどういった手続きで、終えた後はどうなのかについても説明していきます。

「そもそも自己破産ってなに? 」という方は先に以下の記事をご覧下さい。

自己破産とは? 詳しくはこちら>>

自己破産をすると起きるデメリットとは?

自己破産のデメリットは、おおまかに以下の通りとなっています。

デメリット1.数年間は新たな借り入れができない

自己破産すると、その事実が個人信用情報機関に事故情報として記録されます。いわゆるブラックリスト、ブラック状態などと呼ばれ、クレジットカードや住宅ローンなどの審査に通ることが困難になってしまうのです。

今まで借り入れが癖になっていた方にとっては、多大なデメリットになり得ます。

事故情報はいずれ抹消される

とはいえ、この事故情報はいつまでも残ってしまうわけではなく、期間経過によって抹消される取り扱いです。個人信用情報機関によっては抹消までの期間を規定内に明示していないため確実ではありませんが、免責決定からおおよそ5~7年程度で抹消されます。

事故情報が抹消されれば、自己破産していない方となんら変わりありません。

デメリット2.保有財産が処分されてしまう

自己破産すると、自身が保有する財産が処分されてしまいます。処分の対象となる財産は、時価で20万円以上の価値がある財産です。自宅や自動車といった高価な財産、その他、解約返戻金が20万円以上となる生命保険や学資保険なども対象になってしまうため、積み上げてきた財産が多くある方にとって、保有財産の処分は多大なデメリットと言えます。

20万円未満であれば問題なし

しかし、捉え方を変えれば時価で20万円未満であれば保有可能ということ。

自宅といった不動産はどうしても高額になってしまうため保有継続は困難と言わざるを得ませんが、車であれば20万円未満の中古車も出回っていますし、解約返戻金さえなければ保険類も解約までしなければならないといったわけではありません。

もちろん生活必需品である家具家電などは、法律上差押えを禁止される財産であることに加え、多くの場合で20万円未満(使用している以上中古品なので買値で売れることはまずない)になるので生活に困ることもありません。

自己破産しても残しておける財産>>

デメリット3.家族にバレる可能性がある

ご安心していただくために説明をすると、自己破産は家族に知られずに行うことは可能です。というのも、そもそも身内に対する調査が行われることはありませんし、仮に弁護士に依頼するのであれば債務者自身が裁判所に赴いて何か手続きをしなければいけないのは審尋のタイミングのみだからです。

しかし地方裁判所によっては同居している家族名義の資料(通帳や保険証券など)を提出しなければならないという運用のところもあります。家族に秘密で資料を集めることが難しいケースもあるでしょうからそのようなときは家族に正直に事情を話しておいた方がよいでしょう。

また、仮に知られてしまったとしても何か法的に悪影響が生じることはありません。お子さんがいらっしゃる場合にはその影響も気になることかもしれませんが、こちらも法的に影響があるわけではありませんのでご安心ください。

デメリット4.保証人に迷惑がかかる

また、自己破産をすると保証人や連帯保証人への請求は免れません。そうなれば当然、相手とこれまで築いてきた関係は悪化するかもしれません。

額が大きくなかったり保証人に経済的な余裕があれば良いですが、実際はそのどちらかを満たしていないケースが多く、連鎖破産に繋がるパターンもあります。

そうなれば相手の人生をも狂わせることになってしまいます。自己破産を検討した場合、視野に入れた時点で保証人に事情を話し、謝罪をする必要があるでしょう。

デメリット5.職業・資格が制限されてしまう

自己破産すると、一部の職業・資格が制限されてしまいます。 おおまかには以下の通りです。

制限される職業・資格一覧

証券会社外務員、旅行業者、宅地建物取引業者、建設業者、不動産鑑定士、土地家屋調査士、生命保険募集人、商品取引所会員、有価証券投資顧問業者、警備業者、風俗営業、質屋、弁護士、司法書士、弁理士、公証人、公認会計士、税理士など。

制限されるのは手続き中のみ

とはいえ、制限されるのは自己破産の手続き中のみです。

具体的にいえば、裁判所への申立後から免責決定(借金が免除になる決定)が確定するまでの期間となっています。自己破産の申立内容によっても期間は多少前後しますが、一般的には3ヶ月~半年程度で制限は解除されるのでご安心ください。

よく制限の中に公務員が入っていると勘違いされがちですが、公務員は自己破産による制限対象には入っていない点も覚えておきましょう。

デメリット6.個人年金等を受け取れなくなる可能性がある

公的年金や企業年金、公的年金などは法律上で「差押禁止財産」に分類されているため、自己破産をしても差し押さえされることはありません。

ただ個人年金型の保険を積み立てている場合、解約返戻金の金額が大きいときは解約して返済に充てられることがあります。

デメリット7.自己破産すると自動車が処分される事がある

自動車の扱いは、ローンの支払い状況によって区別して考える必要があります。

まず、自動車のローンが現在も支払い中の場合で、ローン会社が完済まで自動車の所有権を保有する特約があるとき(「所有権留保」といいます)は、自動車の時価評価額が査定された結果、引き取られることになります。ローン残額については、破産手続の中で処理されることになります。

次に、自動車のローンが完済されている場合は、査定額によって扱いが変わることになります。

例えば所有されている自動車が古いもの(一般的な国産車であれば、初度登録から10年を経過しているかどうかが一つの目安になります)であるのならば査定額が0円になることもあるでしょうし、とすれば換価手続きに進むべき財産とは評価されませんので、そのまま所有を続けることができます。

他方、まだ比較的新しい自家用車であるのならば、査定額によっては換価し債権者への配当原資とすべきと判断されることもあるでしょう。

この場合、一定の事情(例えば、自動車がなければ通勤が不可能になってしまう等。)が認められない限り、自家用車を手放さざるを得ないことになります。生活や仕事に必要である事情があり、なおかつ自動車の査定価値がさほど高額でないケースであれば、自由財産制度により保有し続けられる場合もあります。

デメリット8.自己破産すると持ち家を失う

持ち家についても、自家用車と同様の問題が生じますが、基本的には手放さざるを得ないのが実情です。ローンの抵当権が残っているのであれば、基本的に換価処分されることになるでしょう。

ローンが残っていない場合、評価額がかなり低いとか買い手がつきにくいという特殊事情があるときには手元に残すことはできますが、そのように判断されるケースは限られています。

なお、換価処分の対象となった場合でもすぐに持ち家から退去しなければならないというわけではありません。抵当権者とも相談することになりますが、引っ越し先を探すために必要な期間については、待ってもらったりすることができますのでご安心ください。

持ち家を処分できないご事情がある場合には、自己破産以外の債務整理方法、例えば民事再生なども検討すべきでしょう。

民事再生手続を選択した場合、住宅資金特別条項という、住宅ローンだけは全額払い続け、その他の借金を減らすという特例を活用できる場合があります。弁護士に相談してみましょう。

デメリット9.官報に掲載されてしまう

みなさんは官報をご存じでしょうか? 実は自己破産すると官報に掲載されてしまうというデメリットがあります。

官報とは国が刊行している新聞のようなもので、法改正があった際の公示や破産や相続などに関する裁判所の公告内容が掲載されていて、行政機関の休日以外は毎日発行されています。 ここに自己破産の事実が住所氏名とともに掲載されるのです。

官報なんて誰も購読していない

しかし、ほぼ毎日にように発行されているというのに、読んだことがある方はほとんどいないのではないでしょうか。官報というのは購読に料金もかかりますし、記載される内容も一般の方にとってはほとんど関係ないものばかりなので、購読している方はほとんどいません。法律実務に通じている弁護士や司法書士といった専門家でさえ、官報を毎日のように購読している方なんていないのです。

ということは、自己破産の事実が掲載されたところで、周囲に知れ渡る心配などほとんどないということ。そこまで恐れるデメリットではありません。

デメリット10.免責不許可になる場合もある

自己破産というのは、裁判所に認められれば誰でも借金の支払い義務がなくなります。

しかし、自己破産を申し立てたからといって必ず認められるわけではないデメリットもあります。というのも、自己破産の前提条件である、「支払不能状態」であることに加え、免責不許可事由の存在も忘れてはいけません。免責不許可事由とは、免責許可が原則として認められないとされる事由のことで、パチンコや競馬といった賭博行為、株やFXといった射幸行為、過剰なショッピングなどの浪費行為による借金はすべて免責不許可事由となっています。

反省と誠実な態度で手続きに臨むことが重要

とはいえ、免責不許可事由に該当していたからといって、絶対に免責決定が出ないわけではありません。自己破産では、たとえ免責不許可事由に該当していたとしても、担当裁判官自らの判断で免責決定を出す、「裁量免責」という制度があります。

裁判官は手続きの中で、申立人(自己破産を申請した人)を観察し、反省と誠実な態度で手続きに臨んでいると判断すると、裁量免責にて借金を免除にしてくれるのです。

自己破産後の家族や人生はどうなる? >>

自己破産をすると生まれる大きなメリットとは?

上記のようなデメリットを抱えている自己破産ですが、実はそれを上回ると言っても過言ではない3つの大きなメリットもあります。

すべての借金の支払い義務がなくなる

自己破産することで、すべての借金の支払い義務がなくなります。利息の減額や一部免除ではなく、借金すべての支払い義務がなくなるのは数ある債務整理手続きの中で自己破産だけです。

正確には、裁判所から自己破産手続きの終着点である、「免責決定」を得た後(早ければ申立から2~3ヶ月程度)で借金は全額免除になりますが、この免責決定を得ることさえできれば、もう借金に悩まされない生活を手に入れることができるのです。

どれだけ降り積もった借金も免除してしまうことから、まさに自己破産は人生を再スタートさせるきっかけになってくれる手続きですなお、この借金の全額免除が自己破産最大のメリットと言えます。

強制執行される心配がなくなる

自己破産を検討される方には、すでに支払いが滞っている方も多いです。この場合、債権者(貸金業者などのこと)から強制執行されるおそれがあります。

強制執行とは、裁判所の手続きを経ることで、強制的に銀行口座や給与を差し押さえてしまう手続きを指します。

強制執行をされると今以上に生活が圧迫されてしまうため、可能な限り避けたい手続きの1つです。ところが貸金を回収するために裁判所を通じて強制執行をすることは債権者に与えられている権利であるため、債権者からの強制執行を止めるのは容易ではありません。

しかし、自己破産を利用すると強制執行される心配がなくなるメリットがあります。というのも、自己破産というのはすべての債権者に平等でなければならないため、特定の債権者だけが本人の財産を差し押さえることを禁止しているのです。このメリットは、裁判所が自己破産の申立てを受け付け、「破産手続開始決定」が出た段階で受けることができます。開始決定後は、もう強制執行に怯える必要はありません。

財産をすべて失うわけではない

自己破産と聞くと、どうしてもマイナスイメージばかりが先行してしまい、財産をすべて失ってしまうと想像される方も多いのですが、現実にそんなことはありません。

そもそも自己破産というのは、多重債務に陥った方を救済するために出来た制度であって、自己破産後にまともに生活ができなくなるようなことがあってはならないのです。よって、生活に必要となる家具といった財産は問題なく残すことができますし、時価で20万円以下であれば自動車などもそのまま所有することが認められています。

自己破産後も生活に支障がない範囲で財産を残せるのはメリットと言えるでしょう。

自己破産には人生が終わるようなデメリットは1つもない

上記のとおり、自己破産したところで人生が終わるようなデメリットは1つもありません。

ここまで読んできた方ならわかるように、自己破産のデメリットの中に一生背負い込むようなものはありませんし、一時的に制限されることはあっても、いずれは解かれるものしかありません。

もちろん、借金の理由によって自己破産が認められないこともありません。そのためよく言われている人生が終わるという話はウソと言っても過言ではないでしょう。

自己破産という単語にマイナスイメージがある

多くの方は自己破産という言葉を目や耳にするだけで、マイナスイメージをどうしても抱いてしまいます。しかし、自己破産という手続きは、多重債務に陥って返済しきれなくなった方を救済するために国が作り上げた制度です。

デメリットを見てもらえばわかるように、無条件で借金が免除になるわけではありませんし、非合法な手続きでもなんでもありません。

自己破産は新生活をスタートさせるきっかけ

ということは、世間からの自己破産へのマイナスイメージは間違ったものと言えます。

自己破産とは、なんらかの理由で借金を多額に抱えてしまった方が、新生活をスタートさせるためのきっかけになってくれる前向きな手続きです。

このように、自己破産には人生が終わるようなデメリットはありませんし、手続き後の生活も将来的には何不自由なく過ごせる取り扱いになっているのでご安心ください。

自己破産が必要な方は、ぜひ手続きを利用し、借金のお悩みから解放されてください。

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