2021年に入り再び発出されることとなった緊急事態宣言。生活やビジネスが日々変化を続ける中で、持続可能な社会の実現に向け、企業に求められる社会的役割への期待も大きくなっている。今回は、SDGsも目標達成を目指している2030年に向けて、「人と、地球の、明日のために。」を経営理念として掲げ、デジタルトランスフォーメーションを推し進める東芝デジタルソリューションズにてオンライン座談会を行った。

参加者は、東芝 執行役上席常務 兼 東芝デジタルソリューションズ 取締役社長の島田太郎氏、および各分野で活躍する東芝デジタルソリューションズ(以下、東芝)若手社員3名。東芝のみなさんは、複雑化する社会課題の解決に向けたデジタルの可能性をどう考えているのだろうか。

ニューノーマル時代における企業のあり方

はじめに、東芝グループの最高デジタル責任者でもある島田さんに、東芝グループの取り組みについてお話を伺った。

──SDGsが達成を目指す2030年に向けた、東芝グループの取り組みについてお聞かせください


島田さん

SDGsでは、多くの項目で具体的な目標値が定められていますが、実は重要な課題の1つであるデータの活用効果については明確な記述がなく、「社会のインフラとして享受すべきである」ということだと捉えています。SDGsの達成には「多種多様なデータがつながる世界」の実現が重要な意味を持ってくると考えています。

データの世界では、これまでPCやスマートフォンといった情報端末からデータを収集し、ビックデータとして分析することが主流でした。我々はこの「Cyber to Cyber」が主流の世界を「データ1.0」と呼んでいます。

これからは「さまざまな現実社会にあるモノのインターフェースから出てくるデータ」が新しい価値を生み出していく時代になるでしょう。例えば公共交通機関を利用した際のデータ、エアコンや掃除機などの家電製品を利用した時のデータ、体温を測ったり運動をしたりした時に得られるデータなど、現実社会からのデータを東芝グループでは「Physical to Cyber」、「サイバーフィジカルの情報」と呼んでいます。これまで入手困難だった「サイバーフィジカルの情報」を活用して“個人の生活のために”つなげることが重要です。「Cyber to Cyber」の時代から「Physical to Cyber」の時代に変わるこのようなデータの世界を、我々は「データ2.0」と名づけました。この世界で、東芝ならではの役割を果たしていきたいと思っています。

──社会情勢が変化を続ける中で、日本企業が再び存在感を示すためにはどのような取り組みが必要でしょうか


島田さん

これまでの「データ1.0」の世界においては、データを独占する企業が現れてしまっています。本来、「個人のデータを、その人がどのように使われているのかを知らずに使う」ということはあってはならないのです。「データ2.0」の世界では、「個人が生活を行う上で発する情報は、基本的に個人の持ち物である」という考え方に立たねばなりません。

また「データ1.0」の世界では、米国などのICT企業が、タッチポイントとなるインターフェースをPCやスマホに集約しビジネスを拡大してきました。この世界では、「ものづくり日本」の強みが発揮できませんでした。

しかし、世の中にあるデータ量は、「Cyber」より「Physical」からのデータの方が格段に多く、多種多様な「Physical」データを活用する「データ2.0」の世界においては、「ものづくり日本」の強みが発揮できると確信しています。この領域でのデータ活用をグローバルスタンダードに仕立て上げることができれば、このニューノーマル時代において日本は再び輝くことができるのではないでしょうか。