平成から令和へと元号が変わった今春、『平成終わるってよ』『新元号覚え歌』と立て続けに楽曲を発表して注目を集めた16歳のアーティスト・SASUKE。
5歳からダンスを習い、同時期から作曲も始めた彼は、10歳の時にアメリカ・アポロシアターの「アマチュアナイト」で優勝という快挙を達成した。
昨年は新しい地図 joinミュージックに自ら作詞作曲した『#SINGING』を提供し、今年2月には音楽ストリーミングサービス「Spotify」が選ぶ期待の国内ネクストブレイクアーティスト「Early Noise 2019」に選出された。
さらに4月にはバラエティ番組『しゃべくり007』に出演しパフォーマンスを披露するなど、その勢いはとどまるところを知らない。
そんな彼の活躍を見ていると、もはや人を年齢でカテゴライズすることに意味はないと痛感する。クリエイティブで想像力に満ちあふれた、新しい時代の到来を確実に感じさせるアーティスト・SASUKEに話を聞いた。
また、記事末尾ではSASUKE選曲のオリジナルプレイリストも作成してもらったので、そちらも合わせてチェックしてみて欲しい。
・両親によると2歳でもう踊ってたそうです
・音楽活動の根っこは「ファンク(funk)」です
・好きなことを「全部」やりたい
・区切ること自体、僕は好きじゃないんです
・SASUKE'S PLAY LIST(本人による解説つき)
――まずは16歳(5月21日が誕生日)おめでとうございます。実感はありますか?
ないです。今までで一番実感ないです(笑)。平成から令和に変わる時も、世の中的にはすごい「変わる」感が出ていて。でも、インスタでカウントダウンライブをしていたときに、窓から見た景色は特に変わらなかったです(笑)
――Spotifyが選ぶ今年注目のアーティスト「Early Noise 2019」に選ばれた感想はいかがですか。
僕なんかがその中にいていいのかなって。もちろん選ばれたからには頑張らないと、という気持ちはありますけど、去年から今年にかけて周りがすごい速さで動いていくので、自分ひとり、高速道路の真ん中にポツンと立っているような感じが時々します。
でも今はそういう状況も含めて楽しもう、と。つくる音楽は「自分が楽しむ音楽」から「皆で一緒に楽しむ音楽」に少しずつ変わってきていますが、基本的に自分が楽しむことは変わらないです。
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――ストリーミングサービスで音楽を聴く、というライフスタイルについてはどう思いますか。
僕もずっとCDを聴いてきたので、便利であることは確かですよね。昔「SoundCloud」(ドイツの音声ファイル共有サービス)を利用していた頃、好きなアーティストがフォローしているアーティストを聴く、ということをしてましたが、Spotifyはアルバムやシングルを聴けば、似た曲やアーティストをすぐに提示してくれるので、そこがとてもいいです。
――音楽へのアプローチがより身近になり、アーティストはつくった曲をすぐに配信できるし、リスナーはよりたくさんの曲やアーティストと接触する機会が増える、というメリットがあると思います。
確かにそうですね。僕の場合、今までだと誰かのSNSで「新曲出ました」という告知を見て、そこからまず(CDを買ってもらうため)お父さんに頼むところから始まるんですけど(笑)、それが必要ないのは単純にすごいことですよね。
また、アーティストとしてはデビューしてなくても曲を発表できるし、どこの国の人が一番アクセスしているのか、どの曲が一番聴かれているのかがわかるので、大きなモチベーションにもなります。
――改めてSASUKEさんのこれまでを振り返りたいのですが、やはり生まれた時から音楽に囲まれていたのでしょうか。
はい。常に家の中では音楽が流れていて、両親は洋楽、邦楽、何でも聴いてました。教授(坂本龍一)とかテイ(・トウワ)さんとか、若い人からベテランまで、ジャズやレゲエも流れていた記憶があります。
――ダンスをされていたそうですが、習い始めたのはいつ頃から?
両親によると2歳でもう踊ってたそうですが、正式に習い始めたのは5歳です。最初はヒップホップ系だったと思います。もちろん楽しかったですけど、自由に踊りたいタイプなので、後にちょっと苦しくなりましたが(笑)。
――音楽とダンス以外に関心を持ったものはありましたか。
小2の時に「山ケント」というペンネームで漫画を描いてました(笑)。同じような趣味を持った友だちを集めて、コミック雑誌みたいなものをつくる会社を立ち上げて、そこの社長をしてましたね。あくまで「自称」ですけど(笑)。
ハマるものとハマらないものがはっきりしてましたが、好きなことは全部やるタイプでした。
――好きな本や映画は?
小学校低学年の頃は五味太郎さんの絵本が好きでした。3、4年生になると『マジック・ツリーハウス』シリーズ(※アメリカの児童向け冒険ファンタジー)にハマりました。今は朝井リョウさんの本をひたすら探して読んでます。
映画は音楽系の映画が好きです。『ブルース・ブラザース』とか『セッション』とか。
――作曲活動はいつぐらいから始めたんですか?
5歳くらいの時、お父さんのMacを勝手にいじってたらGarageBandが立ち上がって「曲、つくれそうだな」って。それが原点ですね。でも、ちゃんと「曲をつくろう」と意識するようになったのはここ最近です。
それまではゲームみたいな感覚でしたけど、ソフトを買ってきちんと曲をつくろうと。それが小6の時です。
――今までどれくらいの数の曲をつくりましたか。
ちゃんと数えたことないですが、1000曲はあると思います。去年は143曲つくりました(笑)。ひらめいたらすぐボイスメモにメロディだけでなく、各楽器パートごとに録音しています。「ドラム」「ベース」とか最初に言って(笑)。そうやって集めた素材を、後で時間をかけて組み合わせていきます。
――では、あえて自分自身の「肩書き」を説明するとしたら?
音楽だけでなく、すべての活動を含めて「アーティスト」ですね。ジャンルは特に決めていませんが、昔からずっと好きで聴いていたこともあり、ダンスの影響もあってか、根はずっと「ファンク」です。
――ファンクのどんなところが好きですか? 好きなアーティストは?
端的に言うと、Pファンクにも行けるし、ジャズファンクにも行ける幅広さですね。僕も曲やトラックをつくる時はベースをうねらせることが多いです。JB(ジェームス・ブラウン)、スティービー・ワンダー、アレサ・フランクリン、マービン・ゲイが好きです。
――そのほかに好きなジャンルは。
本格的に作曲に取り組もうとした頃、出会ったのが「Future Bass(フューチャーベース)」でした。当時はまだ日本に入ってきてなくて、よくSoundCloudで探して聴いてました。今はだいぶ浸透してますけど、初期につくった曲はその要素が強いですね。
EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)とは違って、音像とか音の細部にかなりこだわるんですよ。メロディもコードも、構成もオーケストラばりにしっかりつくるし。
ほかにもテクノとかハウスとか、電気グルーヴや石野卓球さんも聴いてました。今思えばテンポがめっちゃ早くて親が心配してましたけど(笑)。
――この春からN高校(※角川ドワンゴ学園が2016年に開校したネットと通信制高校の制度を活用した私立高校)に進学されましたが、高校生活はいかがですか。
自宅で1、2時間ほどスマホを通じて授業を受けてます。ずっと土日な感じがしますけど(笑)、これを機にしっかり生活を整えていきたいので、体力づくりが課題のひとつではありますね。
でも、思いついたらすぐ曲をつくれるのはとても嬉しいです。これが実際に学校に通っていて、しかも授業中だとそうはいかないですから。
――曲づくりに対するポリシーなどはありますか?
楽しくやれるのが一番というか、他のアーティストと対抗するようなことはしたくないですね。仲良くしたい。「戦い」があまり好きではないので。
――それはどういう意味でしょう。
切磋琢磨という意味では必要なのかもしれないけど、基本的に「戦い」や「争い」は何も生まないと僕は思うんです。もし音楽をやってなくても、きっと同じことを考えるでしょうね。
――では、自分と違う考えを持つ人と対峙せざるを得ない時はどうしますか?
1回まず自分の意見を言って、それで納得してもらえればいいけど、そうでない場合は自分が間違っているのかも、と考えます。それでも自分が合っていると思ったら自分を貫きますが、そこまで極端に仲が悪くなるようなシーンは、あまりないと思いますよ(笑)。
――SASUKEさんの目には今の社会や大人たちはどう映るのでしょう。
すごくいいな、って憧れるような方はごくたまにいます(笑)。あくまで僕の感覚ですが、年上の方は考えがちょっと固いというか。もちろん積み重ねてきた経験もあるのでしょうけど、残念ながら最新の技術をすぐに否定する人が多いんですよね。
――大人として耳が痛い言葉です。
でも、若い人も若い人で、面白いアイデアとか持っていたりするんだけど、内気なんですよね。それに、自分を責めながらも甘い部分があるというか、辛い気持ちや苦しい気持ちをSNSにすぐ書いてしまったりする。
本当に苦しい人は書かないですから。あと、年代を問わず、簡単に人の批判をする場面は見ていて嫌です。自分が批判されるよりも、人が批判されているのを見ることのほうが嫌ですね。
――とはいえ、世の中まだまだ世代間で摩擦があったり、年齢やキャリアで区切ったりすることが多いですよね。
「区切る」こと自体、僕は好きじゃないんですよ。自分のつくる音楽も区切ってないし、ダンスも「音楽」だと思ってますし。「(ジャンルは)絞ったほうがいいよ」と言われたこともありましたけど、僕は好きなことを全部やっていきたいんです。成長は遅いかもしれないけど、楽しんでいきたい。音楽に限らず、何に対しても分けたくないんです。
――最後に、アーティストとしてのこれからの活動や目標について聞かせて下さい。
とりあえず日本で頑張っていかないと、というのはあります。ただ、英語はマスターしたいので、短期でもいいから語学留学をしたいですね。あと、音楽活動はもちろんですが、企画を考えることも好きなので、自分のアイデアを形にするということもやっていきたいです。映像だったりグッズだったり。
小学2年生の時、勝手にフェスの企画とかを立ててました。ブルーノ・マーズとか有名なアーティストを国内外問わず全員呼んで、テレビも巻き込んで、ネットでも一週間生放送する、みたいな。
「なんでチャンネルって分かれているんだろう」ってところからスタートして、一週間分のプログラムまで考えてました。今思えば小2だからこそできたと思います(笑)。
今はたくさんの人に僕の音楽を聴いてもらいたいので、世界に行けるような曲とともに「新しいジャンル」をつくりたいですね。目標はニューヨークで教授(坂本龍一)と一緒に曲をつくることです。
ジェイコブ・コリアー『Here Comes Sun』
この人は楽器を何でも演奏できて、どんなジャンルの音楽もやるんです。『WITH THE LOVE IN MY HEART』も好きな曲です。自由にやってる感じが本当に好きですね。天才です。
ルイス・コール『Doing the Things』
最初に知った頃はドラムとキーボードだけだったんですけど、実はベースとギターも弾けたという。最近はブラスもストリングスも入れてます(笑)。あまりにも好きすぎてオマージュしたトラックをつくってネットにアップしたら興味を持っていただき、本人に会うことができました。
MaxOX『Pizza Party』
ベースとキーボードとドラムの3ピースだと思うんですけど、エレクトロな音でフュージョンみたいな音楽。たまらないです。
ドリアン・コンセプト『Eigendynamik』
キーボードの早弾きが得意なアーティストですが、曲もいいんです。即興の要素が強い音楽で、すごい勢いがあります。たまにヒップホップやジャズっぽい感じも入っていたり。
KNOWER『I Remember』
先ほど挙げたルイスがボーカルを招いてやっているバンドの曲です。僕が一番好きなのはライブバージョンですね。
Vulfpeck『Animal Spirts』
PVが面白くて、歌詞の日本語訳が字幕で出てくるんです。固定で何人かは決まっているんですけど、毎回バンドメンバーが変わるんです(笑)
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