今年、各所で聞こえてきたのが「働き方改革」というワード。女性の結婚、出産、育児に対する会社からのケア。労働時間、休暇、そして体調管理。
働き方そのものが変わってきていて、私のように、会社に属さずフリーランスとして働く人も。また、パラレルキャリアなど、企業の雇用形態も多様化している。
ただ、状況を俯瞰すると、働きやすくなっているのか、それとも複雑になっているのか、やや不明なところ。シンプルに「働くこと」に対して一生懸命な人は、どれだけいるんだろうか、と若干心が迷子になりそう。稼ぐって大変……。
悩める女性にとって見本となる働き方を見せてくれたのは、ドラマのヒロインたち。今回は、2018年のヒットドラマから「紅組」にあたる3作品を紹介していこうと思う。異なる時代で働く女性たち、その姿に見えたものとは?
▼『半分、青い。』 - 鈴愛は女性の働き方のイノベーションに
楡野鈴愛(永野芽郁)は岐阜県で育ち、漫画家を志して高校卒業と同時に上京。何冊か単行本を出すも、自分の限界を感じて画業を引退する。そして、結婚、出産、離婚。ついには一人娘のために起業するなど、アグレッシブな人生を送ることに。そして、その傍らにはいつも、同じ日に生まれた幼なじみ・萩尾律(佐藤健)の姿があった。
放送終了後、ロスが続出した朝ドラ『半分、青い。』。ヒロインの鈴愛は結婚、出産、離婚を経て、シングルマザーとして働く。品格を重視する朝ドラ史上では、かなり素っ頓狂なキャラクターだったと思う。鈴愛の発言はいつもはっきりしていて、気持ちが良かった。
嫉妬して羨んでばかりいたら、人生半分になるもんな。友達にいいことがあったら喜びたい。そうしたら、人生は2倍楽しくなる!(第64話)
私、たぶん人生にはたった一度しかない、ここ! 今! っていう瞬間があるような気がするんだよね(第100話)
律しかダメだ。私の律は律だけなんで。1人だけなんで(第156話)
とにかくすべて思いつきで行動してしまう鈴愛。失敗を恐れているヒマが、彼女には用意されていなかったようだ。誰だって何かを進めようとするときに躊躇することがある。そして、自分に言い訳をしながら格好をつけてしまう。しかし、鈴愛にはそれが感じられなかった。それがこのドラマを盛り上げて、女性の存在を教示してくれたのだ。
ただひとつ、ジリジリしたことといえば、律との恋愛。お互いに離婚し中年を迎えてから気持ちを確かめあう、という何ともロングな展開。しかも律は、何もかもスマートにこなすと思わせておきながら、実はヘタレな部分もある。女性の心を突きまくる役ゆえに、個人的には“律ロス”が重かった。
2人が一緒に毛布にくるまるシーン(第147話)では、自宅で鑑賞しながら(嬉しい)悲鳴をあげたもんな……。思い迷うことがある女性にとっては、“鈴愛のごとくフリーダムに生きてもいいんだよ“という後押しサプリメントになるような作品だった。紅組にボールをひとつ投げておこう。
▼『まんぷく』 - 旦那をきっちり操縦する福子、ほくそ笑む
時代は、太平洋戦争最中の日本。生活に役立つ新たな商品を生み出そうと奮闘する立花夫婦が主役だ。妻の福子(安藤サクラ)は、才能はあるが事業に失敗してしまう夫・萬平(長谷川博己)を支える日々。製塩や栄養食品の開発、金融業と彷徨う萬平がたどり着いたのは、現代ではおなじみとなった「インスタントラーメン」の開発だった。
タイトルの字面が可愛さを醸し出す『まんぷく』。福子は3姉妹の末っ子として生まれ、嫁いだ姉たちに代わり母親を支えるため、ホテルに勤務。どこか頼りない萬平と結婚し、戦時中を超えて母となった。
と、ここまでは朝ドラヒロインによく見られる設定なのだけど、福子が他と一線を画したのは「楽天家」であること。彼女のことを思い出すたびに、あの目尻の下がった、幸せを含んだ笑顔が浮かんでくる。戦時中も「ケ・セラ・セラ」の精神で、家族を不安に陥れなかった。笑顔は強さであると証明してくれたのだ。
そして、福子は夫の発明家としての才能を信じて、力になりたいと願う。
萬平さんが本気なら、それを支えるのが私の役目です(第33話)
結果、研究資金を調達すべく、福子がスポンサー(三田村会長)をアテンドするという一幕もあった。萬平が進駐軍に捕まるというアクシデントにもめげることはない。
ドラマを観ながら、「福子のほうが商売に向いているんじゃ……」と思わせるシーンが何度かあった。でも、彼女は決して前に出ようとせず、夫や会社のマネジメントに徹する。いや、陰で手綱を握る支配者なのかもしれないと思った。同じ朝ドラだった『ゲゲゲの女房』(NHK総合・2010年)のパターンとは、また違った強さが感じられる。
働き方と同様に、夫婦関係のあり方も各々異なるようになった。立ち位置に迷う人もいる。そういうときのカンフル剤になるのかな、と思わせる『まんぷく』。2018年から2019年へと年をまたいで、まだ物語は続く。
▼『獣になれない私たち』 - 助けに来ない男たち。そして一人で立ち上がる晶
本音を言わず、全方位に対して“いい人”であろうとする深海晶(新垣結衣)。晶は、都合よく使われる自分自身に辟易していた。そんな折、行きつけのBARで知り合ったのは、公認会計士の根元恒星(松田龍平)。はじめは歯に衣着せぬ物言いの恒星と衝突する晶だが、お互いの恋人や家族の話を通して、次第に距離が縮まっていく。そして、その裏で絡まりあう人間関係。晶はいつしか本音を吐露することができるのか。
ここまで紹介した2作とは違い、はつらつさを発揮しないヒロインがいた。それが『獣になれない私たち』の深海晶。もう、役名からして色々なものを感じさせる。
「仕事ができるやつだ」と社長に伝わり、通常業務以上のことまで求められる。それに反論もできず、結局仕事ができない後輩たちのフォローに回ってしまう。もし晶に発言できる力があったのなら、「ツクモ・クリエイト・ジャパン(晶が働くECサイト制作会社)」よりも大きな企業で活躍していたのではないか。
恋人の花井京谷(田中圭)が、元カノの長門朱里(黒木華)を別れた後も自分のマンションに住まわせているという、腹立たしい状況にも耐えた。晶がまさかの元カノから詰め寄られるシーンでも、彼女をかばい自分の家に泊めるという気遣いを見せた。いや、これは気遣いではなくて、自分の中で我慢を消化する行動だったのかもしれない。
言いたいことは物怖じせずに発言する私からすると、晶の行動は全く共感できない。いや、むしろイライラした。
では何が良かったかといえば、物語のなかに現実が垣間見えたことだ。晶が仕事で追い込まれて困ったり泣きそうになったりした時も、通常の恋愛ドラマであるような彼氏の登場はなかった。1人で立ち上がる、そんなシーンがちらほら。そのリアル感に、心がそそられた。そう、この作品は恋愛ドラマではない。社会にあふれる問題を再現した、観ていて少ししんどくなる“社会派ドラマ”なのだ。
そして、4年付き合った京谷の手を離すことで、いよいよ晶の自我が芽生え出す。
京谷と別れることは私にとって人生を捨てるのと同じだった。捨てたくなくて、しがみつくばっかりで、笑ってごまかして……。本当のことは何も言えてなかった。でもそれってもう、私の人生じゃないよね(第7話)
私は、私の人生を放り投げていた。もう投げたくない(第7話)
彼女の人生はまだ始まったばかり。同じように「自分を変えていきたい」とどこかで願っている人たちには、プロテインのようなドラマなのかも。これから筋肉を携えて、強くなっていきたい人たちに向けて。
そして、このドラマのトピックとして挙げたいのが、脚本家の野木亜紀子さん。彼女が手がける脚本は、セリフの一つ一つが染みる。石原さとみ主演の『アンナチュラル』(TBS系・2017年)でも、
私、ずっと、悲しむ代わりに怒っていた気がする。負けたくなかった。(中略)でも、毎日どこかで人が死んで、その分誰かが悲しんで。人が人を殺して、憎んで、また悲しみが増える。法医学者のできることなんて、ほんの少し。負けそう……(最終話)
静かな強さを表す言葉の数々が印象に残った。野木さんは、女性の心のものすごく奥にうごめいている本音を表すのがお見事だ。
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各ヒロインが魅せた女性の強さを、ドラマからぜひ。
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