2017年3月17日、大東建託は新ブランドメッセージ「生きることは、託すこと。」を発表した。 現在、このメッセージをテーマにしたCMが放映されているが、今後も様々な形でブランドメッセージを発信していく予定である。 今回はマイナビニュースでも、そんな新ブランドメッセージに寄り添う形で、2つの小説を展開。 小説の後には、放映中のCMも載せているので、あわせてご覧いただきたい。


「あずさ、この白菜切っておいてもらえる?」
「……切るって……どうやって?」
「鍋に入れるんだから、ざく切りだよ」
「……ざく切りって??」
「ごめん、ミカちゃん、そっちが終わったら白菜切ってあげて」
「ほんと、すいません……」
 まずい。料理がまったくできない私は、何も手伝えない。同じ部署の女子4人で鍋パーティーをしようと、ひとり暮らしをしているカオリ先輩がせっかく家に招待してくれたのに。私にできるのは、先輩が飼っている猫のきなこと遊ぶことくらい。ミカちゃんとサオリちゃんは私より年下だけど、白菜のざく切りとやらをなんなくこなし、生ごみをサッと片付けたり、お皿を並べたり、手際のいいことといったら!

 それに比べて私といえば、料理どころか、実家暮らしで掃除も洗濯もアイロンもお母さんにぜーんぶやってもらっちゃってるから、正直、自分では何一つ家事ができない。
「そんな27歳って相当ヤバイ」
 と思いつつ、家に帰ったらすぐごはんとお風呂が用意されてる生活が快適すぎて抜け出せない。合コンでもバーベキューでも他の女子たちや気の利く男子が何でもササッとやってくれちゃうだけに、家事のダメぶりがバレる場面ってそうそうなかった。
 でも、今回はさすがにずしんとこたえてる。カオリ先輩は私より3歳上なだけだけど、ひとり暮らしの部屋すっきりキレイに片付いていて、インテリアもロン・ハーマン風の西海岸テイストでとっても素敵。一見、バリキャリ風だから料理なんかしませんってタイプに見えたけど、包丁さばきは鮮やか! 歳は少ししか違わないのに、この差はなんだろう。
 私だったら、すぐさま部屋は散らかり放題だし、ひとつの料理ができあがるのに何時間もかかっちゃいそう。彼ができたら料理も頑張ろうと思ってたけど、最後に彼がいたのは何年前だ? 大学生の頃だったような……。

 クヨクヨ思い悩んでいるうちに、いつの間にか鍋の準備が整い、ワインで乾杯。でも、ひとり暮らしをしている先輩とミカちゃんはわかるけど、私と同じ実家暮らしのサオリちゃんは、なんであんなにデキる子なんだろう。これは聞いてみるしかない。
「今日は、本当に何もできなくてすみません。みんな手際が良くてびっくりしました」
「慣れだよ慣れ」と、カオリ先輩。確かにそうだと思いますが、その慣れる機会がないんです!
「でも、ミカちゃんは一人暮らしだからわかるけど、サオリちゃんは実家だよね」
「洗濯はやってあげるけど、朝ごはんだけは作れって親に言われてて。最初は面倒でイヤだったんですけど、お弁当作るついでだからいっかと思って」
「ん? サオリちゃん、いつも持ってくるお弁当って自分で作ってるの?」
「そうですよ。まあ、いつも卵焼きと生姜焼きのマンネリ弁当ですけど」
 それでも、毎日親が作ったお弁当を食べてる私の何倍もマシだよ! と心の中で叫んだけれど、先輩としてのプライドもあるから、ここは「そうなんだー」と平静を装うしかない。
 ああ、本当に私ってヤバイかも。

 話題は「部下にお使いに行かせたとき、そのお釣りを細かくチェックしてる」という課長のセコさの話に移ってひとしきり盛り上がったものの、自分だけが家事ダメ女という事実に打ちのめされて、ちょっとテンションが上がらない。あ、そろそろ鍋が空になりそうだ。 「私、何にも手伝えなかったから、後片付けはやります!」
 と思わず口にしたものの、何から手をつけていいかわからない。まず、鍋から洗おうと思ったら、先輩がダッシュで飛んできた。
「鍋は水につけておいて、最後に洗ったほうがいいかも。一緒にやろうか」
 後片付けもできないと落ち込む私に「大丈夫、私も前はそうだったよ」という先輩の慰めの言葉がむなしく響く。
「先輩、私ってホントにダメ人間なんですけど……」
「んー家事くらいで、大げさだよ」
「でも……」
「……まあ、家事がどうこうってことより、私はひとり暮らししてよかったけどね。実家が遠くて通勤に時間がかかってたから、会社が近くなってそのぶん仕事に打ち込めるようになったし。彼とのお泊りも自由だし」
「先輩、付き合っている人がいたんですね! 全然知りませんでした」
「学生時代からの付き合いだから、腐れ縁だけどね」
 口ではそう言いながらも、その表情はとっても幸せそう。仕事に打ち込むとか、彼とのお泊りとか、私の辞書にはない言葉ばかり。私ががんばっていることといえば、ネイルサロンやジムに行ってることくらい。確かに家事ができるようになりたいとか、彼がほしいとかってこと以上に、大人の女として、そろそろ自立ってやつを本気で考えないとまずいのかも。
「私、今度の休みに、部屋を探しに行きます! ひとり暮らし初めてなんで、いろいろアドバイスしてもらっていいですか?」
「本気? もちろんいいよ!」
 でも、ひとりの部屋に帰るのはやっぱり寂しいから、先輩みたいにネコでも飼おうかな。
 いつの間にかきなこが足元にきて、私を見上げて「ミャー」と鳴いた。
 大人への第一歩を踏み出す私を、きなこも応援してくれているみたい。そう思うと、不安がスーッと消えていった。


大東建託は人々の暮らしと本気で向き合っています。
ひとりでは生きてけないというしあわせ。
生きることは、託すこと。

⇒「ネコが恋を連れてきた」を読む

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