デジタル領域の発達に伴い、デジタル上の最新技術や新しいアイディアを元に起業する若い起業家や会社が年々増えてきている。こういった新しい技術が武器になる昨今。そういった技術の導入が進んでなく、これから進んでいくであろう、"狙い目な業界"、"オイシイ業界"はあるのであろうか。

今回は、デジタル上での技術をビジネス力に変えるデジタルハリウッド大学大学院の学校長 杉山知之氏をはじめ、ソニーで3次元コンピュータグラフィクス技術の研究に従事した後、現在は産総研技術移転ベンチャーであるミライセンス代表取締役を務める香田夏雄氏、マイクロソフトやマッキンゼー&カンパニーで企業戦略立案などを担当した後、現在は電通コンサルティングのシニア・マネージング・ディレクターを務める森祐治氏に聞いてみた。

デジタルハリウッド大学大学院の学校長 杉山知之氏

――早速なのですが、現在、最新技術であったりデジタルの力の導入が遅れている業界で、これからそういった変化が起こるであろう業界を教えてください。

杉山:米GE(ゼネラル・エレクトリック)とソフトバンクが提携して“インダストリアル・インターネット”を推進することが発表されました。しかし、そうした先端的な技術導入ができる大規模な産業も、これまでウェブサービスを柔軟に開発してきたITベンチャーも、IoTとコンテンツを利用した消費者に近いサービス業への活用は、まだこれからの分野です。ビジネス、クリエイティブ、ICTを融合した視点で技術導入やビジネス開発を進められる人材が必要ですが、その能力に加えて、リーダーシップを発揮できる人がもっと必要な現状ですね。

香田:今の時代、新しいテクノロジーが矢継ぎ早に発表されています。日本のIT業界やモノづくり業界全般に言えるのですが、単体の技術開発にはとても優れているんです。ですが、それら新テクノロジーを素早く調査研究し、それを高度に組み合わせることにより、これまでになかったまったく新たな価値を生み出すことのような能力に関しては、欧米に対して大きな遅れがあると感じています。

森:先端的なメディアアートなどで実験的に用いられている技術、例えば“AR(拡張現実)”や“プロジェクションマッピング”といったテクノロジーは、具体的な目的があって初めて現実の社会に取り込まれる“ツール”です。テクノロジーの知見があることを前提に、想像力があり、その導入コストとメリットを計算できる人間がいて初めて都市デザインなどといった我々の日常生活に近いところに導入される機会を持ちます。どのような業界というよりも、どこにでも新技術の導入は常に可能性があると考えてもいいのではないでしょうか。

――なるほど。では、最新技術を武器とした起業を行った場合、ビジネスチャンスが多く埋まっていると考えていいのでしょうか?

杉山:IoTの潮流は、誰でも活躍できるインターネットの領域と、グローバルで大規模なビジネスを結ぶものです。個人の能力開発の観点からもビジネスプランの構築の観点からも、飛躍の時であり、いつ・誰が・どのような方法でイノベーションを起こしても不思議ではありません。重要なのは、自らのやりたいことを見つめ、半歩先の未来に向かって具体的に行動を起こしてみることです。“できる人”ではなく“やる人”というリーダー志向が重要です。

香田:現在、モノづくりは誰でもアイデアさえあれば、可能になっています。アイデアをベースに、しっかりとしたビジネスモデルを構築し、資金を集めることができれば、大手メーカーに負けないようなプロダクトを個人で製品化することもできます。たとえ、それが電化製品であってもです。最近は、多くの部品メーカーや商社がスタートアップベンチャーに注目しており、手厚いサポートを受けられます。また、このようなベンチャーの製品開発を支援するような製造を請け負う中間的な会社も多く出てきています。まさにモノづくりのチャンス到来です。

ミライセンス代表取締役を務める香田夏雄氏

――香田さんや森さんはビジネスの最前線に身をおきながらも、大学院で教授として実際に教壇にも立たれていらっしゃいます。そこでは、具体的にどういったことを教えているのでしょうか。

香田:ここ数年は、IoTに関連したモノづくりに必要となる技術(マイコンやセンサー等)と、そのビジネス化のためのノウハウを中心に指導しています。私自身がアメリカシリコンバレーにも拠点を持つ、ハードウェア系ベンチャーの代表を務めているので、その活動を通して得た、最新の話題や情報をいち早く展開して、世界の動向にリアルタイムに追従した指導ができるように心掛けています。

森:大学院では、ゼミ「コンテンツ戦略ラボ」と講義「Introduction to Anime Business」をそれぞれ担当しています。ラボでは、1年間をかけて修了指導を行っており、修了課題のテーマとしてはいわゆる“コンテンツ・ビジネス”には限定せず、ソーシャル・ビジネスや選挙、スポーツなど幅広い領域でメディアやコンテンツ、あるいはその産業、利用者に関わるものすべてをなんらかの学術的フレームワークで捉え、学術論文を完成させることを行っています。講義は、英語で日本のアニメビジネスの構造分析を、成立経緯などを通じて明らかにするという内容で、留学生が数多く受講しています。もちろん、自分の大好きなアニメというテーマを通じて、アカデミック・プラクティスを学ぶという機会として活用している日本人の学生もたくさんいます。

――そもそも、"起業したい"と思う人が大学院に通うメリットとはどこにあるのでしょうか。大学院でしか学ぶことができないと思うスキルについて教えてください。

杉山:ソーシャルネットワークの発達により、人脈やネットワークが広がっているように感じられていますが、人や物事を動かすための実際的な力が身につくようなリアルな世界はむしろ狭くなっていると感じます。現在、自分が属している組織なりコミュニティではない場所に身を置き、多様性に向き合う人間力が社会人大学院で向上されるビジネススキルの中でも最も本質的なもののひとつです。学校という場所は会社(=オフィシャル)でも友人(=プライベート)でもない第三の環境として、特別な価値があります。リーダーとしての力に目覚めていく場所であると思います。

香田:どんなに素晴らしいテクノロジーがあったとしても、それがそのままビジネスになることは、きわめて稀です。ビジネス化するには、まずそのテクノロジーがどのような立ち位置にあるのかを分析し、その素性とと投入時期が適切かを見極めます。さらに“NABC”と呼ばれる、ニーズ(Needs)分析、それに対するアプローチ(Approach)設定、誰にも驚かれるアプリケーション(Benefit)開発、競合との明確な差別ポイント(Competitive)の導出が必須になります。デジハリ大学院では、これらのスキルを体に刷り込むように、実践的に習得していきます。

電通コンサルティングのシニア・マネージング・ディレクターを務める森祐治氏

森:最先端のビジネス・ケースについてもテクノロジーについても、情報はネットで何でも収集できる時代です。しかし、それらの社会的位置づけを検証したり、自身が持つ印象から仮説を導出し、それを議論・検討する。評価をするといったことは、大学院という“場”でしかできないと思います。大学院でしか学ぶことができないスキルというよりは、大学院でしか体験・実感できないスキルがあるといったほうが正確ではないかと思います。

――最後に、デジタルハリウッド大学大学院の強みをお教えいただけますか?

杉山:ひとつ目に院生の層が多様であること。エリート志向の方が集まるビジネススクールも素晴らしいですが、本学は同質的な環境をつくることよりも、異なるバックグラウンド、異なる能力を持つ人が集まる多様性のある、創発的・協働的環境をつくることに力を注いでいます。ふたつ目が世界でも類を見ない“コンテンツ”という切り口でつながる広い研究領域を持っていることです。すべての産業をつなぐ“デジタルコンテンツ”に軸足を置いて、ビジネス・クリエイティブ・ICTの融合により半歩先の提案をすべての産業に向けて行うことができます。そして3つ目がビジネスプラン+デモコンテンツというアウトプットへのこだわりです。勉強そのものを目的に置いているのではなく、自らのアウトプットを出すことにカリキュラムや教員の指導が収斂されるようになっています。修了と同時に、自分だけのビジネスプランがビジネス・クリエイティブ・ICTの面から検証・開発されているというゴールが設けられているのは本学ならではと言えます。

香田:シリコンバレーで活動していると、驚くような大手ベンチャーのキーパーソンと気軽に会うことができ、カジュアルな雰囲気の中で、最新技術やビジネスに関してのディスカッションができるような機会が多くあります。一方、国内では仰々しいしきたりがあってなかなかそのような人と会うことは難しく、会えたとしてもとても堅苦しい雰囲気の中での話になりがちです。おそらく、このカジュアルな雰囲気こそ、イノベーションの原動力と私は感じています。デジハリ大学院はまさにこのカジュアルな雰囲気に満ち溢れています。実は、なかなか会うことができないようなすごい経歴の教授たちがゴロゴロしていて、声を掛ければすぐにディスカッション開始!イノベーション創出に最適な環境ではないでしょうか。

森:専門職大学院として、テクノロジーやビジネス、あるいはクリエイティブの領域の最先端の事象の目利きとして活動を実践している教授陣が大学院の仕組みの中で学生のみなさんと切磋琢磨するというのが最大の魅力だと思います。学術のみではなく、また実践だけでもないという絶妙のバランスを築き上げています。

――ありがとうございました。

マルチメディアやデジタルクリエイティブを学ぶ専門スクールとして、他校に先駆け1994年に開校したデジタルハリウッド。通称“デジハリ”と呼ばれる業界のパイオニア的存在である同校が、2005年に株式会社立大学として新たに設立したのがデジタルハリウッド大学だ。さらに、同校の中でもより高等教育機関として位置づけられるデジタルハリウッド大学大学院は、他の大学院に比べて高い技術力も身につけることができると年々評価を上げている。

今回話を聞いた3人は全員デジタルハリウッドの大学院で教壇に立っている。ビジネスの最前線で活躍する彼らの言葉に耳を傾け、ビジネススキルを磨けば、大きなビジネスチャンスをつかむこともできるのではないだろうか。

杉山知之
1954 年東京都生まれ。日本大学大学院理工学研究科(工学博士)、マサチューセッツ工科大学のMITメディアラボ客員研究員を経て、94 年10 月デジタルハリウッド設立。2004年デジタルハリウッド大学大学院、翌年デジタルハリウッド大学を開学し、現在、同大学の学長、およびデジタルハリウッド学校長を務めている。Facebookで「学長日記」スギヤマスタイルを連載中。

香田夏雄
1968 年東京都生まれ。ソニーにて、3次元コンピュータグラフィクス技術の研究を中心に、ゲーム、カーナビなどの製品開発にも参加。2007年ヒュージスケールリアリティを設立し、さまざまな3DCG応用技術を研究開発する。現在はミライセンス代表取締役を務める。

森祐治
1964 年愛知県生まれ。認知社会心理学、メディアコミュニケーションを学んだ後、米国へ留学。マイクロソフト、マッキンゼー&カンパニーで企業戦略立案を担当し、アニメへの投資やグローバル化支援のファンドを経営。現在は電通コンサルティングのシニア・マネージング・ディレクター。

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