では、ヒロミや東野らベテランMCはどんな状況に立たされているのか。
半年前の昨秋、各局は番組改編でベテランの起用を進めていた。TBSはかまいたちら中堅芸人を集めた『ジョンソン』を終了させて中居氏、東野、ヒロミの『THE MC3』に切り替えたほか、生瀬勝久の『それって実際どうなの会』のレギュラー放送をスタート。フジテレビも新番組『この世界は1ダフル』のMCに東野、『ザ・共通テン!』のMCにヒロミを起用、テレビ朝日も有働由美子の冠番組『有働Times』をスタートさせた。
TBSはターゲット層の上限を引き上げた新指標「LTV4-59」(4歳~59歳の個人視聴率)を導入。さらに日テレもコア(13~49歳)に振り切っていた評価指標に個人視聴率全体を再び組み入れ、フジも家族などで楽しめる「共視聴(複数人での視聴)」を掲げるなどターゲットを広げていた。相変わらずオールターゲット戦略のテレ朝も含め、民放主要4局は中高年層の個人視聴率を獲得するためにMCの年齢層を上げたという感がある。
ところがそんな「ベテラン回帰」を思わせる流れは半年後、早くも変化が見られた。
新たなスターMCを育てる余裕なし
今春の改編で日テレは『Golden SixTONES』のレギュラー放送スタートと『千鳥かまいたちゴールデンアワー』のゴールデン進出。TBSは『ニノなのに』(MC・二宮和也)をスタート。いずれもベテランというより中堅を起用した様子がうかがえる。
評価基準が変わって、知名度・実績・安定感のあるベテランに頼れるようになったが、それで高視聴率が得られるほど簡単ではない。実際、業界内には「ベテラン回帰はローリスク、ローリターンになりやすい消極策」とみなすテレビマンもいる。
また、ダウンタウンが不在の上に、内村光良、今田耕司、爆笑問題、くりぃむしちゅー、バナナマン、サンドウィッチマン、有吉弘行ら50代・60代の人気MCは「すでにスケジュールがパンパン。あるいは起用済み」「健康面やモチベーション面の不安」から起用しづらいなどの背景も見逃せない。
やはり本来の理想はスポンサー受けのいいコア層の視聴者と同年代の30代・40代であり、わずか半年間で各局の起用方針が揺れ動いている様子がうかがえた。いずれにしても「新たなスターMCを育てる」という余裕はなく、実際にお笑い賞レースファイナリストからの起用はほぼ見られないという現実がある。
それは日ごろ『ラヴィット!』で若手・中堅芸人を大量起用しているTBSですら、ゴールデン・プライム帯でのMC起用がないことを見ればわかるのではないか。結局、「ベテラン回帰」とも「若手・中堅の抜てき」とも言えず煮え切らないような現状がバラエティの難しさを物語っている。