3つ目のポイントは、スタッフのリサーチ力と交渉力。この番組のリサーチはネットで調べるのではなく、スタッフが足を使って日本全国をめぐり、気になる店があったら飛び込みで交渉しているという。取材慣れしていない店が多いこともあって断られるケースも少なくないようだが、「店に通い続け、交渉を重ねながら、店主との距離を縮めていく」という粘り強さで“オモウマい”のクオリティが保たれている。

しかも、この番組で紹介される店の大半は都会ではなく地方。リサーチも交渉もハードルは高いのだが、作り手の熱は100回目を迎えた今もまったく変わっていない。

  • 7月18日放送の2時間スペシャルに登場する甲府の和食処店主(左)と愛媛の「エキサイトスーパー田中」店主 (C)CTV

そんなリサーチ力と交渉力を筆頭に中京テレビのグルメ番組を手がけるスキルは、キー局を含めても最高峰と言っていいだろう。同局には1990年代から東海ローカルで『P.S.愛してる!』『PS』『PS三世』『PS純金』という人気バラエティシリーズを放送し続けてきた歴史があり、「グルメなら全国放送で勝負できる」という自他ともに認める力があったのだ。

『オモウマい店』は長年培ってきたノウハウをゴールデン・プライム帯の全国放送で披露できる晴れ舞台。100回放送したところで、そのノウハウが尽きることも、気合いが失われることもなく、他局に模倣されるリスクも少ない。

番組の最後に「放送後は混み合うので日を空けて来店ください 取材のご協力ありがとうございました」というテロップが表示されている。このような取材対象への謙虚さや配慮もローカル局らしいところであり、作り手の姿勢に敏感な現在の視聴者を魅了しているのかもしれない。

TVerのほか、YouTubeなどの無料動画サービス、Netflixなどの有料動画配信サービスが普及したことで、ローカル局を取り巻く状況は厳しさを増している。だからこそ中京テレビの『オモウマい店』のように、得意なジャンルやノウハウを生かしたローカル局発のヒット番組が増えてほしいところだ。

  • 7月18日放送の2時間スペシャルに登場する和食処の天丼(左)と「エキサイトスーパー田中」のフルーツサンド (C)CTV