サラリーマンが投資で自分の資産を守るには、世界情勢を理解することは大切です。この連載では、世界情勢を専門の研究者・ジャーナリストとして活躍するイルカくんに、投資をするうえで必要な政治リスクやリスクマネジメントについて解説してもらいます。

東京2020は現時点では開催される

新型コロナウイルスの感染拡大が国内や海外で一向に収まらないなか、日本は来年に東京2020を主催する。新型コロナウイルスの今後の動向によって再び開催の是非が議論されるかも知れないが、現時点で来年夏に開催されることは変わっていない。

  • 東京2020での「テロの危険性」

仮にこのままいけば、感染対策を徹底した五輪開催となるだろうが、安全な五輪開催を脅かすリスクは新型コロナウイルスだけではない。そのリスクの最もたるものがテロだ。

ローンウルフと呼ばれるテロ

近年、世界ではテロ事件の数、死亡者は減少傾向にあるが、それでも1万件近くのテロ事件が毎年発生し、およそ2万人がテロの犠牲に遭っている。発生する地域もアジアやアフリカ、中東や欧米、中南米などバラバラだ。

しかも、近年のテロ事件の特徴は、インターネットやSNSなどでテロ組織から魅力的な金銭を提示されたり、その過激な思想に洗脳されたりして、自らでテロを起こす「ローンウルフ」というテロが脅威となっている。

最近でもフランスやオーストリアでこういった事件が発生したが、こういったテロは決して日本も対岸の火事ではない。

日本は各国とテロ情報を共有し、国際テロ対策で協力しているので、イスラム過激派のテロリストが日本に入国することは難しい。特に、新型コロナウイルスの感染拡大で国際便が激減している今日では言うまでもない。

しかし、人は入国できなくてもネット上の情報は簡単に国境の壁を通過する。そして、ローンウルフと呼ばれるテロでは、ロケット砲やミサイルなど破壊力ある武器を使うのではなく、ナイフやトラックなど身近に手に入るものを使うのである。物理的には日本でも十分に可能なテロなのである。

個人でできるテロ対策

海外に比べ、日本で幸いにもテロが起こる可能性は低い。しかし、1972年のミュンヘン五輪や1994年のアトランタ五輪など、五輪は歴史的にもテロの標的になってきた。テロリストはテロを実行して社会に不安や恐怖心を拡散させようとすることから、五輪など世界が注目するイベントは格好の標的となるのだ。

しかも、今は新型コロナウイルスの感染拡大で、日本も世界もテロ対策への意識が低く、感染拡大によってテロ対策が五輪開催中に疎かになる恐れがある。

東京2020でテロが起きる可能性は低いにしても、では、我々は競技の最中、どういったことをすればいいのか。実は警察や自衛隊だけでなく、個人単位でできるテロ対策もある。

東京2020でテロを避ける方法

まず、感染対策同様、多くの人が集まる場所はできるだけ回避することだ。欧米での続くテロ事件を見ても、発生する場所は主要駅や満員電車、繁華街が多い。このローンウルフテロだと、テロリストはナイフで無差別に斬りつけたり、トラックで歩行者天国を突っ切ったりすることが考えられる。

東京でも去年始め、原宿の竹下通りを車が突っ込んだ事件は記憶に新しい。

また、象徴的な場所に近づかない、いたとしても長居しないことが重要だ。象徴的な場所とは、テロリストが標的とするような米国など欧米大使館やイスラエル大使館、また東京2020の開会式や閉会式(会場の中は厳重に警備がされることから、会場の外など誰でも立ち入れる所)、主要競技の開催場所である。五輪の関連施設で何かしらのテロが起きれば、それだけで世界中に大きなニュースになる。

過去世界で起きたテロ事件をみても、テロリストは隙を突いた行動に出る場合が少なくない。このままいけばwithコロナの五輪となるが、それの隙を突いてテロリストが何かしらの行動に出る危険性はゼロではない。