テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、コンサルティング会社と会計事務所の代表を務め、スタートアップを中心に会計面・資金調達面からサポートを行っている岡野貴幸氏が、前回に続いて「会社の利益率を高める方法」について解説します。

  • 会社の利益率を高める方法(2)

前回、会社の収益性を見る上で、代表的な総資本経常利益率(ROA)と自己資本当期純利益率(ROE)という2つの指標を紹介しました。またROAを改善する方法、ROEを改善する方法の例も紹介しました。このROAとROEをさらに分解することによって違った視点で見ることが出来るのでそちらをお伝えしてきたいと思います。

改めて、ROAとROEの計算式は下記となります。

・ROA=経常利益÷総資産× 100
・ROE=当期純利益÷自己資本(純資産)×100

ROAを分解すると下記となります。

上記の計算式の左部分の(経常利益/売上高)は、売上高経常利益率を算出する計算式です。売上高に対して経常利益の割合を表すものであり、数字が高いほど収益性が高いということになります。 上記の計算式の右部分の(売上高/総資産)は、総資産回転率を算出する計算式です。総資産回転率というのは、会社が持っている総資産によって、どれくらいの売上高が生まれているのかを客観的に把握するための指標です。つまり、どのくらい総資産を有効に使えているかを表す指標ともいうことができます。数字が高いほど、効率性がいいことになります。

このように分解することによって、ROAの数字の変動要因を把握することが出来ます。 仮にROAが前期より下がった場合、売上高経常利益率に原因があるのか、それとも総資産回転率に原因があるのかを分けて検討することができます。

売上高経常利益率が原因の場合は、利幅の改善が必要となります。売上原価率を低くする、経費を削減するといった対応を検討する必要があります。

総資産回転率が原因の場合は、設備投資に対して計画通りの売上が上がっていない、余剰な資産を保有としていないかなどを検討することになります。

次に、ROEを分解すると下記となります。

ROEは、売上高当期純利益率(収益性)と総資産回転率(効率性)に加えて財務レバレッジ(財務安全性)の3つに分解されます。使用する利益が当期純利益であるものの、収益性と効率性はROAの分解とほぼ同様となります。財務レバレッジとは、借入金などをテコ(レバレッジ)として使うことで、自社の総資産が自己資本の何倍となるかを表した数値のことです。

テコの原理は、小さな力で重い物が持ち上げられるということですが、財務レバレッジでは他人資本がテコとなって、総資産が変化することを指しています。財務レバレッジを高めることによりROEを高めることが出来ます。しかし、財務レバレッジが高くなり過ぎてしまうと危険です。財務レバレッジが高くなればなるほど、総資産に対して他人資本の割合が高くなっていることを示します。そのため、借入金や社債などの返済や、利息の支払いに圧迫されている可能性があります。

財務レバレッジはどれぐらい攻めた経営を行なっていくか、会社の財務戦略にもよってきます。ROAやROEを分解した上で、各数値の目標値をどのようにするか検討してみるのが良いでしょう。