テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、書評ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大氏が、「成功」と「運」の関係についてお話します。

  • デキる人は「運」が良くて成功したのか?


書評家・ビジネスプロデューサーの徳本昌大です。成功した起業家は運を味方にしています。最適な場所で、最適なタイミングで、最適な商品をリリースし、彼らはベストな顧客を捕まえることで、成功を手に入れています。彼らは成功した理由をよく運のおかげだと言いますが、実は運が良くなるように動いているのです。

今日はどうすれば運が良くなるかを早稲田大学ビジネススクールの教授の杉浦正和氏から学ぼうと思います。参考にしたのは、『幸運学 不確実な世界を賢明に進む「今、ここ」の人生の運び方』です。

杉浦氏はビジネススクールは運を学ぶ場だと言います。

つまるところビジネススクールでの学びは、「運(フォーチュン)を高める方法」といえるのではないか、ということです(杉浦正和)

経営者を目指す優秀な人たちが集まるビジネススクールが、なぜ「運」と関係あるのでしょうか? ビジネススクールでは以下の果実を得られます。

■キャリア展開
■豊かな人間関係
■戦略的な意思決定
■リスクマネジメントや資産運用の知識を得られる

「今、ここ」を賢く生きることで、不確実性のもとで着実に歩む知恵をビジネススクールで得ています。つまり、順当かつ堅実に運を自ら創りだし、フォーチュン・メーカーとなる方法を学んでいるのです。

運には「自分でコントロールできない運」と「自分でコントロールできる運」があります。「自分でコントロールできない運」には、2つのまったく異なる面があります。まず、前もって決まっているという意味で自分の力が及ばないものがあります。これが「宿命(デスティニー)」です。次に、予測がつかないという意味でコントロールできないものもあります。これが「偶然(ランダムネス)」です。

「自分でコントロールできる運」についても、2つに分けることができます。幸運は自分で創りだせるという考えがあります。それが、「開発(ディベロップ)できる運」で、「機会(オポチュニティー)」と呼ばれています。次に、不運を避け、幸運を得るために、ある程度は運を制することもできます。それが、「管理(マネージ)できる運」です。「確率(プロバビリティー)」を見立て、適切な手を打つことが大切です。

■宿命(デスティニー):事前に決まっていて自分ではどうしようもないこと
■偶然(ランダムネス):結果が予想できずコントロールできないこと
■機会(オポチュニティー):開発することで自ら創りだしていけること
■確率(プロバビリティー):管理することで自ら高めていけること

ビジネススクールで学んでいることは以下の4つのフレームに分類でき、キャリア論やネットワーク論を学んでいるのです。

●未来開拓……キャリア論・デザイン思考
●関係構築……ネットワーク論・組織行動論
●意思決定……戦略論・行動ファイナンス論
●自己管理……人材資源管理論・財務管理・資産運用論

私が実践するJ・D・クランボルツの"計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)"やマーク・グラノベッターの"ウィーク・タイのストレングス"がわかりやすく説明されています。私もこの2つの理論を信じ、行動することで運がよくなりました。

この世はありがたいことで満ちています。それが「機会」だと気づくと、この世が光り輝いて見えるようになります。そして、その時点で既に幸運なのです。ありがたさを認識するところから、運は拓けていきます。なぜなら、感謝をするということは、とりもなおさず運というものの存在を認めることだからです。人によっては、それをフォーチュンの女神(あるいはカイロスの男神)と呼ぶでしょう。感謝されると、神様たちだって決して悪い気はしません。だから微笑んでくれるのです

「機会」を開発していくと、「宿命」とあきらめていたものを変えることができます。「確率」を見立てると、「偶然」に任せるよりは、未来をある程度見通すことができます。つまり、「宿命」と「機会」、そして「偶然」と「確率」は裏腹の関係にあるのです。感謝の気持ちを持つことで、機会を見つけることができるのですから、感謝を習慣にして、運をよくするようにしましょう。

「運と希望」「夢と希望」をセットだと考えることができます。そのような希望の特徴をHOPEの頭文字に沿って整理すると、次のようになります。

・H(ヒューマニティー):希望は、人間性の根幹であり、人間を人間たらしめるものです。
・O(オポチュニティー):希望は、自分で機会を創れると信じることによって湧きます。
・P(ポテンシャリティー):希望は、将来の夢が叶う可能性を信じることによって持続します。
・E(エネルギー):希望は、人間がものごとを運んでいくための活力源です。

希望を「不安(アングザイエティー)」との関係から考えることもできます。なぜなら、不安と希望は、片一方が増えれば片方が減るという裏腹の関係にあるからです。

では、私たちは、いったい何に対して不安を抱いているのでしょうか? 不安という感情を因数分解してみると、「失敗したら恥ずかしい」「傷つくかもしれない」「大切なものを失ってしまう」といった気持ちだと考えられます。では、この不安は本当に現実になるのでしょうか?

「失敗したら恥ずかしい」という不安を消すためには、チャレンジする人を参考にすればよいのです。彼らの失敗を見て、恥ずかしさを感じなければ問題ないはずです。「傷つくかもしれない」という不安が実現化する可能性も低いはずです。

失敗したら、励まされたり、チャレンジしたことを尊敬されたりします。万一不安が現実化しても、かえって得るものがある何かを経験すれば、そこから学ぶことができます。まして失敗からは、多くの教訓を得ることができます。

不安は多分現実化せず、万一現実化しても大した問題ではなくむしろ得るものがある。運を拓いていく人が、「失敗を覚悟のうえで」「無駄を承知で」と一言いながら行動するのは、そのためです。希望は不安とのせめぎあいの中にありますが、その不安は、よく吟味すると大したものではないことも多いのです。本当は大したリスクはないことを冷静に計算したうえで、どんどんチャレンジする。それが「ダメ元パワー」です

ダメでもともとと考えれば、失うものは何もありません。挑戦し続けることで、機会は増え、運は拓けていきます。「運が良い」というのは、状況に対して自分が勝つことです。勝率は問題ではありません。仮に勝率が低くても、勝ちの数さえ多ければそれで良いのです。

経験から学ぶ4つのF
「事実(Fact)」──何を経験したかについての、事実の客観的な振り返り
「感情(Feel)」──率直に自分がどう感じたかについての、感情の振り返り
「発見(Find)」──経験から何を見つけ教訓としたかについての、振り返り
「活用(Feed-back)」──自分の仕事や生活にどう活かすかについての、自己提言

様々な経験を4つのFを使って、振り返ることで自分を改善できます。自分をポジティブに評価し、好奇心を持って、行動を続けることで運を高められるのです。

私がお勧めするのは、小さなリスクをどんどん取る「ちょっとだけリスク・テイク」です。「取り返しのつく失敗」から学べるからです。結果的には、それが何よりの準備となります。例えば、大学で学ぶのは卒業後に向けての準備となっていくのですが、教室で発言して、ちょっとはずして、恥をかくといった経験は、取り返しのつく失敗の良い例だといえます。前もって失敗することによって得ることのできた教訓は、「未来」の先取りです。そして「今は未だ来ていないもの」が実際に来たら、全力で「上へ上へ」と駆け上ります。その日のために「下へ下へ」と備えていたのですから

いつも下準備しておき、そのためのさらに下準備もしておけば、オファーがあった時にすぐに対応できます。良いできごと(ハップ)がそこにあると気づいたら、勇気を持ってそれにチャレンジしてみましょう。小さなリスクを取って、前もって小さな失敗をしておくことで、様々な知識や経験を得られます。

未来から現在をバックキャストし、日々の行動を積み上げることで、複利効果が働き、運が良くなるという著者の考え方に共感を覚えました。今日も楽しみながら、アクションを続けることにします!

起業家は運が良い行動をしています。彼らの行動を見習うと同時に、本書を参考にして、運が良くなる方法を考えてみましょう! 小さなリスクを取り続けるうちに、ビジネスチャンスが見つかり、自分の可能性をアップできます。

執筆者プロフィール : 徳本昌大

書評ブロガー・ビジネスプロデューサー
複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在は、ベンチャー企業の取締役や顧問として活躍中。インバウンド・海外進出支援サービスなどを提供するEwil Japan取締役COO、IoT・システム開発のビズライト・テクノロジー 取締役、みらいチャレンジ ファウンダー、他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数。書評家としても活動中。