働くお母さん・お父さんの育児支援に向けた制度の中でも、育児休業や短時間勤務(時短勤務)などは特に浸透しており、皆さんの周りにも制度を利用したことがある人がいらっしゃるのではないでしょうか。過去に筆者が主催したセミナーでも「復帰する際には時短勤務を選択する予定ですか」との問いかけ対して、参加していたお母さんの8割近くの手があがったことがあります。
しかし同時に、「育休明けに復職する=時短勤務」といったイメージが先行してしまい、実際に時短勤務を選択した後どうなるのかを事前に確認しないまま、なんとなく時短を選択する人が多いのではと感じています。制度利用が当たり前となった今だからこそ、意識しておかなければはまりやすい「時短トラップ」が存在しているようです。
そもそも時短勤務には、勤務時間を短くすることで育児との両立がしやすくなるというメリットがあります。通勤時間が長い人などは、時短勤務にしなければ保育園のお迎え時間に間に合わないという場合もあるでしょう。ただでさえ時間に追われる仕事と育児の両立生活において、時短勤務はそうしたメリットがある一方でデメリットもあります。実際に時短勤務で復帰した女性から多く聞かれるのは次の様なもの。
お給料が予想以上に減った
産休前の7割程度のお給料が得られれば多い方といえるくらいで、6割、場合によっては半分程度にまで減ったという人も少なくありません。お給料の減少がやる気の減少へと形を変えてしまわないように、事前に確認しておきましょう。
時短のために異動
業務内容によっては、実質的に異動しなければ時短を取れない人もいるでしょう。復帰直前になってその事実を知ってもきちんと対処できないので、あらかじめ把握しておかなければいけません。時短を取ることで得られる時間的なメリットと異動先での仕事内容をトータルで考えて、納得して働き続けられるか検討してほしいと思います。産休に入る前に上司や人事とじっくり話し合って、復帰前にも再度話し合うのがベストです。
業務量はそのままで時間内に終わらない
勤務時間が短くなっても業務量は以前のままで、キャパシティーオーバーが常態化しているケースもかなり多く見受けられます。そのせいで仕事が度々遅れたりして、周囲に迷惑を掛けているというプレッシャーを強く感じたり、会社を出たあとも自宅で作業せざるを得ない状況になるなど、結果的にストレスが増大する原因になる場合があります。
アウトプットが減ったと評価
時短で働いた結果、仕事のアウトプットが減ったと評価されてしまい、昇進・昇格に影響が出たり、社内でのキャリアパスに制約が生まれたり可能性があります。成果主義が根付いた企業も増えてきましたが、まだ今の日本では働いた時間と成果を結び付けて考えやすい風潮があり、時短で働いている人の貢献度合いを正当に評価できていない職場は多いと感じています。時短勤務でも生産性を上げる努力をして成果を出そうと考えている人にとっては、きちんと評価を得られず消耗するリスクがあるといえます。
時短勤務は産後に働き続けるにあたって非常に心強い制度です。とはいえ、自動的に適用されるものではなく復帰する人が自ら申し出るというプロセスを経ます。そんな中では、仮に他に選択肢がなく時短を取らざるを得なかったとしても、周囲から見れば「自ら希望して時短勤務をしている」と捉えられてしまう現状があります。だからこそ、少なくとも上司や一緒に仕事する仲間には、あなたがどんな風に働きたいと考えていて、限られた勤務時間でもどんな努力をして成果を上げているのか知っておいてもらわなければ、どんどん自分が苦しくなってしまいます。復帰にあたっては、職場でのコミュニケーションをこれまで以上に大切にしましょう。
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著者プロフィール
株式会社ここるく 代表取締役 山下真実
「わが子を大切するために、ママが自分自身を大切にできる子育てスタイル」を提案し、人気のレストランが託児付きで楽しめるサービス「ここるく」を運営するママ起業家。
投資銀行や金融系コンサルなど金融業界でキャリアを積みつつ、2011年に第一子を出産。初めての子育て中に「今まで気にもとめていなかった当たり前の事が、産後は一 気にできなくなるんだ! 」と感じたことがきっかけとなり、現代に合った子育て支援を実現するため2013年に株式会社ここるくを設立。同サービス運営を通じて得られる働くママ達のリアルな視点とコンサル経験を活かして、企業に対する女性活躍推進コンサルティングを行う。
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