もう成人しているのだから……と思いつつ、わが子の就職活動に無関心ではいられないというのが多くの親の本音ではないでしょうか。とはいえ、何をどこまでサポートすべきか、そもそも介入していいのかなど、疑問や悩みは尽きないと思います。
そこで本シリーズでは、就職時期を間近に控えた子を持つ親の視点で、令和の新卒就活事情を解説。講師は、リクナビ編集長やリクルート就職みらい研究所所長を経て、現在はリクルートグループのインディードリクルートパートナーズのリサーチセンターで上席主任研究員を務める栗田貴祥氏です。
親も知識と情報をアップデート! 就活用語の基礎知識<就活準備 編>
就職活動に不安はつきもの。多くの就活生は親に対し、迷っている時に思いや不安を受け止めてくれたり、必要に応じて励ましたりアドバイスしてくれることを期待しています。
「就活生にとって親は、最も近くにいる社会人の先輩です。ただ、世代の違うわが子と同じ目線で会話するためには、現代の就職活動の実態や、就活特有の言葉を正しく理解しておく必要があるでしょう」と栗田氏。
そこで、親が知っているつもり、理解しているつもりの就活用語について、栗田氏が改めて解説します。まずは就活準備編です。
就職情報サイト
新卒の就職活動に関する情報、及び企業の求人情報を掲載しているWebサイトで、求人企業への資料請求から、インターンや企業説明会の予約、採用の本選考のエントリーまで、一連の就職活動における重要な入口となります。
全業界・業種を網羅的に扱っているサイト、特定の業種・職種に特化したサイトと、特徴や強みはさまざま、数もたくさんありますので、就活生は目指す未来を見据えて利用するサイトを選ぶ必要があります。ちなみに、就職情報サイトはあくまでも情報提供のプラットホームであり、就活生個人と企業の間のやりとりには関知しません。
自己分析
自身の価値観や特性を掘り下げる作業です。過去を振り返り、自分が意欲的に取り組み、力を発揮できていたと思っているいくつかのシーンを“興味×強み”という観点で分析してみると、自分の志向や自分を生かせる仕事の方向性が見えてくるでしょう。とはいえ、自分の強みや得意なことというのは、自分にとっては当たり前過ぎてなかなか気付けない場合も。
そんな時こそ親の出番です。「小さい頃からこういうことに関心があったよね」「こういうところはあなたの良いところだよ」と、接してきた時間が長い親の視点でアドバイスしてあげてください。信頼できる第三者との対話は、本人の気づきのきっかけになると思います。
ガクチカ
“学生時代に力を入れたこと”の略語です。エントリーシートや採用面接における定番の質問項目で、企業側は学生たちの回答を、「どんなシチュエーションで力を発揮できる人なのか」「この人はどういうアプローチで課題解決できるのか」といった観点で評価し、自社の仕事や社風に照らし合わせてマッチングしています。
つまり、アピールすべきは、成果よりプロセス、サークル活動などでの肩書きよりも自分の強みとそれを裏付けるエピソード。学びでも課外活動でもアルバイトでも、決して派手なエピソードである必要はありません。学生時代に何をどこまで夢中になってやってきたかが重要です。
ガクチカのために何かをするという発想は本末転倒。毎年多くの学生と対峙している面接官にはすぐに見破られてしまうでしょう。学生時代に力を入れたことに気づけない学生もいます。
お子さんが悩まれている場合は、「これまで夢中に取り組んできたことは何? どんな時にやりがいを感じたの?」などフラットな問いかけをしてあげてみてください。問いかけが気づきとなり、内省や言語化がはじまっていくこともあります。
オープンカンパニーとインターンシップ
2025年卒業学生の採用活動から、インターンシップ等のキャリア形成支援プログラムは新たに類型化されています。そのうちの一つであるオープンカンパニーは、個社や業界に関する情報提供やPRを目的とし、主に短期間で開催されるキャリア形成支援プログラムを指します。
企業の個社説明会や、大学のキャリアセンターなどが主催するイベント、説明会などが。これに当てはまります。学部1年次から参加できるものもあり、就職活動準備の初期段階における、業界・企業・仕事研究に役立つでしょう。
新しく類型化されたインターンシップは、社会に出る前に仕事の場について見聞きしたり経験できたりするキャリア形成支援プログラムです。実施日数や就業体験の有無など、産学協議会が定めた5つの要件を満たすプログラムが「インターンシップ」 と呼ばれます。参加中に実際の業務に近い体験ができるので、仕事理解や職場理解を深めることで、その仕事が自身に適職と思えるかどうかを判断していくのに非常に有効なものになります。
大学生でいえば、学部3年次以降の学生を対象に、夏休みや冬休みなどの長期休暇期間に開催されます。押さえておきたいのが、企業はインターンシップを通じて取得した学生の情報を、採用広報活動や選考活動に使用できるという点です。
インターンシップの参加は必須ではないものの、参加した学生は、通常の選考に先駆けて行われる早期選考の対象になる可能性もあります。
プレエントリーとエントリー
この2つの言葉は厳密な使い分けがされているわけではないので、都度きちんと内容を確認する必要がありますが、プレエントリーは企業に対して「興味がある」と示すこと、親世代でいう資料請求はがきを企業に送るといった手続きを指し、エントリーまたは本エントリーは企業の採用選考に「応募」することを指します。
政府が要請する就活スケジュールでいくと、3年次の3月1日から始まる企業の採用広報期間に興味のある会社にプレエントリーを行い、説明会などを経て、5月くらいまでの間に選考を受けたい企業に本エントリーするという流れになりますが、採用活動スケジュールは企業によってさまざま。
特に昨今は企業の採用活動の早期化が顕著になってきていますので、個別の確認と計画が重要になります。
いかがでしょうか。もしも認識にズレや相違があったら、しっかりアップデートしておきましょう。
次回は就活本番編の用語解説です。

