もう成人しているのだから……と思いつつ、わが子の就職活動に無関心ではいられないというのが多くの親の本音ではないでしょうか。とはいえ、何をどこまでサポートすべきか、そもそも介入していいのかなど、疑問や悩みは尽きないと思います。

そこで本シリーズでは、就職時期を間近に控えた子を持つ親の視点で、令和の新卒就活事情を解説。講師はリクナビ編集長や、リクルート就職みらい研究所所長を経て、現在はリクルートグループのインディードリクルートパートナーズのリサーチセンターで上席主任研究員を務める栗田貴祥氏です。

なぜ起こる? 就活生の蛙化現象

近年、学生の就職活動において、Z世代の恋愛シーンで用いられる"蛙化現象"に似た現象が一定数見られるそうです。こうした状況について栗田氏はこう話します。

「内定や入社のタイミングをきっかけに、『この企業で本当に良いのだろうか?』といった疑問や不安に駆られてモチベーションが下がってしまうという就活での"蛙化現象"は、就職活動中に自身のキャリアプランやライフプランについて深掘りできていない人に起こりがちです。

自分はどういう人間で、社会に出て何をやりたいのか、どんな仕事に面白さを感じるのか、どういう働き方をして、どんな人生を送りたいのか、といったことを深く内省しないまま就職活動を行い、内定をもらえたからという理由で進路を決定してしまうと、後にミスマッチ感を抱きやすくなってしまいます」

納得感のある就職を実現するためには、自己分析や、業界・企業・仕事研究が重要であるということ。つまり、これらが就職活動のファーストステップというわけです。

「現在は多くの大学で、1年次から、"キャリア教育"が行われています。その目的は、"働くことへの理解を深める"こと。自己を分析し、自身の今後の人生やキャリアプランについて考えることは、目の前の学びや学生生活に対する意識を高めるきっかけにもなります。それが結果的に納得できる職業選択につながりますので、じっくり丁寧に行えるといいですね」

また、業界・企業・仕事研究に役立てたいのが、"オープンカンパニー"という位置づけで開催される、企業や就職情報会社によるキャリア形成支援プログラムです。

「オープンカンパニーというのは、個社や業界に関する情報提供やPRを目的に行われるイベントや説明会のことで、所要時間は半日~1日程度で行われることが多く、オンラインで開催されることもあるので、業界・企業・仕事研究の第一歩にうってつけです。1年次の学生から受け入れているものもありますので、社会見学だと思って参加してみるといいと思います」

インターンシップの定義と活用法

企業が開催するキャリア形成支援プログラムにはもう一つ、学生が企業等において実習・研修的な就業体験をする、"インターンシップ"と呼ばれる取り組みがあります。

インターンシップが日本で本格的に始まったのは1997年ですので、就活生の親世代で自身に参加経験があるという方はそれほど多くはないのではないでしょうか。また、当時と今とでは定義に大きな違いがあるとのこと。栗田氏に詳しく解説していただきました。

「インターンシップについての考え方の定義は、新卒採用スケジュール同様、政府(内閣官房、文部科学省、厚生労働省、経済産業省)によって示されており、2022年に大きく改正されています。現在、インターンシップと呼称できる取り組みは、"汎用的能力・専門活用型インターンシップ"と"高度専門型インターンシップ"の2タイプ。

前述のオープンカンパニーとは一線を画すもので、大きな違いは、"学部3年次以降の学生を対象とした就業体験プログラムである"という点です。夏休みを中心とした長期休暇期間に開催され、学生にとっては、自らの能力の見極めや、実践力の向上を図る機会となり、就職志望先の決定に役立てることができます」

一方で、インターンシップは、"企業にとっては学生の評価材料の取得機会になる"という点も押さえておきたい重要なポイントであると栗田氏。

「企業は、インターンシップを通じて取得した学生の情報を、卒業年次前年の3月1日から広報活動に、卒業年次の6月1日からは選考活動に使用することができます。つまり、インターンシップは、企業が選考の期待感を持って行っている側面もあるということ。視点を学生側に移せば、インターンシップに参加することで、内定への近道になる可能性があるということです。

ただし、企業の採用人数は、インターンシップ等の受け入れ人数よりも多いことがほとんどです。実際、インターンシップ等実施企業の採用数における自社インターンシップ等参加者の割合は、2025 年卒では33.2%※でした。大半の企業において、インターンシップに参加できなければ、選考ステップに進むことができないというわけではないことも、併せて押さえておいてください」
※引用元:就職白書2025(冊子版)より

普段通りのコミュニケーションが就活生の支えに

改めて、一般的な就職活動のステップを振り返ってみましょう。

ステップ1 自己分析と業界・企業・仕事研究
大学のキャリア教育カリキュラムを受講(大学1年次~)
オープンカンパニー等に参加(大学1年次~3年次)
インターンシップに参加(大学3年次の夏休み~)

ステップ2 就職活動本番
プレエントリー~会社説明会に参加~エントリーシート提出(大学3年次の3月1日~)
書類選考や面接等の採用試験~内々定(大学4年次の6月1日~)
入社承諾書を提出~内定(大学4年次の10月1日)

※政府の就活スケジュールにとらわれない形で採用活動を実施する企業もあるため、志望する業界や企業があるのであれば、個別に採用活動スケジュールを確認することをおすすめします

以上を踏まえつつ、就活生の親は、わが子の就活にどんな関わり方をしていけばいいか、栗田氏に聞きました。

「当社が就職活動を終えた学生に行ったアンケート調査では、『保護者との関わりでよかったことがあった』と回答した学生は、『嫌だったことがあった』という学生の2倍以上でした。さらに『就職活動における保護者の関与で、嬉しかったこと・助けになったこと』を尋ねたところ、『普段と同じ態度、見守り役、聞き役に徹してくれた』が最も多い結果となりました。つまり、保護者からお子さんに特別なことをする必要はないということです。

就職活動の準備を始めるタイミングや進路を決めるのはお子さん自身です。まずは、お子さんの大学生活が充実したものになるように応援していただき、お子さんが大人であるという前提で信じて任せつつ、迷っている時に思いや不安を受け止めてあげたり、必要に応じて励ましたりアドバイスしてあげるなど、ごく普通のサポートをしてあげることが、最善の関わり方であると思います」

次回は、就活生のわが子とスムーズに会話するために知っておきたい就活用語について解説します。