12月に入り、オフィスや通勤時の電車内を見渡してみると、せき込んだりマスクを着けたりする人の姿が目立つようになってきた。気温が下がり、空気が乾燥しだすこれからの季節は、さまざまなウイルスが増殖しやすい次期となる。そうなると、注意したいのが各種の感染症だ。

秋・冬シーズンの感染症の代表例であるインフルエンザウイルスやノロウイルスに感染した場合、感染者は出社を控えるのが好ましい。だが、自身がウイルスに感染している事実に気づかず、知らず知らずのうちに周囲に感染を拡大させてしまっている人がいるのが現状だ。

これらの「ウイルス禍」の加害者および被害者にならないためには、各種感染症を引き起こすウイルスについて正しく理解しておく必要がある。そこで本特集では、秋・冬シーズンに流行しやすい感染症の特徴や対策を紹介していく。今回は溶連菌感染症について、小児科医の竹中美恵子医師にうかがった。

  • 溶連菌は保育園や学校などで集団感染しやすい

    溶連菌は保育園や学校などで集団感染しやすい

溶連菌感染症の症状

溶連菌感染症とは、A群溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)と呼ばれる細菌に感染することで発症する疾患を指す。約2~5日の潜伏期間を経て発症し、代表的な症状に「発熱」と「喉の痛み」があり、子どもに多い疾患として知られている。

「幼児の場合は急な発熱(38度以上)と喉の痛みが起こります。ほかに皮膚に赤い発疹ができたり、舌が赤くなってブツブツができたり(イチゴ舌)します。重症化すると膿痂疹(のうかしん)や蜂巣織炎(ほうかしきえん)、中耳炎、肺炎、化膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎などの多彩な疾患を引き起こします」

溶連菌感染症は「冬」と「春~初夏」の年に2回、流行のピークがある。ただ、真夏でも感染ケースがゼロになるわけではないため、年間を通じて注意する必要がある。

溶連菌の感染経路

溶連菌感染症は、感染者の咳やくしゃみなどを介して感染する「飛沫感染」と溶連菌に汚染された食品などを介して感染する「接触感染」が主な感染経路となる。国立感染症研究所によると、「ヒトとヒトとの接触の機会が増加するときに起こりやすく、家庭、学校などの集団での感染も多い」とのこと。

感染力は発症間もない急性期に最も強く、「急性期の感染率については兄弟での間が最も高率で、25%と報告されている」という。そのため、兄弟がいる家庭では特に二次感染に気をつけた方が賢明と言えるだろう。また、幼児に多い感染症ではあるが、大人も罹患するし何度も繰り返し感染するケースもある。

「家庭内感染を防ぐには、うがいや手洗い、マスクの着用などの風邪予防と同じ対策が有効です。保育園や学校、家庭内でよく感染するため、『感染者とは同じ食器を使用しない』『タオルなどは別々のものを使用する』『トイレや机なども殺菌する』といった対策をするとよいでしょう」

溶連菌感染症の治療法

うがいや手洗い、マスクの着用などを徹底していても感染してしまった際は、早めに医療機関を受診し、治療するように。

「治療法としては、主にペニシリン系抗生剤を使用します。ただし、ペニシリンアレルギーがある場合は、エリスロマイシンなども使用できます。治療が不十分な場合、リウマチ熱や急性糸球体腎炎を合併するケースがあります。一時的に症状が治まっても、勝手に内服を止めずに医師の指示通りに10日前後は飲み続けましょう」

溶連菌感染症は、学校保健安全法における「条件によっては出席停止の措置が必要な病気」に該当し、治療後の登校(園)基準は「適切な抗菌薬による治療開始後24時間以降」となっている。かわいい我が子が万一罹患した場合は、その友達や家族に感染が拡大しないよう、大人がきちんと責任をもって対応するようにしよう。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 竹中美恵子(タケナカ・ミエコ)

小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。「女医によるファミリークリニック」院長。

アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。

日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得、メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。